登場者プロフィール
長岡 裕樹(ながおか ひろき)
その他 : ボードゲームスペース「パイナップルゲームズ田町店」店長法学部 卒業2004年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2019年に港区初のボードゲームスペース「パイナップルゲームズ田町店」を開店。イベント等を通じてボードゲームの楽しさを広めている。
長岡 裕樹(ながおか ひろき)
その他 : ボードゲームスペース「パイナップルゲームズ田町店」店長法学部 卒業2004年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2019年に港区初のボードゲームスペース「パイナップルゲームズ田町店」を開店。イベント等を通じてボードゲームの楽しさを広めている。
島田 賢一(しまだ けんいち)
その他 : クリエーティブユニット「daitai」ワークショップデザイナー・ゲームデザイナー環境情報学部 卒業2004年慶應義塾大学環境情報学部卒業。2014年に「daitai」を設立。2018年より株式会社グッドパッチに参画。プロジェクトマネージャーを務める。
島田 賢一(しまだ けんいち)
その他 : クリエーティブユニット「daitai」ワークショップデザイナー・ゲームデザイナー環境情報学部 卒業2004年慶應義塾大学環境情報学部卒業。2014年に「daitai」を設立。2018年より株式会社グッドパッチに参画。プロジェクトマネージャーを務める。
杉浦 淳吉(すぎうら じゅんきち)
文学部 教授1998年名古屋大学大学院文学研究科博士課程(後期課程)心理学専攻単位取得退学。専門は社会心理学。2020年日本シミュレーション&ゲーミング学会 優秀賞受賞。日本シミュレーション&ゲーミング学会理事。
杉浦 淳吉(すぎうら じゅんきち)
文学部 教授1998年名古屋大学大学院文学研究科博士課程(後期課程)心理学専攻単位取得退学。専門は社会心理学。2020年日本シミュレーション&ゲーミング学会 優秀賞受賞。日本シミュレーション&ゲーミング学会理事。
2022/05/25
ボードゲームとの出会い
島田さんはどのような経緯でボードゲームのデザインにかかわるようになったのですか?
大学時代、SFCの加藤文俊先生の研究室に在籍していた時、「遊び」をつくることって面白いんだなと思って、卒業後はゲームメーカーのナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に入ったんです。
そこで「リッジレーサー」というレースゲームや任天堂「Wii」で、家族向けのスキー・スポーツゲームなどのデジタルゲームをつくっていました。
ただ、やはり対面でコミュニケーションが取れる遊びにも魅力を感じていたので、仕事をしながら同じ研究室出身の友人と「JOYPOD」や「daitai」というユニットを立ち上げ、そこでボードゲームをつくったり、ワークショップを開くことを始めたんですね。
そうやって細々とやっている中で、ゲームマーケットと出会い、自分たちがつくったものを出していくような活動を2010年頃から続けています。
僕は島田さんと慶應では同年卒になりますが、大学時代、奇術愛好会に所属していました。日吉の部室にOBが残した面白いボードゲームがあって、空き時間に皆で遊んでいました。
なんというゲームですか。
「スコットランドヤード」というゲームです。もちろんそれも面白かったのですが、ちょうどその頃カプコン社から「カタン」がリリースされ、日本中で大ヒットしたんですね。渋谷に大きな広告が出たり、新宿コマ劇場で数百人のイベントが行われたりしていました。三田の中庭で遊んでいる人もいましたね。私もそれではまっていって。
