登場者プロフィール
ひし美 ゆり子(ひしみ ゆりこ)
女優1965年東宝入社。映画出演等を経て1967年よりTBS「ウルトラセブン」のアンヌ隊員役を演じ、人気を博す。著書に『アンヌ今昔物語: ウルトラセブンよ永遠に……』等。
ひし美 ゆり子(ひしみ ゆりこ)
女優1965年東宝入社。映画出演等を経て1967年よりTBS「ウルトラセブン」のアンヌ隊員役を演じ、人気を博す。著書に『アンヌ今昔物語: ウルトラセブンよ永遠に……』等。
碓井 広義(うすい ひろよし)
その他 : 上智大学文学部新聞学科教授法学部 卒業1978年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1981年テレビマンユニオンに参加し、実相寺昭雄監督に師事。慶應義塾大学環境情報学部助教授等を経て現職。専門はメディア文化論。
碓井 広義(うすい ひろよし)
その他 : 上智大学文学部新聞学科教授法学部 卒業1978年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1981年テレビマンユニオンに参加し、実相寺昭雄監督に師事。慶應義塾大学環境情報学部助教授等を経て現職。専門はメディア文化論。
桑畑 幸博(くわはた ゆきひろ)
慶應丸の内シティキャンパス シニアコンサルタント1985年九州大学経済学部卒業。大手ITベンダーにて企業の情報ネットワークシステムの営業やITコンサルティングに携わった後、現職。
桑畑 幸博(くわはた ゆきひろ)
慶應丸の内シティキャンパス シニアコンサルタント1985年九州大学経済学部卒業。大手ITベンダーにて企業の情報ネットワークシステムの営業やITコンサルティングに携わった後、現職。
2017/10/01
「セブン」とともに生きている
ちょうどこの10月1日が「ウルトラセブン」テレビ放映開始から50周年となります。そんな記念すべきときにアンヌ隊員を演じたひし美さんと、実相寺昭雄(じっそうじあきお)監督の愛弟子であった碓井さんにお越しいただき、お話しできるのは光栄です。まずこの50周年に対する思いをひし美さんからお伺いしたいのですが。
もうあっという間の半世紀という感じですね。ちょうど私、20歳だったから、気が付いたら古希を迎えていた。生まれてから20歳までと、20歳からの50年間が同じ長さのように感じます。大人になると早いですね(笑)。
それは同感です(笑)。碓井さんは、どのような感慨を50年に感じておられますか。
そうですね、「セブン」ファンにとってもあっという間という感じがして。半世紀前の話を懐かしむという感覚ではまったくないです。
同時に進行している感じ。
はい。セブンとともに生きているような気がします。
そうそう。何回見ても違う角度で見られる。新しい発見がいまだにあるんですよね。
僕らのようにリアルタイムで見ていた人間が今見返しても、何かしらの再発見があるし、今の若い人たちが見ても、彼らなりの発見があるわけです。そういう発見や再発見ができる特撮テレビ映画ってなかなかあるものじゃない。
そう言ってくださると有り難いですね。
このウルトラセブンという作品の骨格が、当時の空想特撮シリーズの中でも、すごくしっかりしていたんじゃないかと思うんです。だから、年月とは関係なく、時空を超えて生き続けた。
製作経費抑制のため、脚本家も若くて安く使うことができる人にお鉢が回ってきたんですって。市川森一先生だってその後大御所になりましたけど、あの頃は若かった。まだ名もない若者が多く集まって作っていたんです。
そこにエネルギーがあったんですね。今の若い人たちもそういうエネルギーを感じているから、「ハマる」ところはあるんでしょう。
そうですね。今見ても、現代とそんなに差がないじゃないですか。「あ、こんなことが今世の中で起きている」ということが、この作品の中にいっぱいありますよね。その当時は、25年後を想定していたんですが、その倍時間が経ってもまだ分かる。
ある種、普遍的なテーマというものがちゃんと込められていた。
日曜の夜7時放映という、基本的には子供向けの枠にもかかわらず、重たいテーマも物語の中にしっかり取り込んであったんですね。
普遍であり、かつ最新のトレンドであるとも言えます。いわゆる安全保障の視点から見ても、北朝鮮のミサイル問題とか、核開発という話と、ギエロン星獣の「超兵器R1号」(26話)のお話はリンクする。
そうですね。「第四惑星の悪夢」(43話)だって、AIやロボットがどこまで進化するのかという話で、完全に時代の先取りです。
そうです。『ターミネーター』(第1作は1984年)の何十年も前ですからね。
私も最近よく分かったんです。当時は何をやっているんだかちっとも分からなくて。
でも僕たちも当時は子供でしたから、見ている最中は、ただ面白がったり不思議がったりしていただけで、後からだんだんその意味が分かってきたんですよね。
当時は怪獣の戦いだけが面白くて見ていた人もいたんでしょう。
アンヌ隊員だけを見ているとか(笑)。その頃はそれぞれの見方をしていたわけですが、実は深いものがたくさんちりばめられていた。
オンエアはあまり見ていない
