慶應義塾

言葉はあらゆる法に通じる規範

執筆者プロフィール

  • 大出 敦

    法学部 法学部 教授(フランス語)

    大出 敦

    法学部 法学部 教授(フランス語)

法学部で外国語を学ぶとは?

みなさんは漠然と大学に入学すると1,2年次は外国語学習が必修だと思っているでしょう。もちろんそれは間違いではなく、法学部では英独仏中西露朝の7言語の中から2言語を選択し学習します。多くの学生は英語ともう一つの言語を選択しますが、中には英語以外の言語を二つ選択する人もいます。でも改めて考えてみましょう。なぜ法学部で外国語を学習するのでしょうか。グローバル化に向けてでしょうか。海外旅行のためでしょうか。就職に有利になるためでしょうか。

法学部的感性を養う語学

 言語はそれを用いる人の思考や行動を規定します。例えば「迎えに行く」という表現は、英語ではpick upですね。私が教えているフランス語ではchercherという動詞を使うのが普通です。pick upは日本語に直訳すると、「拾い上げる」「つまみ上げる」です。chercherは「探す」です。迎えに行くという行為を英語は拾い上げる行為で表現し、フランス語は探すという行為で表現しています。行為自体は同じなのにです。つまり同じ行為でも言語によって表現の仕方が異なるのです。何だ、当たり前じゃないかというかもしれませんが、この言語による物事の捉え方の違いが、自分たちと異なる考え方を生み出し、行動を規定しているのです。さらにいえば、この異質なものである言語がその国独特の法体系や政治思想の規範そのものなのです。大学での外国語学習は、結果として留学や就職に役立つかもしれませんが、実は異質な考え方を体験することで、自分たちとは異なる法体系や政治思想、社会、文化を理解する基礎学習なのです。一見したところ、専門の授業と直結しているように見えませんが、言語の習得は法学部的感性を養うものなのです。 そのため法学部では、外国語を深く学びたいと希望する学生のための週4回のインテンシヴ・コースなどみなさんのニーズに応じたさまざまなレベルのクラスを用意しています。また各言語と連動した地域文化論という特色ある授業もあります。さあ、では4月から一緒に法学部的感性を育みましょう。