それでボードゲームカフェをやろうと。
いきなりではないですよ(笑)。卒業後は就職し、地方を転々としていたのですが、2014年頃、東京に戻ってきて旧友と会った時に、ボードゲームカフェというのがあるから行ってみようという話になり、最近のボードゲームってすごく面白いんだなと知りました。
もともと別の業界での起業を考えていたのですが、諸々の事情で断念することになり、別業種での起業ということで、成長著しいボードゲーム業界への参入を決めました。田町にいい物件が見つかったので、2019年から営業を始めたんです。
ドイツのボードゲーム
私の中でゲームが自分の研究に結び付いたのは名古屋大学の大学院に進学した時です。恩師の広瀬幸雄先生が、教育用のゲームを用いて社会心理学の授業をやっておられたんですね。
仮想世界ゲームといって、40人ぐらいで丸1日かけてやるようなゲームもありましたし、トランプの「ダウト」を不法投棄が起こる仕組みを理解するためのゲームに改良したものもありました。カードを廃棄物に見立て、有害廃棄物をこっそり捨てるのか、正直にお金を払って捨てるのかみたいなことをやるんです。
2000年、環境関連の市民活動への参加を契機に、「説得納得ゲーム」というのを自作し、そこからコミュニケーションのゲームを研究していきました。
2004年頃、商学部の吉川肇子先生から、ドイツのミュンヘンで開かれる国際シミュレーション&ゲーミング学会に行こうと誘われました。その時、ミュンヘンのおもちゃ屋さんに連れていってもらったら、壁一面がボードゲームで埋まっている。これには驚きました。
その後も、ドイツに調査に行くたびにおもちゃ売り場に行って、「これって何かに使えそうだ」と買い漁ってきたんです。
ドイツのボードゲームとの出会いが大きかったのですね。
そうですね。ドイツのゲームはまず見た目が素晴らしく、そしてルールがまた素晴らしい。最初は、ルールを自分流に改良し、新しいゲームをつくれないかとも考えていたのですが、ゲームそのものをプレイすること自体、実はものすごく学びになることに気付きました。
学生にそのゲームが表している世界や構造は何か、その背後にあるものは何かを考えてもらうことで、ボードゲームから社会を見る新しい視点を獲得できるとわかったんです。
ボードゲームは定義できるか?
僕の店には500種類以上のゲームがありますが、ドイツやアメリカのものが多いです。ただフランスもたくさんゲームを出していますし、最近は台湾も増えています。残念ながら日本はすごく後進国です。
ボードゲームと一言で言っても非常に広いというか、すごくいろいろな種類がありますね。ボードを使ったゲームだけではなく、カードゲームもあるし、筆記具を使ってやるものもある。むしろ概念的な用語になっているような気がします。
そうですね。ボードゲームとは何かと改めて考えてみると、1つの定義としてはプレイヤー皆が見えている部分があること、これが「ボード」であろうと思うんです。共有できている部分ですね。裏向きに置かれたカードの山も含め、そういうものがボードであると。
だから、実際にボードがなくてもカードを出す場など、そこでプレイしている人たちが共有できている場があればいいのかもしれません。テーブルの上でやっても、壁を伝ってやる双六のようなものがあってもよい。そういう意味ではいろいろなボードが考えられるかなと思います。
西部劇の決闘をテーマにした、ブリトーを投げるゲームもあります。あれはもう机さえもなくて、カードを開いたら「投げつけろ」みたいな指示がある(笑)。
ボードなんて全然ない。枕投げみたいなものですよね。
だから定義にこだわらなくていいと思うんですよ。でもアナログゲームと言うと何かちょっと違う。「アナログゲーム屋さん」とは言わないですよね?
