慶應義塾

木崎 速人

キザキ ハヤト

薬学部 薬学科 専任講師

研究概要

私は,医療安全・地域医療・薬学教育への応用を志向する情報学研究に取り組んでいる. 介護施設,医療機関,薬局,教育といった「薬」が介在する場では,インシデント,患者とのやり取り,学習の過程など,実践の質を左右する多くの出来事が日々生じている.しかし,それらは,はじめから分析や支援に利用できるかたちで記録・把握されているわけではなく,そもそも情報として十分に捉えられていないことが少なくない.さらに,記録されたとしても,自由記述や複雑な相互作用のかたちをとることが多く,体系的な理解や活用が難しい. 私は,このような現場で生じる出来事や実践を,自然言語処理(Natural Language Processing;NLP)をはじめとする情報学的手法によって構造化し,分析や支援につなげることを目指している.また,そうして得られた知見を,単なる記述や評価にとどめるのではなく,現場における学習や改善に還元可能なかたちへとつなげることを重視している. 主な研究テーマは以下のとおりである. 1. 医療安全に関する研究 介護施設や医療機関における薬剤関連インシデントを対象に,発生状況や背景要因を明らかにするとともに,インシデント報告の自由記述から要因を抽出する分析基盤の構築に取り組んでいる.ヒューマンファクターの視点と自然言語処理を組み合わせることで,インシデントの理解を深め,そこから得られる知見を再発防止や学習につなげる仕組みの実現を目指している. 2. 地域医療に関する研究 地域の医療,介護,薬局の現場で生じる課題に対して,患者報告データ,症状情報,医療・薬学関連データなどを活用し,より適切な情報共有や支援のあり方を検討している.医療・介護・生活をまたぐ実践の質を高めるために,現場で活用可能な知見や仕組みを構築し,地域における継続的な改善と学習に資することを志向している. 3. 薬学教育に関する研究 服薬指導や実習における学習過程に着目し,コミュニケーションや省察の内容を情報として分析することで,教育評価や学習支援の高度化を目指している.音声,言語,映像などの多様なデータや,大規模言語モデル(LLM)を活用しながら,薬学教育における新たな評価・支援手法を探究するとともに,教育の場における学習をより豊かにする仕組みの構築を目指している. これらの研究に共通するのは,現場で生じる複雑な出来事や経験を情報として捉え直し,構造化し,分析や支援,さらに学習へとつなげるという視点である.私は,薬学,医療,介護,教育の各領域において,現場に根ざした課題を情報学の方法論によって捉え直し,実践の改善と新たな価値創出に結びつけることを目指している.

専門

医療情報学,医療安全,薬学教育

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