# 18
「三田会」は思ったより遠くない ~世代を超えてつながる慶應義塾のネットワーク~
プロフィール
大下 亨治(おおした きょうじ)
その他現在、一般財団法人連合三田会の事務局長を務める。慶應義塾で入試担当の課長を務めたことをきっかけに三田会と関わり、その後、秘書課長として交流を重ねる中で、地域三田会の熱意や、人と人とのつながりを大切にする文化に魅力を感じたという。
佐々木 信二(ささき しんじ)
その他慶應義塾塾員センター課長を務める。慶應の卒業生だが、進んで三田会に行くことはなかったそう。塾員センターで上司に誘われ行ってみたところ、「居心地のよさ」に気付いたという。現在は、慶應義塾の代表として各地の三田会に参加し、義塾の今を伝えている。
「三田会」を支える二つの組織
「三田会とは、卒業生が集まる交流・親睦の会です。」
大下さんは、まずそう説明する。
三田会の起源は明治時代までさかのぼる。当時から、卒業生同士が集まり、お互いに切磋琢磨しながら慶應義塾を支えていこうという文化が自然と育まれていた。在学中に所属していた部活やゼミ、または地域などを起点に結成される大小さまざまな三田会を束ねる組織として誕生したのが「連合三田会」である。一般財団法人として大学からは独立した組織であり、この点は他大学の同窓会組織とは大きく異なる特徴の一つだ。
一方で、大学と全く無関係というわけではない。両者をつなぐ役割を担っているのが、慶應義塾の事務部門として義塾全般の塾員に関する事項を担当する「塾員センター」だ。 主に、卒業生の名簿管理や相談役を担い、連合三田会との強い結びつきを維持している。
世代を超えて受け継がれる「つながり」
慶應義塾の魅力としてよく挙げられる「縦と横のつながり」、それを支えているのが、この二つの組織である。
慶應義塾は卒業25年目の塾員を卒業式に、卒業50年目の塾員を入学式に招待している。
また、毎年開催される「連合三田会大会」では卒業30年目の塾員を中心に、卒業10、20、30、40年目の各期が協力して大会運営を担う。卒業年次ごとに役割を受け継いでいくこの仕組みは、三田会ならではの世代を超えたつながりを生み出している。
しかし、「若い人の参加率が低くて…」 とお二方は語る。
若い世代をつなぎ止める新たな挑戦
この課題に立ち向かおうと始まったのが、「卒業5年塾員招待会」である。コロナ禍で対面での卒業式が行えなかった世代を対象に2025年に初めて開催されたこのイベントには、当初の予想を大きく上回る約1000人が参加した。
これまで、連合三田会大会の当番年となる卒業10年目が最初の再会の機会だった。しかし、仕事やライフイベントなどで参加へのハードルが高くなっているのも事実。
「卒業してから10年待つのではなく、5年目で一度戻ってきてもらう。」
卒業5年後、仲間がそれぞれどのような場所で活躍しているのか知ることができるのは、とても魅力的な機会だ。第1回が好評だったことから、今後も継続して開催される予定だという。この新しい試みは、若い世代が再び母校とつながるきっかけとなるはずだ。
まずはぜひ参加を
「参加してもらわないと良さが伝わらないんだよね。」
取材中大下さんが何度も口にしていた言葉だ。
塾生でも「連合三田会大会」には足を運ぶことができる。毎年10月の第3日曜日、日吉キャンパスでは大会記念式典や講演会、コンサート、スポーツイベントなど、誰もが楽しめる多彩な催しが開催される。この式典には大会実行委員が長年の貢献への感謝を込めて卒業50年目の塾員を招待する習わしもある。加えて、大会では卒業生が関わる飲食店や企業ブースが並び、多くの塾員が集う。
「第4校舎の前の広場や記念館前広場に、色々な塾員の関係のお店がでていますから、塾生にも食べたり飲んだりしながら楽しんでほしい。そして、卒業後また三田会に、連合三田会大会に行ってみようという一つのきっかけになれば。」
飛び込めば、そこにネットワークがある
社会に出れば、転勤先で地域三田会が迎えてくれる。知らない土地でも、暮らしのことを教えてくれる先輩がいる。異なる会社でも、同じ業界でも経験や知識を惜しみなく共有してくれる。
「ライバル企業という立場を超えて、慶應義塾の先輩として力を貸してくれるんですよ 」
そう笑いながら言う大下さんの言葉からは、「後輩のためなら力になりたい」という慶應義塾らしい文化が伝わってきた。三田会の魅力は、名前や歴史だけでは分からない。実際に人と交流し、その温かさに触れることで初めて実感できるものなのだろう。
もちろん、そのネットワークは待っているだけでは得られない。
「まずは参加する。」「まずは連絡してみる。」
その一歩が、新しい出会いを生み出していく。
最後に
福澤諭吉は、「人間(じんかん)交際が社会を作る」という言葉を残している。
その言葉を最も体現している組織が三田会なのだと感じた。三田会とは、人が人を呼び、人との縁が次の世代へ受け継がれていくネットワークそのものなのだろう。
「まずは若者にも三田会に参加してみてほしい。」
三田会をどこか遠い存在に感じ、近づくことをためらっている塾生も、一歩踏み出してみれば、温かく迎え入れ、後輩のために親身になって力を貸してくれる人たちと出会えるはずだ。 今回の取材で、大下さんと佐々木さんのお二人が終始笑顔で接してくださった姿からも、それを強く実感した。
そして、この温かなつながりは卒業生だけのものではない。慶應義塾を目指す受験生も、入学すれば学部やゼミ、サークル、そして卒業後の三田会へと続く、一生の財産となる人とのつながりが待っている。
飛び込んでみれば、その先には人生を少し豊かにしてくれる新しい出会いと、慶應義塾ならではの温かなネットワークが広がっているだろう。
※本記事は2026年時点の情報に基づき作成されたものです。