アナログゲームというとデジタルとは違うんだと、妙な隔絶を感じてしまう。別にボードゲームにデジタルを使ってもいいじゃないですか。実際、そういうものもあります。
最近だとスマホ連動のゲームとかも存在します。
「ボードゲーム」という表現には何か広さを感じるんですよね。
大人気の「カタン」
先ほど話した「カタン」は世界で3番目に売れているボードゲームです。1位が「モノポリー」、2位が「人生ゲーム」、3位が「カタン」です。
「人生ゲーム」は日本のゲームと思っている方が多いですが、もとは「ゲーム・オブ・ライフ」とい外国のゲームです。ただ、日本はいろいろなスピンオフをつくっています。
「カタン」の日本版が出たのが2000年頃ですが、あるユーチューバーの方が言うには、「カタン」はダイスを2個振って駒を進めて、お金を出し入れするという「モノポリー」の次のトレンドが5、60年越しにやっと現れたものだと。それまでずっと「モノポリー」、「人生ゲーム」が市場を独占していたところに数十年ぶりに食い込んだのです。それくらい圧倒的な人気でした。
「カタン」は世界選手権があって日本人も活躍していますよね。
こういうゲーム、日本人は強いですからね。「カタン」は95年に「ドイツ年間ゲーム大賞」を取っています。翌年、アメリカでも賞を取り、99年から2000年に「日本テーブルゲームグランプリ」で1位。ほかにチェコ、ポーランドでも賞を取っています。
ちょっと悔しいのは、日本産で世界に通用しているゲームが少ないことです。特にプレイ時間が90分以上かかる重量級と言われている花形のゲームの分野では日本人のクリエーターはほとんどいません。海外の有名な賞で上位に食い込んだとかいう話もさっぱり聞かない。
なぜ日本ではそうしたクリエーターが誕生しないのでしょう?
台湾のクリエーターの方と話したことがありますが、台湾ではゲームをつくっている人たちのコミュニティがしっかりできていて、ドイツで年間大賞を取ることを前提に戦略を練っているようです。日本だと「記念にとりあえず赤字が出ないぐらい売れればいい」くらいの感覚の方はまだまだ多いです。
何でそうなってしまうのですかね。
日本は制作コストが高いのが大きな理由でしょうね。僕もゲームをつくりますが、重量級のゲームになると、輸送コストも含めてアマチュアにとっては予算が膨大になる。
では日本の大手玩具メーカーがそれをつくるかというと、日本のボードゲームの流通量は、ヨーロッパ諸国と比べて20分の1とか30分の1というレベルです。大量生産がしにくいため、製造コストが高くなるか、薄利になるかで敬遠されます。
だから、日本では低コストでつくれる、カードが50から100枚ぐらい入った小箱サイズのゲームが必然的に多くなっているのが現状です。
諸外国は国を挙げてボードゲームのマーケットづくりに取り組んでいるという話を聞いたことがあります。それから、デジタルにもすごく投資をしている。日本はいまやデジタルゲームすら後れをとっていることがあり、残念だなと思います。
でも、私が知っているところだと、日本のOink Games というメーカーが作った「海底探検」という、面白いゲームがあります。海底に潜って宝物を取ってくるのですが、酸素ボンベをプレイヤーで共有しているので、誰か1人がたくさん酸素を消費してしまうと、他の人も戻ってこられなくなってしまう、いわば運命共同体のようなゲームです。
パワー自体が他の人と共有されているところが面白く、これは使えるなと思ってゼミの中でもやって、それで卒論を書いた学生もいました。
それはすごいですね。
また、今は絶版になっていますが、環境問題を扱う、「キープクール」というドイツ製のゲームが面白いです。地球温暖化をテーマにした国際間交渉のゲームで、世界地図のボードがあり、世界に工場を建てていく。
世界の二酸化炭素濃度を表すメーターがあるのですが、与えられた目標に従って私益を優先させる行動をとると世界の気温が上がっていくようになっています。その温度上昇により、災害のリスクが高くなっていきます。授業でも15年以上やっています。
ゲームを通じて得られる体験
