慶應義塾

1: Social Bonds Retain Oxytocin-Mediated Brain-Liver Axis to Retard Atherosclerosis.

今月のサイエンス - 2025年02月

Ko S, Anzai A, Liu X, Kinouchi K, Yamanoi K, Torimitsu T, Ichihara G, Kitakata H, Shirakawa K, Katsumata Y, Endo J, Hayashi K, Yoshida M, Nishimori K, Tanaka KF, Onaka T, Sano M, Ieda M.

責任著者の安西(左)と筆頭著者の高(右)

近年、社会的孤独が動脈硬化性疾患である心筋梗塞の発症率や総死亡率を上昇させることがヒトを対象とした臨床研究により報告されておりますが、その詳細な機序は明らかになっておりませんでした。我々は動物モデルを用いて臓器横断的に検証し、これまで推定されていた食事摂取量や体重の増加、交感神経系、視床下部-下垂体-副腎皮質系および炎症の賦活化とは無関係に、社会的孤独ストレスが動脈硬化を進行させることを見出しました。また、社会的孤独によって脳視床下部からのオキシトシン分泌が減少すると同時に、中性脂肪や悪玉コレステロールの上昇に代表される脂質異常症の増悪が引き起こされることを明らかにしました。本研究において我々は肝細胞にオキシトシン受容体が発現していることを見出し、オキシトシンがCYP7A1による胆汁酸産生とANGPTL4/8によるリポ蛋白リパーゼ活性の調整という二つの異なる経路を介して、肝臓及び全身の脂質代謝を制御していることを世界で初めて報告しました。さらに、オキシトシンを経口補充することで、社会的孤独ストレスによる脂質代謝異常と動脈硬化進展が抑制されることを確認しました。本研究は、幸福ホルモンとして知られるオキシトシンが孤独による動脈硬化進展に対する新規治療標的分子として有望であることを示すとともに、社会的つながりの豊かさがヒトの健康維持につながる機序の解明の一助となり得ると考えられます。

(循環器内科 安西 淳 84回、高 聖淵 92回)

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2:Cardiac reprogramming and Gata4 overexpression reduce fibrosis and improve diastolic dysfunction in heart failure with preserved ejection fraction

Yu Yamada #, Taketaro Sadahiro #, Koji Nakano, Seiichiro Honda, Yuto Abe, Tatsuya Akiyama, Ryo Fujita, Masashi Nakamura, Takashi Maeda, Yuta Kuze, Masaya Onishi, Masahide Seki, Yutaka Suzuki, Chikara Takeuchi, Yuka W Iwasaki, Kensaku Murano, Mamiko Sakata-Yanagimoto, Shigeru Chiba, Hideyuki Kato, Hiroaki Sakamoto, Yuji Hiramatsu, Masaki Ieda

共同筆頭著者の貞廣威太郎(左)と山田優(右)

心臓病の終末像である重症心不全の根治療法である心臓移植は、ドナー不足などの問題により、十分な治療の提供が困難である。これらの課題を解決し得る方法として、我々は心臓線維芽細胞から直接心筋細胞を誘導する「心筋ダイレクトリプログラミング法」を開発し、心筋梗塞マウス、収縮力が低下した心不全マウスにおける心臓再生と、心臓線維化と心臓機能の改善に成功した。心不全は収縮力が低下した心不全と、収縮力の保たれた心不全に二分されるが、有効な治療法が存在しない収縮力の保たれた心不全にもこの方法が適用できるかは不明であった。そこで心臓線維芽細胞において心筋リプログラミング遺伝子の発現を薬剤投与によって制御できる遺伝子改変マウスを開発し、心筋ダイレクトリプログラミングにより、収縮力の保たれた心不全の線維芽細胞から心筋細胞が再生し、心臓線維化と心臓機能が改善することを世界で初めて明らかにした。さらに、心筋リプログラミング遺伝子の一つであるGata4遺伝子が心臓線維化治療に重要であることを発見し、Gata4遺伝子単独の遺伝子導入による、心臓線維化改善効果を介した収縮力の保たれた心不全の治療法を開発した。

(循環器内科 貞廣威太郎 86回)

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その他の掲載論文

1: Regeneration of Nonhuman Primate Hearts With Human Induced Pluripotent Stem Cell-Derived Cardiac Spheroids.

Kobayashi H, Tohyama S, Ohashi N, Ichimura H, Chino S, Soma Y, Tani H, Tanaka Y, Yang X, Shiba N, Kadota S, Haga K, Moriwaki T, Morita-Umei Y, Umei TC, Sekine O, Kishino Y, Kanazawa H, Kawagishi H, Yamada M, Narita K, Naito T, Seto T, Kuwahara K, Shiba Y, Fukuda K.