満田(みつたかずほ)監督がすごくお元気で、頭もしっかりしていらっしゃって。もうほんとに希少価値ですよ、今(笑)。
満田監督は撮っている本数、多いですよね。
鈴木俊継(としつぐ)監督も結構撮っていらっしゃる(編集部註:満田監督、鈴木監督とも14本)。だけど、随分前に亡くなられていたんです。
やはり、そうやって語れる方々が減ってきているのは残念なことですね。その分、ひし美さんに頑張っていただいている。
当事者のお話ってなかなか聞くことができないので貴重だし、本当に知りたいんですよね。
私たちなんかいいかげんでしたよ(笑)。毒蝮(三太夫)さん(フルハシ隊員役)なんか「俺今日、セリフないだろう?」なんて台本見てこないのね(笑)。2本並行して撮影するので、同じようなロケ現場だと、2話のカットと3話のカットを一緒に撮るみたいな感じで。
すると、1話全部通しての流れというのは分からないわけですか。
そう。当時放送を見ていた方のほうが、分かっていらっしゃる。
ひし美さんは、当時オンエアはご覧になっていたのですか。
あんまり見ていない。意外と撮影があったりするんですよ。日曜日の7時なんか、もう皆で騒いで飲んだりしていたのよ(笑)。いわゆるオールアフレコだったために自分の映っている画面は全部見てはいるんだけど、つなげては見ていないので、ストーリーはよく分かっていないんです。
結構最近になってから全話ちゃんと見られたんですよね。
そうなんです。この本(『アンヌ今昔物語』2017年刊)を書くからきちんと見なくてはと思って(笑)。
実相寺演出の現場
そうやって各話のストーリーをきちんと見返したとき、印象に残った回はありますか。
いっぱいあり過ぎるくらい(笑)。「第四惑星の悪夢」(43話、実相寺監督)なんかすごいと思いました。昔は嫌いだったんです。昔の戦争のニュース映像でよくあった目隠しして公開処刑するようなシーンが挿入されるでしょう?
あれは強烈ですよねえ。
強烈すぎ。子供番組にあれを出すってすごい。実相寺さんと晩年対談したとき、「私、あれがあるからあの話はあんまり見たくなかったの」って言いました(笑)。
でも、このお話の中では、それを目撃した隊員は、本当のことだと思わずに、何かのロケをやっているんだろうと考えているんですよね。そのへんが逆に薄ら寒い感じがします。なぜ実相寺さんはわざわざそのシーンを入れたのか。
やっぱり鬼才ですよ(笑)。
碓井撮影現場での実相寺監督はどんな感じでした?
あまりしゃべらない監督さんで、芝居もどちらかというとカメラ目線に立って「はい、グラス上げたー」とか「はい、下げたー」とかよく指示していました。例えばグラスにビューッとカメラが寄ったり、物越しに何かを撮ったりすることばかり気にして撮影していらして、芝居がどうこうはあまりおっしゃらなかったですね。
まさにそういった実相寺演出の現場を、ひし美さんに伺ってみたかった。
逆にやりやすいですよ。ペロリンガ星人の回(45話、「円盤が来た」)のとき、フクシン君とペロリンガ少年で河原で撮るシーンがあったんです。2人でずっとしゃべらせておいて、望遠で知らないうちに撮られていたという感じでした。だから、逆にナイスショットが結構ある。お芝居、お芝居してなくて。
当時はフィルム撮影ですから、アフレコ(無音の映像に合わせて、後から声を収録)のときに、「あ、こうなっていたのか」と分かる感じなのでしょうね。
そうなんです。実相寺さんの初日、お化粧して待っていたのに、後で映ったものを見たら反転になっていて、私たちは影になっているのね。「ええー」と思って。ああいう撮られ方をされていると思うと、逆に緊張しないで済む。
「こういう監督なんだ」と分かってリラックスしたというのが、いかにもひし美さんらしい(笑)。
そうなんですよ。私は最初、実相寺さんにビクビクしていたんです。フルハシ隊員が、「今度来る監督は鬼才で、すごいんだぞ」と脅かす。私は「鬼才」って、鬼監督のことだと思って(笑)。
それで、いつも顔を合わせないようにしていた。そうしたら、対談したときに、「ひし美君はいつもロケバスに僕が乗っていると、機材車に乗っていたね」と言われた(笑)。
実相寺監督の場合、画が第一という感じが明らかに分かるから、出演している方は頭にきているかと思ったんですけどね。
そうでもないんです。気が付いたらニキビのアップがあったり。
アップ大好きだから。
メトロン星人の回(8話、「狙われた街」)に照明が真っ白で、もう全部シルエットで映っていて。そのあとアップがありますよね。
あれ、向こうのビルから撮っているんです。
アンヌの髪の秘密
僕もつい実相寺監督を話題にするし、また実相寺マニアという方もたくさんいらっしゃいますが、間違ってはいけないのは、実相寺作品はあくまでも「異色作」であるということ。真っ当なというか(笑)、本流の作品群があったからこそ、実相寺監督はあんな「やんちゃ」ができたのです。
そうですね。
ウルトラマンもセブンも、実相寺監督が安心して異端でいられたのは、一方にほかの監督さんたちがいて下さったおかげだと思います。
満田さんとかね。それでメリハリがあった。
満田監督は結構たくさん撮られていますが、思い出みたいなものは?