デジタルゲームは、すべてが入力と出力の対応関係みたいなところがあります。一方、ボードゲームは、いろいろなボードやカードや駒があり、それを手で触りながら、「これって何をするのだろう」と試行錯誤しながら進めていき、時には間違ったルールの理解で進めてしまうこともあるわけです。
ルールについても、「あ、そうか。こういうルールなのだ」と気付いた時に、ある種のゲームの素晴らしさを感じることができる。つまり、自分たちでルールというものを獲得していく、というプロセスも含めた面白さがあると思うのですね。
確かにそうかもしれませんね。
例えばサイコロを振って6が出たら救われるというシチュエーションで、6が出たら、皆で「ワーッ」と大喜びする。別にサイコロを振った人に責任があるわけではないですよね。でも、その人が振ってその目を出したということが、その場にいる人にとっては意味がある。
これは心理学で言うと、コントロール感があるということです。サイコロを振っている人があたかも、その場をコントロールできるかのような気持ちになれるわけです。ただサイコロを振るだけなら、機械にやらせてもよいと思いますが、なぜ私たちはサイコロを振るのか。その運、不運みたいなところが興味深い。
サイコロというアイテムを使用するからこそ得られる体験だと。
今の世の中、コロナになったり、災害が起こったり、戦争が起きたり、いろいろな予測できない要因で想定外のことが起きる時に、私たちはどのようにしたらいいのか。そういう状況へのシミュレーションの機会もボードゲームは提供してくれているのではないかと、最近、よく考えます。
不確実性が高い世の中で生きていくために、ゲームには示唆や価値があると私も思っていたので、今の話にはすごく共感できます。
僕は大学に入った瞬間、「もう勉強しない」と宣言したのですが(笑)、実際にはゲームをつくっていく中ですごくいろいろなことを学びました。
いろいろなことを調べなければいけないし、チームで作業しなければいけないから、そこでコミュニケーションをとらなければいけない。それをやったことがその後の人生にすごく役立ったなと感じています。
ゲームをつくるというのは、1つのルールをつくる、1つの世界をつくるみたいなことだと思うのです。最近、子どもたちに接する時には、なるべく自分で考えて自分でルールをつくって、自分で遊びの場をつくろうと促しています。この木の棒と板で遊びをつくってみようと言って一緒にやってみると、その体験が、「自分でどうにかする」ことにつながるのではないか。
僕は、ゲームを「つくること」自体に価値があるのではないかと思っています。
ボードゲームカフェとは
ボードゲームカフェというのはいつごろからあったのですか。
恐らく日本で広めたのはJERRY JELLY CAFEさんだと思います。2011年に渋谷に1号店をオープンしたのですが、開店当初はコワーキングスペースとしてオープンし、空き時間にボードゲームで遊べるような形態だったようです。そのうちだんだんボードゲームの需要が増えていき、フランチャイズ展開などを通じて店舗数を増やしています。
東京にボードゲームカフェは何店ぐらいあるのでしょうか。
大体100店舗くらいですね。2016年頃から増え始めたようです。
客層は大きく分けて2つで、グループでいらっしゃる方と、相席希望で1名様や2名様でいらっしゃる方達です。グループでのご利用は会社帰りか学校帰りの方がほとんどです。多くの場合、ジュースやお菓子を食べながら、皆でワイワイ楽しみながらやっている。私もおしゃべりをしながら短時間で気軽に楽しめるようなものを紹介することが多いですね。
学校の放課後の部室みたいですね。
はい。少人数でご来店される相席希望のお客様同士をマッチングすることも多いのですが、お互いの好きそうなゲームを見極めて紹介したり、テーブル全体が盛り上がるようにルールの説明を楽しい雰囲気で行うように心がけています。
今はやはりコロナでお客さまが7割ぐらい減っていて、少人数の相席希望のお客様が多いです。帰りがけに同じ職場の人を誘いづらいのでしょうね。ボードゲームが好きでたまらないお客様が集まっています。
そういう人は家でやるビデオゲームとは違って、ボードゲームのようなものでないとだめだということなんですかね?
