登場者プロフィール
織茂 明彦(おりも あきひこ)
その他 : 横須賀建物株式会社(サウナトーホー)代表取締役その他 : 公益社団法人日本サウナ・スパ協会副会長経済学部 卒業1976年慶應義塾大学経済学部卒業。卒業後、横須賀建物に入社し、サウナトーホーを開店。横須賀三田会副会長。
織茂 明彦(おりも あきひこ)
その他 : 横須賀建物株式会社(サウナトーホー)代表取締役その他 : 公益社団法人日本サウナ・スパ協会副会長経済学部 卒業1976年慶應義塾大学経済学部卒業。卒業後、横須賀建物に入社し、サウナトーホーを開店。横須賀三田会副会長。
原山 壮太(はらやま そうた)
その他 : 株式会社電通第15ビジネス・プロデュース局部長その他 : 一般社団法人日本サウナ総研研究員法学部 卒業1991年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。「プロサウナー」を自称し、サウナの普及に努めている。
原山 壮太(はらやま そうた)
その他 : 株式会社電通第15ビジネス・プロデュース局部長その他 : 一般社団法人日本サウナ総研研究員法学部 卒業1991年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。「プロサウナー」を自称し、サウナの普及に努めている。
大泉 寛太郎(おおいずみ かんたろう)
その他 : ミズジャパン株式会社代表取締役その他 : 株式会社大泉工場代表取締役社長経済学部 卒業2004年慶應義塾大学経済学部卒業。2016年ミズジャパンを設立。テントサウナの販売、サウナ文化の普及に努めている。
大泉 寛太郎(おおいずみ かんたろう)
その他 : ミズジャパン株式会社代表取締役その他 : 株式会社大泉工場代表取締役社長経済学部 卒業2004年慶應義塾大学経済学部卒業。2016年ミズジャパンを設立。テントサウナの販売、サウナ文化の普及に努めている。
2018/08/31
「サウナに行こう」
私は運悪く、オイルショック後、非常に景気の悪い時期に卒業し、就職先がなくて父親の会社に入りました。それで「ちょうどサウナを開店するから、おまえ、店長をやれ」と言われて(笑)。サウナが何だか分からないままに始めたんです。
そうだったんですね。
あの頃のサウナというのは100度ぐらいの電気サウナで、拷問みたいなやつ(笑)。マッサージのためと、お金持ちが飲みに行く前に寄る場所だったのです。
それが、そのうちに泊まる場所となり、そして現在、低温でロウリュ(熱したサウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させること)を楽しむようになってきました。今は若いファンが喜んでくださっている。まさかこんなふうになるとは思わなかったので感動しています。
私の父は大のサウナ好きで、しょっちゅうサウナに行っていました。父から「遊びに行くぞ」と言うのは、「一緒にサウナに行こう」みたいな話で(笑)。最初は「熱い部屋に入るのはいやだな」と思っていましたが、連れられて行くうちにだんだんサウナが好きになっていったんです。
会社に入ってからは、サウナは疲れた体を癒やす避難場所として活用させていただいていました。少し余裕が出てからは、全国、さらに世界中のサウナに興味をもって足を運び、その魅力に憑りつかれました。
自分を助けてもらったサウナに恩返しをしたい、サウナの普及に少しでもお手伝いがしたいとの思いから、『Saunner』(2014年)というムックを出版しました。またサウナについていろいろな研究を進めたいと思い、日本サウナ総研というものを設立して活動しています。
私がサウナに出会ったのは、社会人1年目です。ある日上司に連れて行かれて、初めはものすごくつらかったのですが、サウナに入った後、水風呂に入り、そのあとちょっと休んでいるときに体中が解放されるような快感に出会ってしまった。「これはなんて気持ちいいんだ」と、それ以来、週に1回はサウナに行く生活がスタートしました。
