執筆者プロフィール
羽島 大貴
健康マネジメント研究科 スポーツマネジメント学慶應義塾体育会野球部でアナリストを務め、選手の動作やパフォーマンス分析に携わる。 健康マネジメント研究科修士課程では、三次元動作解析を用いてカーリングのデリバリー動作を研究。 修士課程修了後は同研究科後期博士課程へ進学。
羽島 大貴
健康マネジメント研究科 スポーツマネジメント学慶應義塾体育会野球部でアナリストを務め、選手の動作やパフォーマンス分析に携わる。 健康マネジメント研究科修士課程では、三次元動作解析を用いてカーリングのデリバリー動作を研究。 修士課程修了後は同研究科後期博士課程へ進学。
健康マネジメント研究科へ入学しようと思った理由は何ですか。
私は学部時代、慶應義塾体育会野球部でアナリストを務め、選手の動作やパフォーマンスをデータから分析していました。その経験を通じて、スポーツの現場で生まれた疑問を感覚だけで終わらせず、科学的に検証したいと考えるようになりました。
大学野球部に所属していた頃から稲見准教授と接点があり、研究や進路について相談する機会がありました。私が大学院への進学を考えていた時期と、稲見准教授が研究室を立ち上げる時期がちょうど重なったことも、大きなきっかけです。スポーツ現場に近い視点を持ちながら、身体運動を科学的に研究できる環境に魅力を感じ、健康マネジメント研究科への進学を決めました。
研究内容や印象に残るエピソードなどを教えてください。
修士課程では、カーリングのデリバリー動作をバイオメカニクスの観点から研究しました。カーリングの研究は、スイープや戦術を扱ったものが多い一方、ストーンを投じるデリバリー動作については、十分に明らかになっていませんでした。そこで、三次元動作解析装置などを用いて選手の動作を計測し、下肢や体幹、上肢がどのように働いているのかを分析しました。
特に印象に残っているのは、実際のカーリング場に機材を持ち込み、氷上で測定を行ったことです。特殊環境の中で多数のカメラや計測機器を設置し、競技を妨げずに正確なデータを取得するためには、多くの準備と協力が必要でした。実験計画の作成から選手との調整、測定、データ解析までを一貫して経験したことで、研究は一人で完結するものではなく、多くの方との協働によって成り立つことを実感しました。
健康マネジメント研究科の強み・魅力は何でしょうか。
健康に関する課題を、一つの専門分野だけに限定せず、多角的に考えられることが大きな魅力だと思います。身体運動やスポーツ科学に加え、医学、看護、健康政策、マネジメントなど、異なる専門性を持つ教員や学生と関わることができます。
また、学生の経歴や研究テーマが多様であることも特徴です。授業や研究活動を通じて、自分とは異なる視点や考え方に触れる機会が多く、自分の研究がスポーツの中だけで完結するものではなく、人々の健康や社会とどのようにつながるのかを考えられるようになりました。少人数で教員との距離が近く、自分の問題意識を大切にしながら研究を深められる点も、この研究科の強みだと感じています。
進路について、選んだ理由を含めて、教えてください。
修士課程修了後は、同研究科の後期博士課程へ進学しました。修士研究を通じて、一つの研究によって明らかにできることには限りがあり、スポーツのパフォーマンスを支える要因には、まだ多くの未解明な点があると感じたためです。修士課程で身につけた動作解析や研究計画、データ分析の力をさらに高め、スポーツ現場で生じる疑問に科学的に答えられる研究者を目指したいと考えました。
同時に、身体の動きや運動を科学的に理解することは、競技力の向上だけを目的とするものではないと考えています。スポーツ選手を対象とした研究で得られる知見は、一般の方の健康づくりや身体機能の維持、傷害予防などにも応用できる可能性があります。スポーツを出発点としながら、より多くの人の健康に貢献できる研究へ発展させたいと考え、後期博士課程への進学を選びました。
お仕事を含めた現在の目標、将来へのビジョンを教えてください。
現在は、カーリングにおける熟達やパフォーマンスを左右する要因を、バイオメカニクスの観点から明らかにすることを目標としています。競技現場には、選手や指導者が経験を通じて蓄積してきた優れた知識が数多くあります。その感覚や経験を尊重しながら、計測と分析によって背景にある仕組みを明らかにし、現場で活用できる形で還元したいと考えています。
将来は、大学野球部でのアナリスト経験と大学院で培った研究能力を生かし、研究と実践をつなぐ役割を担いたいと考えています。その対象を競技スポーツだけに限定するのではなく、研究で得られた知見を、子どもから高齢者まで幅広い人々の健康づくりや身体機能の維持・向上、傷害予防にも役立てたいと思っています。身体を動かすことが、一部の競技者のためだけでなく、誰もがより健康で充実した生活を送るための力となるような活動に取り組むことが、将来の目標です。
健康マネジメント研究科への入学を検討している方へメッセージをお願いします。
健康マネジメント研究科は、現場で感じてきた疑問や問題意識を、研究という形に発展させられる場所です。入学時点で研究テーマや方法が完全に定まっている必要はありません。専門の異なる教員や学生との対話を重ねる中で、自分が本当に明らかにしたいことや、その研究が社会にどのような価値をもたらすのかが少しずつ明確になっていきます。
私自身も、野球部でのアナリスト経験から生まれた「スポーツ動作を科学的に捉えたい」という関心を出発点として、大学院ではカーリングという新たな研究対象に出会いました。そして研究を進める中で、スポーツを対象とした研究が、競技力向上だけでなく、より多くの人の健康や生活の質にもつながり得ることを学びました。
健康に関する課題は、スポーツ、医療、福祉、教育、地域社会など、さまざまな領域と結びついています。これまでの経験や日常の中で抱いた小さな疑問も、多くの人の健康に寄与する研究の出発点になるかもしれません。自分の関心を深く掘り下げ、社会に還元したいと考えている方には、挑戦する価値のある環境だと思います。