慶應義塾

志水 秀行

シミズ ヒデユキ

医学部 外科学(心臓血管)教室 教授

研究概要

1.大動脈瘤手術時の脊髄保護に関する研究 大動脈手術時の対麻痺予防を目的としたさまざまな基礎研究を行う中で、脊髄 局冷却用カテーテルを世界で初めて開発した。 脊髄冷却は最も信頼し得る脊髄保護法であるが、人工心肺を用いた従来の全身冷却法は血液凝固異常や人工心肺時間延長などをきたす欠点があった。 われわれの開発したカテーテルは全身体温を維持しつつ脊髄のみを26.5℃まで冷却させ、全身冷却による弊害なく良好な脊髄保護効果をもたらすことをまず動物実験で示し、さらに、基礎実験で得られた良好な結果を基に倫理委員会の承認を得て、本法を臨床導入し、本法を用いた胸部下行・胸腹部大動脈瘤手術の良好な初期成績と安全性に関する世界初の臨床報告を行った。 そのほか、脳脊髄液ドレナージ、電気生理学的モニター、周術期血行動態管理、画像診断など、周術期合併症予防のためのさまざまな研究を行っている。 2.Marfan症候群に関する臨床研究 Marfan症候群に対する大動脈基部置換術後の長期遠隔予後を検討し、非解離例は解離例に比べ遠隔期の追加手術は有意に少ないが、非解離例においても術後7年以上経過すると3割以上の症例で新たな解離が発症する実態を明らかにした。 これら新しい知見によって、Marfan症候群においては解離発症前に予防的基部置換を行うことに妥当性がある一方で、大動脈解離の発症自体を抑制する別のアプローチも重要であることを示した。 また、本症候群に関する多施設共同研究にも参加し、本疾患の治療成績向上ための研究を行っている。 3.大動脈瘤・大動脈解離の病因および疾患予防に関する基礎研究(共同研究) 腹部大動脈瘤(AAA)破裂は致命的で、本疾患の克服には発病メカニズムの解明が必須である。 ヒトAAA検体及びマウスAAAモデルの研究により、AAA形成にVFGF-Aが重要な役割を果たしていることを示した。また、急性大動脈解離患者で血中MMP-9やアンジオテンシンII(A-II)が有意に上昇していることを見出し、A-IIにより大動脈内膜に浸潤した活性化好中球から放出されるMMP-9が解離発症に関与することを解明し、ARBの降圧で解離の発症を予防し得る可能性を示した。 4.大動脈手術術中および術後の脳灌流に関する研究、新術式の開発 弓部大動脈手術においては術中脳保護が必要であるが、これまで客観データによる検討は少なかった。そこで、術中順行脳灌流による脳血流分布、適正な脳灌流量の指標となるデータを示す研究を行った。 また、弓部大動脈瘤に対するハイブリッド(分枝バイパス作成+ステントグラフト留置)手術は従来手術よりも低侵襲で有用な術式であるが、非解剖学的バイパス後の脳血流の検討は行われてこなかった。 そこで、術前後の弓部分枝血流および脳血流を比較検討し、術後、頚動脈血流は右側優位となるが、脳局所血流は安静時、負荷時とも左右差なく術前と同レベルであること、ハイブリッド手術後にも適正な脳血流が維持されていることを示した。 さらに、理工学分野との共同研究により、人工血管の血流パターンの解析、至適人工血管の開発などの研究、新術式の開発なども行っている。

専門

心臓血管外科学、大動脈ステトグラフト治療、低侵襲心臓血管外科手術、臓器保護法、人工臓器

論文指導資格

医学研究科における論文指導資格

修士/博士

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