慶應義塾

アトピー性皮膚炎の症状と治療反応に関わるバイオマーカーを発見 -患者の皮膚から新たな指標を見出し、個別化医療の実現へ前進-

今月のサイエンス - 2025年09月

Nat Commun.

Fukushima-Nomura A, Kawasaki H, Yashiro K, Obata S, Tanese K, Ebihara T et al.

左から、川崎(共著者)、野村(筆頭著者)、天谷(責任著者)

アトピー性皮膚炎(AD)は症状の多様性と治療反応の個人差が大きく、その分子基盤の全体像は十分に解明されていませんでした。今回、私たちは156名の患者から直径1mmの皮膚組織951検体を収集する大規模研究を行い、RNA-seqデータを教師なし機械学習による網羅的解析で検討しました。この手法により、患者皮膚で共発現する遺伝子群を抽出することに成功しました。抽出された遺伝子群には、従来知られていた皮膚バリアや2型・17型・1型炎症に関連するものだけでなく、既報告にない細胞外マトリックス関連や最初期遺伝子群も含まれていました。さらに重要なのは、これらの遺伝子群が紅斑や苔癬化といった臨床症状、そして分子標的薬デュピルマブの治療反応性と密接に関連していたことです。特に治療抵抗例では17型炎症関連や最初期遺伝子群の持続的発現が認められ、治療効果を左右する分子基盤を示唆しました。本研究は、皮膚の遺伝子発現パターンを包括的に捉えることで、ADの多様な臨床像を説明しうる新たな分子シグネチャーを提示しました。これにより、個別化医療の実現に向けて大きな一歩を踏み出しました。

(皮膚科学教室 野村(福島)彩乃)

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