その後、旧友と10年ぶりぐらいに会って飲んでいたら、「実はサウナが好きなんだよね」と言う。当時、同世代にサウナが好きな人間がいなかったので、すっかり意気投合して。
同志を得たわけですね。
彼と「いつかは自分たちの好きなサウナ屋さんをやりたいね」と話していたのですが、やはり本場のフィンランドを知らなければと、フィンランド大使館に行きました。
すると、大使館の方に「フィンランドのサウナをやりたいなら本場に行かなければ駄目だよ」と言われました。そこで仲間3人でフィンランドに飛び、日本のサウナとフィンランドのサウナの違いを肌で感じて「ミズジャパン」という会社を作り、フィンランドのサウナを普及させる事業をしています。
「ととのった」状態とは
はっきり言って、バブルの時のサウナは酔っぱらいの仮眠宿所で、それが収入の8割ぐらいを占めていました。まだ携帯電話がなかったので、昼間は、個人の不動産業者さんが事務所代わりに使っていて、情報交換の電話がかかってくるんですよ。もう店中の電話が皆、不動産屋さんが受けている状態でした。
すごいですね。
それがバブルがはじけてだんだん駄目になっていった。でも、そのうちにロウリュを中心とするフィンランド風のサウナが流行りだし、サウナにプラスのイメージを持ってくれる若い人たちが出てきました。
そして、日本サウナ・スパ協会が大口スポンサーとなって、原山さんたちが出した『Saunner』というムックでイメージが一気によくなったんです。
それまでサウナって、満員電車で蒸し暑いと「サウナ状態だ」と言ったり、「サウナで倒れた」ということが枕詞のようになって危険なものだと思われたり、ネガティブなイメージがすごくあった。こんな素晴らしいものがなぜネガティブに扱われているのか。そのイメージを変えたい、というのが『Saunner』のコンセプトでした。「スカッと爽やかに、気持ちよく」という本来のサウナの姿をきちんと謳うべきではないかと。
おっしゃるとおり、昔はサウナが趣味だと言えるような雰囲気があまりなかったですよね。
ないですね。
それが、大泉さんのように、「自分の趣味はサウナ」と言える若い方がだいぶ増えてきた。そのきっかけにはなれたのかなとは思っています。
また、この本の少し後に、漫画家のタナカカツキさんが出した『サ道』という漫画が大きかった。サウナ道を略して『サ道』で、サウナの魅力を独特なトーンで伝えている。例えば、「サウナってなんて気持ちいいんだ」ということを「ととのった」という言葉で表現されている。この漫画がだいぶ多くの方に読まれて。
あれは大きかったですね。要するに、熱い状態から冷たい水に飛び込んだときに精神的に解放される状態のことを、「ととのった」と言われた。これ、かなり当たっているんですよね。
うん、うん。そうですね。
サウナ初心者のタナカカツキさんが、どうして自分はサウナが大好きになったかを漫画で延々と描いているんです。初めは入るのが怖いとか、変なおっちゃんがいる、とかから始まるんだけど(笑)。
「ロウリュ」を浴びる
フィンランドでは、普通の家の中でもサウナ室があって、外気浴ができるエリアがあり、外の空気を浴びている。タナカカツキさん風に言うと、そうやって「ととのえている」んです。その空間がすごく重要なんです。
フィンランド大使館の方々は「サウナというのはコミュニケーションをするための神聖な空間なんだ」とおっしゃっていました。そこが日本との大きな違いだと。昔はサウナで出産することもあったと聞いています。
私は日本のサウナはきれいだと思いますが、漠とした印象として、やはり汗臭いとか、おじさんの楽しむ場所だったと思われていますね。
そうです。「快汗」という表現は「心地よい」という意味では正しいと思うのですが、実際には、汗をかいている瞬間はそんなに気持ちいいものではないわけです。
そこから水へ飛び込んだり、外気に触れたりして、「ととのった」状態が気持ちいいということです。昔は、水に入った瞬間の刺激が楽しいとかは言われましたけど、精神的な気持ちよさみたいなものは、あまり言われていなかったんですね。
そうだと思います。
フィンランドのサウナですと、ロウリュといって、水をかけて蒸気を浴びるのが一般的な入り方です。そして、向こうのサウナというのは大体50度から70度ぐらいで、日本のサウナよりもマイルドな設定になっています。
