今月のサイエンス - 2015年11月
IMMUNITY
JUL 21 2015: 43 (1):65-79; 10.1016
Kashiwagi Ikkou, Morita Rimpei, Schichita Takashi, Komai Kyoko, Saeki Keita, Matsumoto Makoto, Takeda Kiyoshi, Nomura Masatoshi, Hayashi Atsushi, Kanai Takanori, Yoshimura Akihiko
人間の腸には常に100兆個以上の腸内細菌が生息しており、免疫のバランスを制御し、健康を維持するために重要であると考えられている。しかし腸内細菌が免疫バランスを制御する分子レベルでの仕組みは十分理解されていない。本研究では消化管内の細菌叢を改善し、腸炎を抑制することが知られているプロバイオティクスであるクロストリジウム属菌株に注目し、抗炎症性サイトカインであるトランスフォーミング増殖因子-β (TGF−β)の分泌と制御性T細胞(Treg)の誘導機構を調べた。その結果クロストリジウム属菌の主要細胞膜構成成分であるペプチドグリカンが消化管内において樹状細胞に作用することでTGF−βの分泌とTregの誘導を行うことを明らかにした。ペプチドグリカンは受容体であるTLR2を刺激してERK-AP1経路を経てTGF−βを誘導する。さらに通常TGF−βの下流で働く転写因子であるSmad2とSmad3もTGF−β産生やTreg誘導に関与し、Smad3が促進に、Smad2が抑制に働くという真逆の作用を有することを明らかにした。TGF−β産生とTregの誘導の分子機構が解明されたことで、本菌株を用いた炎症性腸疾患に対する、安全で効果的な予防法や治療法の開発が期待される。
(微生物学免疫学教室 吉村昭彦 60相当、柏木一公 博士課程4年)
2: The COUP-TFII/Neuropilin-2 is a molecular switch steering diencephalon-derived GABAergic neurons in the developing mouse brain.
PNAS
SEP 8 2015: 112 (36):E4985-E4994; 10.1073
Kanatani Shigeaki, Honda Takao, Aramaki Michihiko, Hayashi Kanehiro, Kubo Ken-ichiro, Ishida Mami, Tanaka Daisuke H., Kawauchi Takeshi, Sekine Katsutoshi, Kusuzawa Sayaka, Kawasaki Takahiko, Hirata Tatsumi, Tabata Hidenori, Uhlen Per, Nakajima Kazunori
脳内の神経細胞には、基本回路を作る興奮性神経細胞と、それらの活動を調節する抑制性神経細胞の2種類があります。それらが脳内でバランス良く配置されネットワークを形成することにより、脳は正しく機能しています。興奮/抑制のバランス異常は、統合失調症、自閉症、てんかん等と関連している可能性が注目されています。今回の研究では、私たちが以前開発した子宮内胎児脳電気穿孔法を用いてマウス胎児脳の視索前野に遺伝子導入し、そこで誕生する抑制性神経細胞の動きを観察しました。その結果、それらは細いルートを束になって尾側に移動し、将来扁桃体になる領域に進入していくことを見出しました。また、その移動経路の途中から、一部の神経細胞が移動方向を変えて大脳皮質に向かっていくことを見つけました。さらに、その細胞移動の目的地選択が、特定の分子経路によるスイッチのON/OFFによって制御されていることを見出しました。すなわち、転写制御因子COUP-TFII及びその下流で発現が調節されるニューロピリン- 2という受容体がONのままだと扁桃体に進入し、その経路が途中でOFFになると移動方向を変えて大脳皮質に向かうようになることがわかりました。
(解剖学教室 仲嶋一範 67回)
その他の掲載論文
1: An Interleukin-33-Mast Cell-Interleukin-2 Axis Suppresses Papain-Induced Allergic Inflammation by Promoting Regulatory T Cell Numbers.
IMMUNITY
JUL 21 2015: 43 (1):175-186; 10.1016
Morita Hideaki, Arae Ken, Unno Hirotoshi, Miyauchi Kousuke, Toyama Sumika, Nambu Aya, Oboki Keisuke, Ohno Tatsukuni, Motomura Kenichiro, Matsuda Akira, Yamaguchi Sachiko, Narushima Seiko, Kajiwara Naoki, Iikura Motoyasu, Suto Hajime, McKenzie Andrew N. J., Takahashi Takao, Karasuyama Hajime, Okumura Ko, Azuma Miyuki, Moro Kazuyo, Akdis Cezmi A., Galli Stephen J., Koyasu Shigeo, Kubo Masato, Sudo Katsuko, Saito Hirohisa, Matsumoto Kenji, Nakae Susumu
2: ERp44 Exerts Redox-Dependent Control of Blood Pressure at the ER.
MOLECULAR CELL
JUN 18 2015, 58 (6):1015-1027; 10.1016
Hisatsune Chihiro, Ebisui Etsuko, Usui Masaya, Ogawa Naoko, Suzuki Akio, Mataga Nobuko, Takahashi-Iwanaga Hiromi, Mikoshiba Katsuhiko