うちのお客さまは「ポケモン」が大好きな人が非常に多いです(笑)。「店長ごめん、ポケモンで忙しいのでしばらく行けない」と言われたこともありますので、どっちも好きなのではないでしょうか。僕にまで「ポケモン」を勧めてくるので困っています(笑)。
当店でボードゲームで遊んだ思い出がすごく楽しくてリピーターになる方も多いです。常連様同士で待ち合わせをしたり、私に連絡先を渡して、「相席希望の人が来たら連絡して。すぐ行くから」というお客様もいます。
大人のサロンみたいな雰囲気ですね。そうなると、マナーがいい人に来てもらいたいですね。
田町は土地柄がよくて、マナーの良いお客様に恵まれています。
杉浦先生のゼミでは、終わった後、自発的にボードゲームをやるような場というのもあるのですか。
最近はちょっとできていませんが、5、6年ぐらい前だとサブゼミと称して、空き教室を予約して、私の研究室からいろいろ見繕って持っていったゲームをやって、それをレポートするようなことはよくやっていました。
ゼミでもやりますね。例えば、「もっとホイップを!」というケーキを切り分けるゲームは非常に盛り上がるのですが、個々の利得と公平性の話もあわせてします。新ゼミ員を募集する際のオープンゼミでもボードゲームに参加してもらってゼミの雰囲気を体験してもらっています。
多様なボードゲーム
子ども向けのゲームに「ねことねずみの大レース(Viva Topo!)」というゲームがありますが、これは大人がやっても得るところが多いです。
サイコロの目によってネズミ4匹になるべく大きいチーズを取らせるように各ネズミを操るのですが、ネコに捕まらないよう、どのネズミを進めて、どのネズミをあきらめるかを判断しなくてはなりません。そういうことは私たちの人生でもありますし、資源、時間や機会は有限で、選択の失敗から学べることがこのゲームにはあるのです。
ゲームの進め方やルールから学ぶことが多そうですね。
今は「インカの黄金」で知られる「ダイヤモンド」という地底探検をモチーフにしたゲームでは、財宝をいかに多く得るかを競います。地底の奥に進めば進むほど分け前を多く得られるのですが、その分、今まで得た財宝を没収されるリスクも高くなる。
「進むか戻るか」という、ただそれだけの意思決定ゲームですが、他の人がどう判断するかという予測や実際にどう決定したかにも影響を受けるのですね。単純なゲームですが、卒論の題材にしたり、応用バージョンを自作して研究に使った学生もいました。
あとはドイツのごみ分別のゲームもよくやります。ドイツは交通安全とか環境とか健康とか、いろいろなことをゲームにしています。
ドイツは本当に多様なゲームがありますよね。日本では、アカデミックな内容のゲームはヒットしにくいようです。
私は去年の9月まで塾派遣留学で1年弱、ドイツに行っていたんです。ちょうどロックダウン中に生活することになり、スーパーやドラッグストアなど生活必需品を売っている店だけが開いているのですが、ドラッグストアにもボードゲームを売っているんですよ。
必需品扱いなんですね。
そのように、日常生活の中に普通にボードゲームが浸透している。カフェやレストランでカードゲームをやっている人たちが普通にいたりします。だから、あえてゲームカフェをつくらなくてもよいのかもしれませんね。
もともとヨーロッパはそういう文化があるみたいですからね。
バックギャモンという双六みたいなゲームがありますが、あれを路上で、コーヒーを飲みながらやっているのを見たことがあります。
昔の日本で、路上で将棋をやっているような感じですね。
ボードゲームのブーム
小学館の「小学8年生」という、小学生全学年を対象にした雑誌でボードゲームの取材を受けたことがあります。今、そういう雑誌の付録にカードゲームが付いていたりするんですね。
ここ数年、メディア露出は格段に増えていますね。
ファッション系の雑誌におしゃれなものとして出たりもします。テレビでも取り上げられていますね。
テレビは番組制作の予算が削減されているため、安価で盛り上がるボードゲームは使いやすいそうです。提供側も宣伝やボードゲームの普及につながるため協力的です。
メビウスさんの「ワードバスケット」というゲームは、嵐がテレビで紹介したら、たちまち大ヒットになりましたね。
あとは「チャオチャオ」というゲーム。当店でもすぐに売り切れました。その後メルカリで2倍の価格にまで高騰していましたね。
テレビで取り上げられたら知ることができますが、普段はあまり接する場所がないですよね。最近は家電量販店などでも売られるようになりましたが。
箱だけ見ても、どれを買っていいか迷いますよね。ボードゲームをやり始めた頃、皆で温泉旅行に行くので何かゲームを買おうと思ったのですが、種類が多すぎて何を買えばいいのかわからなかったです。店の人に教えてもらって、先ほど話が出た「インカの黄金」を買ったら大盛り上がりでした。
だから店員に聞くのが早いですね。専門店の店員でしたら間違いなくわかるので。
「すごろくや」というボードゲーム専門店がありますが、店長の丸田さんは元々デジタルゲームのクリエーターで「MOTHER2 ギーグの逆襲」などにかかわっていた方です。ボードゲームのやり方について、初心者向けの簡単なゲームこそ動画でわかりやすく説明することが大事という話をされていたのが非常に印象的でした。
田町のパイナップルゲームズという店もいいですよ。店長が自称、日本で1番説明が上手だそうです(笑)。
ボードゲームをつくるとは?