ロウリュをすることによって体感温度を一気に上げるというのが向こうのサウナの入り方なんです。ロウリュというのはフィンランド語で蒸気のことを言うんです。
日本で「いいお湯だったな」みたいなことを「いいロウリュだったね」と言う感覚ですかね。
うちのロウリュは20分おきに、自動で水をかけています。
トーホーさんのサウナのことを、僕らは勝手にオートロウリュと呼んでいます(笑)。
ロウリュのイメージとしては、目に見えない蒸しタオルが体中にワッってかかる感じ。熱いサウナの中にいるのですけど、なおかつもう1回、目に見えない熱がボーンとくる。それで、あおぐと、バサッ、バサッと熱風がくる。
サウナって我慢するものではないのです。そこがまず違う。
若い人は我慢するの、好きじゃないですから(笑)。
先ほど織茂さんがおっしゃったように、汗を流すことがサウナの目的ではないと僕は思っているんです。体を温めることがサウナの目的で、その温めた体を冷やすのが水風呂です。そしてサウナと水風呂の後にゆったりと外気浴で外の空気や風に当たり、自分を通常の状態に戻す。
この3つのセットをサウナ浴と呼んでいるのですが、それがあって初めて、きっとサウナの楽しみ方が分かるのではないか。
テントサウナの楽しみ方
逗子海水浴場にテントサウナを建てたときには、海へ飛び込んで体を冷やそうと思っていたのだけど、やってみたら海が要らないのです。テントサウナで目一杯汗をかいて表に出ると、灼熱の逗子海岸が高原に変わってしまうんですよ。それくらい砂の上の風が心地よい。
今、「ミズジャパン」の活動としては、キャンプイベントでテントサウナを設置して楽しんでもらうといったことがメインなんです。また、キャンプ場を運営されている方に、「導入してみたらいかがですか」という話をしています。
一番小さいもので何人用ぐらいなんですか?
4人用ですね。今持っているもので一番大きいのは20人ぐらいが同時に入れるようなものです。
20人というとストーブも大きいので、日本だとそう簡単に保管ができないでしょう。
そうですね。すごく大変なのですけど。
最近ですと、サウナトースターといって、車で牽引できるサウナがありますね。キャンピングカーみたいな。
テントサウナというのはもともとは軍事用として使われていたようです。フィンランドの方に「テントサウナをやっている」と話すと、「ああ、軍のやつね」みたいなリアクションがあります。
フィンランドでは、一家に一部屋サウナ室があるのです。それで「サウナがないところに行ったらどうしよう」ということで開発されたのがテントサウナです。だから、フィンランド人は普通の人はテントサウナには入らないのですよ。
そうなんですか。
どこの家にもサウナがあるし、彼らは週末や長期の休みのときはサマーコテージに泊まりに行きますが、そこにももちろんあるので。
だからわざわざテントサウナを作ることはほとんどしないようです。ただ、日本ではそうもいかないので、逗子海岸でも、雪山でも、そういったところでサウナをやるには、やはりテントサウナが、すごく便利な道具だなと思っています。
東日本大震災の際に、サウナ・スパ協会の復興支援活動で宮城県女川にテントサウナを設営しました。これは結構大変でしたが、好評でしたね。震災当時、とても寒かったこともあり、大変喜んでいただきました。
被災地なのでもう難しいことを言っていられない。裏に川があるから、テントサウナで温まっていただき、汗だけ拭けば、最低限、満足してくださるのではないかと思いまして。
日本サウナ・スパ協会は社会貢献に積極的に取り組まれていますね。被災地はまず、お風呂に困るんです。お風呂は大量の水を用意するのが大変なので、サウナだったら簡易に置けるということですね。
そうですね。だけどそれにしても面倒臭いんですが、現地の方がとても一生懸命協力してくれました。避難所にいたおじいちゃんが、1人でサウナ番をしてくれて、朝から廃材を拾ってきて、何時間もかけて温めてくれました。そして、浴槽がなければ満足してくれないと思っていた漁村の皆さんが、サウナ室をものすごく喜んでくれたんです。
