執筆者プロフィール

横山 千晶
法学部 法学部 教授(英語)
横山 千晶
法学部 法学部 教授(英語)
2020年に新型コロナウィルスは私たちの日常と価値観を根底から覆しました。ウィルスは高齢者や少数民族の人々、有色人種など、弱者やマイノリティといわれてきた人々を真っ先に襲ったことで、私たちがコミュニティと呼ぶものの暗部に光を当てました。この社会的不平等は、アメリカで起こったBLM運動と結びつき、世界的な運動を引き起こしました。アフリカ系アメリカ人に対する暴力と差別は、奴隷貿易と植民地支配という同じ人間の搾取の歴史に由来するからです。
また当然のように享受していた文化的な活動がストップした際に、いち早くアーティストの緊急支援を行ったのがドイツでした。3月23日にグリュッターズ文化相の次の言葉を受けて、芸術家を含む自営業者への6兆円の緊急支援が発表されました。「アーティストは、今、生命維持に必要不可欠な存在だ。」イギリスも3月24日に、最初の芸術救済資金、216億円の投入に踏み切りました。日本では、文化庁が支援策を発表したのがようやく7月6日のこと。多額の560億円が用意されたとはいえ、申告の複雑さや使い勝手の悪さは、当事者の目線に立っているとは言い難いものでした。
このような社会問題や意識の違いはCOVID-19が作り出したものではありません。歴史の中で培われてきたものが、今回のパンデミックで顕在化したのです。
そして、ウィルスはこの長い歴史の中で何度も人間を襲い、人々はウィルスとの共存の道を探ってきました。人間もウィルスも自然の一部です。ウィルスとの共存は、人間のレジリアンス(強靭さ)の精神と新たな文化を生み出してきました。
私の専門は19世紀のイギリス文化ですが、19世紀は現在と切り離されてはいませんし、イギリスの歴史から日本にいる私たちが学べることはたくさんあります。そして今ここに生きていることそのものが、過去を引き継ぎ世界に向けての歴史を創り出しているのです。パンデミックの時代だからこそ、未来のために私たちが遺せることはたくさんありそうです。