研究概要
難治性がんの代表である胆道がんおよび膵臓がんは早期診断が難しく、現行の化学療法の効果も限定的で、5年生存率は20%以下と予後も極めて不良です。 これまでに私たちは、肝内胆管がんや胆嚢がん、膵臓がん、さらにはファーター乳頭部に発生した神経内分泌がんなど希少な症例からもオルガノイドを樹立し、安定的に培養・維持することに成功しています。これらの難治性がんおよび希少がん患者由来のオルガノイドは、生体内の腫瘍と組織学的にも機能的にも高い類似性を示しており、in vitroでバイオマーカーの探索や治療薬の薬剤感受性の検証を行う上で極めて強力な研究ツールになります。 一方で、リアルワールドデータ(Real-World Data: RWD)を用いたがん患者のゲノム異常、予後、薬物治療効果に関する解析は、実臨床における治療最適化や個別化医療の構築に不可欠なアプローチです。 本研究では、この二つの研究領域を融合させ、「実臨床データ」と「患者由来腫瘍モデル」を往復させる統合腫瘍学(integrative oncology) の新たな研究領域を開拓したいと考えています。具体的には、RWDで得られる大規模なゲノム情報と治療反応性のパターンから臨床的に重要な遺伝子変異やバイオマーカー候補を抽出し、それらを患者由来オルガノイドで機能的に検証することで、分子病態の理解と新規治療戦略の開発を同時に推進することを目指します。この統合的アプローチにより、難治がんの分子機序解明とバイオマーカー探索および個別化医療の開発を目指すプレシジョンオンコロジーを確立したいと考えています。
専門
薬物治療学、消化器病学、分子腫瘍学、プレシジョンオンコロジー