「サウナ好き」なDNA
サウナって意外と微妙でして、昔風で言うと、サウナ室の周りが木かタイルかで全然肌に対する「味」が違うんですよ。要するに同じストーブでも反射熱が出てしまいます。ロウリュでも、どんな蒸気が出るのかはやはり石によります。
大泉 ストーブも電気式のものと薪式のもので結構違いがありますね。フィンランドの家庭も、どちらかというと、今は電気のほうが多くはなっている。
薪は大変でしょう。温まるまでに時間がかかるんですよ。うちの店は当然ガスです。テントサウナなどでやるときにガスだと意外と簡単にいけるのですが、薪は何時間仕事です。
先ほど、軍のお話がありましたけれど、疲れているときや、つらいときにサウナがあると、やはり人を救うのだと思うんですよ。
「サウナ」というのはフィンランド語で、日本語だと蒸気浴とか熱気浴とか言ったりしますが、私は日本人のDNAの中には、「サウナ好き」というDNAが確実に組み込まれていると思うんです。
そもそも江戸時代になるまでの銭湯というのは蒸気に身を任す施設だったのですね。今の湯船につかる風呂の習慣というのは、江戸時代になってだんだん変わっていったものです。だからもともと、日本人は蒸気浴が好きだったのではないか。
好きというか、その発想しかなかった。
そうです。もちろん温泉もありましたけれど、日々の生活に直結している入浴方法は、僕は蒸気浴だったのではないかと思っています。蒸気というのは、お湯を大量に沸かすよりは簡便ですから。
頼朝のお父さんの義朝も、美濃辺りの蒸気浴のお風呂で、刀を置いて中に入ったときに殺されてしまったんですよね。
サウナというのはフィンランド由来ですが、汗蒸幕(ハンジュンマク)は韓国の蒸気浴ですし、ロシアではバーニャと言います。蒸気の中に身を置くというのは、世界中にいろいろな方法があります。
そうですね。温泉以外で温めたお湯に入る文化は、外国ではあまり聞きません。やはりコストと手数の問題でしょうね。
スモークサウナ
暑い国でサウナに入るというのは結構珍しいでしょうね。日本でも沖縄よりも北海道のほうがサウナは盛んでしょう。
確かにそうなんですが、日本のサウナの売り上げは、もちろん、12月から3月が一番上がるのですが、7、8月も悪くないんですよ。
へえ、そうなんですか。
水風呂に入りに行くんですかね。
結局、だらけてかったるくなっている体に刺激がほしいのではないですか。日本の夏というのがまた、特別不愉快ということなのかもしれませんけどね。
大泉さんはフィンランドにはいつごろの季節に行かれるのですか。
だいたい夏場なんですよね。
やはり一番いいときですよね。
そうですね。本当は冬に行きたいのですけれど。スモークサウナというものもありますね。煙を焚いて、それを1回全部出して入るサウナです。僕は体験したことがないのですが、そういうところはすごく厳かな雰囲気が演出されている。
原山さんは、長野の小海町のフィンランドヴィレッジには行っているのですか。
もちろん行っていますよ。あそこはフィンランドの商工会議所が持っていたんですよね。
名古屋の米田行孝さんという、サウナ・スパ協会の専務理事がそこを丸々買い取って、今はサウナーの天国みたいな状態にしています(笑)。それこそいまスモークサウナをやっているそうですね。
小海のはピットサウナといって、土を掘って作ったサウナなんです。日本でスモークサウナというものはないと思います。
普通ヒーターがあって、煙突で煙を出すけれど、スモークサウナというのは、そうではなくて家の中で焚き火をするみたいに小屋全体を温めるんですね。そのとき人間が入ると危ないので、小屋が温まった後に入る。だから、壁とか周りは煤だらけの状態です。本当に原始的なサウナですね。体も真っ黒になったりします。
私はサウナって進化すればするほど退化していて、昔のサウナほど真のサウナで素晴らしいものだという感じがするんです。つまり、スモークサウナがまずあったのだけど、危険だったり、簡便でなかったりするので、電気になり、煙突が付いたりしてどんどん進化していったわけですが、僕は昔のものであればあるほど気持ちいいと思うんですね。
水風呂の最適温度は?
