執筆者プロフィール

足立 剛也(共編著)(あだち たけや)
医学部 皮膚科学教室専任講師、同病院アレルギーセンター副センター長
足立 剛也(共編著)(あだち たけや)
医学部 皮膚科学教室専任講師、同病院アレルギーセンター副センター長
医師として日々診療に向き合う中で、「なぜ今こんなにアレルギーが増えているのか」「正しい知識はどこにあるのか」という声を多く耳にしてきました。現場で感じる、よりわかりやすい情報を求める素朴な疑問や不安こそが、本書『アレルギーの科学』の出発点でした。
アレルギーは、国民の2人に1人が関わる「社会的な病」とも言える存在です。しかし、その基盤にある免疫のしくみは複雑で、誤解や不安も少なくありません。最新の研究成果が社会へ届くまでには大きなギャップがあります。この"知の断絶"を埋めたい──その思いで、本書の構想を始めました。
ただ、その編集者の言葉に考えさせられた。自分が大学で学んだフランス文学、その後教師になってから学生相手に講義をしてきたフランス文学は、そもそも本国でどのようにして成立したのか。換言すれば、フランス語で書かれた文学はいつから「フランス文学」になったのか。
執筆には、共編著者で国立成育医療研究センター免疫アレルギー・感染研究部部長の森田英明先生をはじめ、我が国の「免疫アレルギー疾患研究10か年戦略」を主導するENGAGEタスクフォースのメンバーが参加。内科、小児科、皮膚科、耳 鼻科、眼科、基礎免疫学など19名の医師・研究者がそれぞれの最前線から「いま本当に伝えたいこと」を持ち寄ってくれました。「専門書でなく、"生活者の視点"に寄り添った科学書を」と語り合いながら、文章を磨きあげていく作業は、刺激に満ちたものでした。
私自身、家族が薬害による難病を経験したこと、さらには自らもアレルギーを発症し研究テーマを転換せざるを得なかったことなど、個人的な体験が多くあります。患者として、家族として、そして研究者・臨床医として──複数の立場からアレルギーと向き合ってきた経験も、本書を編む上で大きな動機となっています。
本書では、アレルギーの基本から最新研究、生活に役立つ知識までを、どなたでも読めるように目指しました。正しい知識を知ることは、症状に悩む方にとっては「見えない不安」を「見える安心」に変える一歩になり、医療者にとっても地域社会と医療をつなぐ新しい対話の入口となるはずです。
慶應義塾には、「半学半教」の精神のもと、学びを社会に還元する文化があります。本書がその一端を担い、アレルギーとともに生きる人々の支えとなれば、これに勝る喜びはありません。
※所属・職名等は当時のものです。