執筆者プロフィール

礒﨑 敦仁
法学部 法学部 教授(朝鮮語)
礒﨑 敦仁
法学部 法学部 教授(朝鮮語)
慶應法学部の東アジア研究には伝統があり、多くの研究者を輩出してきました。私はその傍流で、北朝鮮政治を専門にしています。 入手可能な情報に制限がある国家を研究対象にするには、間接的な手掛かりを相互補完的に活用することが必要になります。フィールドワークは不可能ではないものの、自由に歩き回ったりインタビューしたりすることはできません。韓国に亡命した脱北者の話はバイアスがかかっていることもあり、聴取は慎重に進めます。関係国の資料を収集するためにソウル、北京、ワシントン、モスクワなどに足を延ばすこともしばしばです。 しかし、最も頼りになるのは、北朝鮮自身が発信する公開情報の分析だと言えば意外に思うでしょうか。平壌で発行される新聞の論調はいかなるものか、そこに特定の語彙が何回出現しているか、最高指導者に随行する人物の顔ぶれに変化はないか、などを綿密に読み解いていきます。この手法は、ソ連分析で伝統的に行われてきたクレムリノロジーを文字って「ピョンヤノロジー」などと称すべきものです。限界はあるものの、彼らの論理やビジョンを読み解くには有効です。
福澤諭吉先生は、アジア諸国も近代化して独立を果たすべきだとして、朝鮮半島からの留学生を慶應義塾に招き入れました。明治14年のことです。隣国とは衝突も多いですが、感情論に流されず建設的な議論を進めることが重要です。未来を担う皆さんが良き伝統の継承者となることを切に願います。