この前、中山眞喜男先生に直接インタビューさせていただいて聞いたのですが、水風呂が17度ぐらいというのはスパ協会さんが決められたことらしいのですね。
そうそう。だけど、最近は皆さんがもっと下げろと言う(笑)。
基本的に、フィンランドには水風呂ってあまりないですよね。外に出れば寒いですから。ロシアもそうです。だから、水風呂の文化というのは日本独特の文化です。わざわざチラー(冷却水循環装置)を入れて水を冷やすのも日本独特だと思います。
最近は水風呂の温度を下げろ、下げろなんですよ。タナカカツキさんなどは15度以下とかね。
下げたほうが刺激があると言う人たちもいるんです。
だから、うちは2つあるんです。普通の温度のものとマニアック用の、もうとんでもないやつと(笑)。
シングル(一桁の温度の水風呂)はね、あれは機械が簡単に壊れます。今まで17、8度だった冷水を14度にしたら半年で壊れて、結構いい金額を取られました(笑)。
そうなんですか。
水を冷やすこと自体がかなり無理なシステムだそうです。大体20度あればいいというのがもともとのイメージでしたから。
最適な温度というのはサウナ室とのバランスだと思います。つまり、どれだけ体が温められるかというサウナ室と、その温めた体をどれだけ冷やせるかという水風呂のバランスの問題ですよね。
本当に一つとして同じサウナってないのです。各施設のサウナ室は全部違いますし、座る位置でも感じ方が変わります。込んでいるか空いているかでも違うし、それこそ夏、冬でも違う。そのいろいろな変数の中で自分が一番楽しめるサウナの楽しみ方を見つけて入るのが楽しい。
その通りですね。
「サウナー」と僕が名付けたのには理由があって、サーフィンする人をサーファーと言いますね。サーファーが波に乗るとき、1つとして同じ波はない。サウナに入るのはそれと同じだと思っているんです。
サーファーは波に乗る前にパドリングをする。それがサウナ室で、水風呂に入って初めて波に乗ってテイクオフする(笑)。つまり、サウナと水風呂はセットだと思っています。
やはり楽しみ方だと思うんですよ。冬に北富良野の山の上へ行って、サウナ室でカンカンに熱くなってから、みんなで新雪に飛び込んでギャーッと叫んだのは、メチャクチャ面白かったですね(笑)。
イベントですよね。一つの楽しみ方ですから。
結局、どう面白がるか、楽しむかです。
「昭和ストロング」への郷愁
バブル前の日本のサウナは「何度まで温められるか」しか考えていなかったのです。店同士の我慢大会です。「うちの店、120度まで上げられるぞ」みたいな(笑)。
お客は、「お、すげえなあ、この店120度かよ」と。
サウナーの間ではそういうのを「昭和ストロング」と言っているんですよ(笑)。
本当にそうだったんです。皆一生懸命温度を上げていましたよ。今は100度なんていうところはないでしょう。鼻が痛いですよ(笑)。
でも、あれが好きな方もいるんですよねえ。
ええ、「懐かしいなあ」とか言う人たちがいます。
そういう方は、そういったサウナを見つける全国の旅をされているんですよ。
でもね、あるんですよ、まだ。
そう。探すとあるんです。
最近の主流は中温中湿だと思うのでたぶん80度から85度。
「70度でいいよ」って識者は言うのですが、70度だとお客に「ちょっと……」と言われてしまう。私のところも80度ぐらいですね。