島田さんはどのようなものをつくっていきたいと思っていますか。
僕はその人の個性や、何かクリエイティブな面が出るようなゲームが好きなんですよ。
「ディクシット」という絵が描かれたカードを見て、思いついたタイトルを付けるゲームがあります。例えば「悲しい涙」というタイトルを付けたとします。そのタイトルから、他のプレイヤーたちは手持ちのカードから、もっとも関係していると思うカード1枚を選んで出し、語り部がそれをシャッフルして並べます。
語り部以外のプレイヤーは「語り部の選んだカード」と思ったカードに投票するんですが、表現を試し合うようなところがすごく面白い。
手掛けられているのもそのようなゲームですか?
はい。仲間とつくった「じゃれ本」というゲームがあります。小学校の時などにやったリレー小説をベースにした遊びです。
まず、4人1組ぐらいでチームになり、最初の人が、例えば「充電できるタコ」みたいな不思議なタイトルを付けて小説の書き出しを書いて隣りの人に渡す。そして、前の人が書いた文を見ながら次の人が書く。でも、その次の人には最初の人が書いた部分が見えないよう、ページをめくってから渡すんです。
1つ前の人の内容だけ見て、こういうストーリーかなと想像して書くのです。上手くつなげていってもいいし、無理やりな展開にしてもよい。
伝言ゲームのようなものですね。
そうそう。共通するタイトルだけは認識できる。2回りくらいしてストーリーができた後に読み返すと、大体面白いです。これをやると、すごく楽しんでくれるし、徐々にニヤニヤしてくるんですよ。こういう自然と盛り上がってくるものがすごく好きです。ボードゲームカフェでも遊びやすいと思います。
僕もボードゲームをつくるのですが、岡本吉起さんという、「モンスターストライク」や「ストリートファイター」をつくった方のヒット作の4条件がとても参考になります。まず、「聞いて面白い」。プレゼンを聞いて面白いとか、噂を聞いて面白いとかです。2つ目が「見て面白い」。ビジュアルですよね。そして「実際やって面白い」。最後に「繰り返し遊んでも面白い」。
「じゃれ本」はその4つの条件が全部揃っていると思いました。この4つの条件は意外と守られていないゲームが多い印象があります。国産ゲームはアマチュアが個人でつくることが多いせいか、こういったノウハウが浸透していないのが現状だと考えています。
島田さんに以前紹介していただいた「アスタリスク(現MARIMBA)」というゲーム。すごくいいゲームなのですが、量産できないと伺って残念です。
これはプロトタイプで終わっているんです。木でできた6面体のキューブと升みたいなものをボードにはめていくようなモノです。
これは何がしたかったかというと、ボードゲームをつくること自体を遊びにできないかと考えたのですね。このオブジェクトの中でどんなルールがつくれそうか、話しながらつくってしまう。ですから決まったルールはなくて、「その場でルールをつくる」というルールがあるような感じです。
すごくいいゲームですよね。キューブとかボードが木製で、それ自体持っているだけでもうれしい。
楽しそうですね。今、それは買えるのですか。
1個、5万円くらいします(笑)。昔、アートの展示会に出す1点物を木工屋さんにつくってもらったのですごく高かったのです。これを流通させるために結構調べたのですが、今のところ難しく、プロトタイプで終わっているんです。ただ、概念的には面白いので、何か次のステップはないかと思っています。
対面でプレイすることの意味
お店をやっていると、相席ですごく紳士的な人がたまにいらっしゃいます。ゲームの説明が上手く、清潔で、しかも初心者の方にも配慮ができ、言葉遣いも丁寧。そういった人たちがボードゲームをやっていると、また遊びたくなるんです。
