慶應義塾

『政策起業家──「普通のあなた」が社会のルールを変える方法』

執筆者プロフィール

  • 駒崎 弘樹(こまざき ひろき)

    その他 : 認定NPO法人フローレンス代表理事

    塾員

    駒崎 弘樹(こまざき ひろき)

    その他 : 認定NPO法人フローレンス代表理事

    塾員

2022/04/22

社会課題に取り組む人々の間で知られている「溺れる赤ん坊のメタファー」という寓話がある。それはこんな話だ。

あなたは旅人だ。旅の途中、川に通りかかると、赤ん坊が溺れているのを発見する。あなたは急いで川に飛び込み、必死の思いで赤ん坊を助け出し、岸に戻る。

安心してうしろを振り返ると、なんと、赤ん坊がもう1人、川で溺れている。急いでその赤ん坊も助け出すと、さらに川の向こうで赤ん坊が溺れている。

そのうちあなたは、目の前で溺れている赤ん坊を助けることに忙しくなり、実は川の上流で、1人の男が赤ん坊を次々と川に投げ込んでいることには、まったく気づかないのだ。

これは「問題」と「構造」の関係を示した寓話だ。問題には常に、それを生み出す構造がある。目の前で溺れる赤ちゃんという「問題」に対処しながらも、投げ込む男がいて悲劇を生産し続けるという構造に対し、男を止めることで構造を変えなくてはいけない。

この、「構造」に対してアプローチする民間の人々のことを、政策起業家と言う。アメリカではPolicy Entrepreneur と呼ばれる人たちが非営利シンクタンク等を創業し、政府や官僚に働きかけ、政策を次々に実現している。

政策起業家は、このPolicy Entrepreneur の直訳だ。現代日本にこそ、この政策起業家が必要だ。なぜか。コロナ禍における政府の失態の数々。疲弊する官僚機構。失われた30年とも言えるような経済の停滞。進行し続ける少子高齢化。爆速のテクノロジーの発展と古くなり続ける法律群。そしてグローバルな気候危機はすでに日本に大きな水害をもたらし始めている。

もはや政治家や官僚だけに政策立案を任せられる状況にないのは、火を見るより明らかだからだ。

本書は、この政策起業のやり方を、私自身の政策起業家としての歩みとともに紹介している。この本を読み終わった後に、あなたは気づくかもしれない。「なんだ、政策を変えるって、意外と誰でもできるんだ」と。あなたにそんな驚きをプレゼントしたい。

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。