大泉さんがおっしゃったようにフィンランドのサウナは50度から70度ぐらいということですが、スカイスパなんかは低いですよね。
いわゆる基本に忠実というか、フィンランドサウナに近づけるセッティングをしています。
都内の方でも、スカイスパだけは「わざわざ横浜まで行きたい」という方がいます。まずサウナ室にテレビがない。貴重なお店ですよね。
そこも大きな違いの一つかもしれないですね。
識者は「温泉地のいいお風呂にテレビがありますか?」みたいなことを言います。確かにそうだと思うけど、私にはテレビを付けない勇気はない(笑)。
サウナ室でテレビを見るというのは、フィンランドの方がびっくりするみたいです。でも僕は、そういう日本らしいサウナスタイルというのを突き詰めるのも面白いと思うんです。
中温だと時間的に長く入れるからテレビが見られます。もちろん昭和の時代からテレビはありましたが、あの時代は相撲とか、プロレスとか、3分とか5分でケリがつくものがよかった(笑)。野球は意外と駄目なんですよ。1人のバッターも終わらなかったりするので。
プロレスって、どこを切っても面白いから評判がよかったです。
サウナは心の鎧を溶かす
今、企業にも「サウナ部」というのがあったりするんですね。
自発的にいろいろなところから出てきたいみたいですね。
初対面で話をすると、「僕もサウナーなんですよ」と言う方が結構いらっしゃいます。
そういった若いお客様は基本的に「いいお客さま」なんですよ。お金を使うという意味ではなく、マナーがよく、入り方もよく分かっている。自分の汗を撒き散らさないし、他の人もちょっと真似したくなるような入り方をしてくださる。
昔、よく会社帰りに一杯飲んで、「じゃあ、サウナでも行くか」みたいな流れがあったと聞いています。要するに上司が部下をサウナに誘う。
うん、もちろんね。
サウナって基本的に素っ裸で入るじゃないですか。サウナは心の鎧を溶かすものだと言われるのですが、裸になるとやはり距離感が縮まるということはありますよね。
フィンランドはサウナを外交に使っていたりするんです。要人を招き入れて、公邸や大使館などでサウナに一緒に入る。そういう本来の使い方にたぶん、今の若い人たちが気付いたのだと思います。
コミュニケーションの場ですね。
ええ。サウナ部では部長も平社員も裸でしょう。全く同じ目線で語り合える場として有効なのではないですか。A社さんのサウナ部がB社さんのサウナ部と一緒にサウナに入って交流を求めたり。
それ、いいですね。
そういう楽しみ方をする若い方が最近増えている、とは言えると思います。
サウナ室の中だから、居酒屋に比べれば、そんなにたくさんしゃべるわけでもない。だから気楽な面もあるのかもしれないですね。
逆に、湯船の中では絶対しゃべらないですよね。サウナ室だから一言二言、会話ができる。そこはサウナのほうが優れている。
そうですね。フィンランドでも皆そこでおしゃべりしている感じですね。そして、出た後の外気浴。外に出たところで休めるスペースが絶対あって、皆そこで結構話をしている。
それがすごくいい雰囲気なんですよ。試合の後のロッカールームみたいな感じで、ウォッカを飲んだり、チェスをやったりして。
サウナは危険か?