でも、たまにその逆のプレイヤーも残念ながらいます。負け出すと舌打ちし始めたり、悪態をついてブスッとしたり、敗色濃厚になるといきなりゲームをやめてしまう人……。
ボードゲームを元々やっているプレイヤーでマナーの悪い方は意外と少ないです。ビデオゲームやオンラインゲームからボードゲームに参入したプレイヤーでたまにそういった方がいらっしゃるように感じます。
オンラインのデジタルゲームだとリセットが簡単にできてしまうところを、リアルな世界に持ち込んでしまうということでしょうか。
服装などもオンラインだと相手にわからないじゃないですか。過去に、にんにくラーメンを食べた帰りに来られて、お帰りいただいたこともあります(笑)。
それはまさにリアルな感じですね(笑)。
公共の場でのコミュニケーションをどう気持ちよくつくれるかということですよね。
これは訓練だと思います。小さい子供の中には、負けると悔しくて癇癪を起す子がいるじゃないですか。
逆に負ける経験がリアルなゲームでできるのはとても大事なことです。ゲームに限らず、外遊びもそうですが、その中でどうやって上手く人とやりとりしていくか。
ルールやマナーが学べるというところですよね。
コロナになって授業や会議がオンラインになりましたが、例えばビデオ会議だと、見ているのは切り取られたある場面や音声でしかない。つまり、私たちはそれ以外の情報をあまり感じ取ることなく、その目的のみに集中することができる。
これはいい面でもありますが、リアルに対面している時というのは、服装とか表情、舌打ちとか、本来の目的以外のこともいろいろと情報として感じ取っているわけですよね。
対面でボードゲームをする時は、ルールに則ってやりとりする以上の何かを、私たちは意識しないところで感じ取っているはずです。リレーで小説を書いていくゲームも、その人がどんな表情でそれを手渡したのか。自分が書いている時に、横で他の人は何をやっているのか。そういった情報も常に入ってくる。これはすごく大事なことだなと。
それはデジタルだとなかなか感じづらい部分ですね。ゲームをしながらちょっと違うことを言ったり、何かブラフをかけることもあるし。
「今、カードを渡す時にちょっとにやけたでしょう」とか、「これ、絶対変なカードでしょ」とか、そういう心理的な駆け引きが面白かったりしますからね。
そういうことも含めての遊びですものね。交渉・対話のあるゲームは、対面しているとさらに面白さが増しますよね。
「カタン」のオンライン版とかも、ほとんど競技ゲームみたいで、交渉もシステム的になってしまっているところがありますね。
すごく衝撃を受けたゲームがありました。ルールに仕掛けがあって、勝ったと思っていたら、実は負けたことになってしまったりする。また会話は禁止なのでルールをすり合わせることもできない。こんな遊び方があるのかと。
自分にとって当たり前だと思っていたことが、実は違っていたというのは、異文化への遭遇のようなことですよね。
僕はゲームをつくる仕事をしてきてよかったなとすごく思っています。今、仕事はワークショップデザインがメインですが、そこではやはりゲームをつくる中で、ルールをつくり、感情の起伏をつくっていくような経験がすごく役立っている。
好きなゲームを楽しむ。そしてそのゲームがどうやってできているのかを知って、自分でつくってみることは人生を豊かにする1つの方法かもしれないと思っています。
(2022年3月14日、三田キャンパスにて収録)
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。