今月のサイエンス - 2026年02月
1: オルガノイド移植による胆汁酸吸収機能の付与により 短腸症候群モデルの生存率が改善
Cell Stem Cell.
2026 Jan 8;33(1):157-165.e6. doi: 10.1016/j.stem.2025.12.007
Ryoma Endo, Shinya Sugimoto, Yutaro Kuwashima, Mami Matano, Hikaru Hanyu, Sirirat Takahashi, Hirochika Kato, Taku Tanaka, Andreas Michael Sihombing, Koji Shirosaki, Yoshiko Hatano, Yuki Sugiura, Takanori Kanai, Motoshi Wada, Toshiro Sato
短腸症候群などの小腸難治性疾患に対する根本治療は小腸移植ですが、ドナー不足や拒絶反応などの課題が残されています。近年、代替療法としてオルガノイドを用いた再生医療の開発研究も進められていますが、従来法では生着率が低く、移植後に十分な機能を発揮できるかどうかが大きな問題となっていました。本研究では、移植時に腸組織の間質を保持する重要性に着目し、生着率を飛躍的に向上させました。間質にダメージを与えず空腸の上皮のみを剥離した空腸に回腸オルガノイドを移植することで、回腸上皮を広範囲に再構築できることを示しました。さらに、短腸症候群ラットモデルにおいて空腸を回腸化すると、栄養吸収障害に伴う病態が改善され、生存率の向上も認められました。加えて、回腸で特異的に吸収され脂質吸収に重要な胆汁酸について、移植上皮が回腸特異的な吸収能を有することをin vivoで実証し、その生理学的意義を明らかにしました。本研究は小腸領域特異的機能の差異を示すとともに、腸機能を置き換える再生医療への応用が期待されます。
(内科学(消化器) 杉本真也)
2: 心房細動スクリーニングの価値を再考する ── 標的とすべきリスクは何か?
Yuichiro Mori, Mitsuaki Sawano, Shun Kohsaka, Yusuke Tsugawa, Motoko Yanagita, Shingo Fukuma
心房細動(AF)は脳梗塞の主要な原因となる不整脈ですが、無症候性であることも多く、その早期発見は世界的な課題となっています。我々はこの課題に対し、「健診制度」というインフラに着目しました。米国の診療を経験した視点からも、日本の健診システムは世界でも類を見ない貴重なリソースであり、我々はこれまでもレジストリ研究などを通じてその検証を行ってきました(JSPS 23K20336)。こうした中、本論文筆頭著者の森雄一郞先生(京都大学医学研究科人間健康科学系専攻)、さらに同分野のエキスパートである福間真悟先生(同教授)との交流を経て、今回の共同研究が実現しました。本解析では、協会けんぽ加入者(35〜59歳)約950万人のビッグデータを解析し、11,790人の新規AFを同定しました(約2,400人に1人)。そして予後解析の結果、この「働く世代」では脳梗塞よりもむしろ心不全を発症するリスクが高いことが明らかとなりました(図)。その詳細な手法(データクリーニング等)は掲載誌やPodcast(Circ. on the Run)をご確認ください。AFの背後には脳梗塞だけでなく、心不全のリスクも潜んでいます。我々の研究成果が、こうした潜在的な心不全の早期介入や予防につながれば幸いです。
(帝京大学・Yale臨床研究センター 澤野充明、循環器内科学教室 香坂 俊)
その他の掲載論文
1: Physician-reported reasons for not prescribing guideline-directed medical therapy in heart failure with reduced ejection fraction: A prospective registry analysis
European Journal of Heart Failure.
Yumiko Kawakubo Ichihara, Yasuyuki Shiraishi, Mitsuaki Sawano, Takashi Kohno, Yuji Nagatomo, Mitsunobu Kitamura, Munehisa Sakamoto, Michiru Nomoto, Atsushi Mizuno, Makoto Takei, Satoshi Shoji, Kyoko Soejima, Masaki Ieda, Shun Kohsaka, Tsutomu Yoshikawa