今月のサイエンス - 2025年05月
Alzheimers Dement.
Yoshinori Nishimoto, Takashi Sasaki, Yukiko Abe, Norikazu Hara, Akinori Miyashita, Mika Konishi, Yoko Eguchi, Daisuke Ito, Nobuyoshi Hirose, Masaru Mimura, Japanese Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative, Takeshi Ikeuchi, Hideyuki Okano, Yasumichi Arai
加齢にともなう認知機能低下を科学する
―大規模な百寿者研究の全ゲノム解析でわかった分子メカニズム―
当塾の西本祥仁 (内科学(神経)学部内講師)、新井康通 (百寿総合研究センター教授)、岡野栄之 (再生医療リサーチセンター教授)らの研究チームは、1,017名の100歳以上の方(百寿者)の中で、認知機能の詳細な評価と全ゲノムの遺伝子解析に協力して下さった638名(うち24名は110歳以上)を対象として、391名のアルツハイマー病(AD)患者と認知機能の特性を比較しました。その結果、AD患者が苦手とするMMSE(ミニメンタルステート検査)での「口頭での3段階指示の遂行機能」が、百寿者では保たれていることを発見しました。さらに、ゲノムワイド関連解析により、この百寿者の認知機能の特性には、シナプスの維持に重要なPTPRT遺伝子が関わっていることを明らかにしました。
長寿大国の日本には9万5千人を超える百寿者がおられ、健康長寿のヒントを我々に示しています。今回の研究成果は、認知症の臨床現場で加齢にともなう認知機能低下とADを見分ける新たな手法として活用される可能性があります。また加齢にともなう認知機能低下の分子機序の解明を通じて、超高齢社会の「健康寿命の延伸」に寄与することが期待されます。
(百寿総合研究センター 新井康通)