意外とサウナ室で倒れてしまう人はいないんです。問題は出てからです。それよりもずっと危ないのは浴槽のほうです。
そう、浴槽のほうがよほど危ない。サウナで事故が起こるときだけ取り上げられるけど、浴槽のほうが何百倍と事故が起こっています。
温泉なんかどれだけ事故が起きているか分からないですよ。
西城秀樹さんが十何年前にサウナで倒れたことが、今でも取り上げられる。レアケースなのに、何か危険だという雰囲気を植え付けているんですよね、誰かが(笑)。
やはりサウナは悪いものだというイメージがあるんでしょうね。
でも、今の若い人たちはサウナ室の中で無理していないじゃないですか。昔のおじさんたちみたいに汗撒き散らすこともなく。
そうですね。
水に飛び込むおじさんたちは、「すげえだろう」という顔をしながら飛び込んでいますけどね(笑)。
でも、若い人たちからすると、60、70のおじいさんと閉鎖的な空間で一緒になることって非日常だと思うんですよ。僕はそれもいい経験なのではないかと思う。全然知らない人と世代を超えて話をすることも当然あるわけですから。サウナ室で一言、「よく汗出ていますね、今日は」とか。
アメリカのLAのコリアタウンにある韓国風サウナに1人で行ったんですが、国籍とか全く関係ないんですね。黒人も白人もアジア人も、タトゥーが入っている人も子供も、皆が真っ裸で同じ空間にいる。非常にピースフルな空間だと感じました。
そういった閉鎖的な空間に真っ裸でいろいろな人が集まれる。誰も武器は持っていない状況で一緒にいられるというのは、すごく素敵な空間だなと思いますね。
本当にそう思います。まさに丸腰で。
でも、だいたい映画でヤクザが殺されるシーンはサウナです(笑)。あれはよくない。
撮影に使わせてほしいと頼まれたことがありますよ(笑)。
「プロサウナー」への道
初期のサウナーの皆さんは「上等なサウナ室でなければいやだ」ということを絶対言わないのです。すごいロウリュのあるサウナだろうと、電気式だろうと、そこはそこで全部楽しめるじゃないかと。
僕ら業者は自分たちでランクを付けてしまっている。ところが、愛好家の人たちというのは、あれも楽しい、これも楽しいで、いろいろな味わい方をしてくださる。
そう思います。あとは毎日行くと、逆にその施設に体が馴染んでくるというのがあります。体が施設に合わせに行くみたいな(笑)。
面白いですね。
基本的に温泉は、ザブッと入って、「ああ、気持ちいい」と言って終わるじゃないですか。でもサウナは、それこそいろいろな入り方があって、ものすごく頭を使うんですよね。楽しみ方も自分で能動的に作れて、しかもいろいろな場所に全部違うサウナがある。日本だけじゃなくてフィンランドにもエストニアにも世界中にあるわけですよ。こんな素晴らしい宝探しのジャンルって、僕はないと思っています。
僕は「プロサウナー」を名乗っていますが、どういう意味かというと、サウナ一本で暮らしていけるようになりたいのです。つまり、サーファーの人は波乗りして生活しているじゃないですか。私もサウナに入って生活できるような人間を目指しているんです(笑)。
それはすごい。今は、サウナ好きでコンサルをやってくれている人が何人かいて、われわれには有り難いです。今まではどうしてもメーカーさん、設備屋さんの意見しか聞けなかったのが、お客さま側の意見が聞けるので。
若い方を飽きさせないように、一生懸命いろいろな形でやっていきたいですね。
先輩、サウナは飽きるものじゃないですよ。1回気付いたら死ぬまで繰り返すものですよ(笑)。
そうあってほしいです(笑)。
だから、最初にその良さに気付かせるための良質なサウナ施設が重要で、僕はトーホーさんをお勧めします。
有り難うございます(笑)。
僕はサウナ室と水風呂ときちんと休めるスペースさえしっかりしていれば、ほかのマッサージとか食事は二の次です。
後はまさにテントサウナだと思うのです。つまりアクティビティと組み合わせる。自然に溶け込むというのが、フィンランドのサウナの根底にあるわけです。これも若い方の受け入れ方は素晴らしいと思います。ただ、日本ではあまりやる場所がないんじゃないですか。
そうですね。でもこの間、青山の国連大学の中庭でやらせてもらいました。さすがにプールは用意できなかったですけれど。あとは河原とかはすごくいいですね。
楽しいですよねえ、テントサウナは。
びっくりするほど気持ちいいもんですよ。
自然の中で素っ裸になるだけで楽しいですよね(笑)。
間違いないですね。
たぶん人間の本能として、自然に近づくということだと思います。
お声掛けをいただければ僕はいつでもご一緒させていただきますので(笑)。
※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。