満田監督はもう最初から最後まで熱心にやっていらっしゃった。ご自分の監督じゃないときまでよく顔をのぞかせて。ワイアール星人の回(2話)とピット星人の回(3話)の現場が私の初日で、それは野長瀬三摩地(のながせさまじ)監督の回だったんです。そのときアンヌの髪型はアップに結っていたんですが、様子を見に来ていた満田監督が、「それじゃ都はるみみたいだ。髪を下ろした方がいい」って意見されて、その通りに下ろしたんです。おかげで午前に撮ったカットと、午後に撮ったカットで髪型が繋がらなくなってしまったんですよ(笑)。
ずっと不思議だったんですが、満田監督の回だけアンヌ隊員の髪が長くなりますよね。あれは理由があるのですか?
あれは偶然。
なんと!(笑)
その前に飯島敏宏監督のバンダ星人の回(38話)かなあ、病院で男の子が外国の医師に心臓手術してもらうシーンがあって。
「でも僕、手術受けたくない」とかやっていた。
そうそう。「ダンさんが来ないとやだ」と言う。それで私が普通の車で行くと、クレージーゴン(バンダ星人が地球に送り込んだロボット)に遭遇する。
あのときの自分の髪形が、短くしてパーマかけたから、なんかベティーさんみたいでいやだったんです。
その後、髪をビッと上げてウィッグをつけて、前髪だけ自分の髪にして、満田監督に「私、今の髪型いやだからこういうふうに変える」って言うと、「お〜いいじゃないか」と言ってくれて、満田さんはずっとそれにした。それで、最終回のあの髪の毛フワーッというのになるんです。
ええ、きれいな髪で。
あれもやっぱりいいですよね。
満田さんも結構髪の毛までこだわる方だから。
隊員服のインパクト
ひし美さんご自身は、出演する前に、ウルトラQとかウルトラマンをご覧になったんですか。
いや、全然見てないです。
いきなりこのセブンに。
いきなりセブンです。ただ、ウルトラマンを1話だけ見せられました。そのとき、あのオレンジの隊員服がいいなと思っていたら、ブルー・グレイの服になって(笑)。
でも、あの制服が格好よかったですよねえ。
その当時は、もっと華やかな色がよかった。だけど考えてみると、あのブルー・グレイの服は、私みたいな胴が太い人は、目の錯覚でちょっと「キュッボン」に見られるのでよかったんですけれど(笑)。スタイルよくないのに、みんな錯覚してくれる。
でも、それでアンヌ隊員が初恋だ、みたいな男の子はいっぱいいるわけですよ。
そうそう。当時はワンクール(3カ月)ではなく、1年間の放映ですから、見ている少年たちにも、しっかりアンヌ隊員が刷り込まれてしまうわけですよ。ひし美さんとアンヌを、僕らはもうほとんど一体化して見ていました(笑)。
でも、当時、放送されるとテレビというものはもうそれきりなんで、意外と私たち俳優は、終わったら「はい、終わった」という感じなんですよ。森次晃嗣(もりつぐこうじ )さん(モロボシ・ダン役)なんか先に撮影終わったら、もう次の撮影に行ってしまう。
以前、『北の国から』で蛍を演じた中嶋朋子さんとお話ししたときに、何歳になっても「蛍だ、蛍だ」と言われ続けて、嬉しいけれども、「別の私も見てよ」という反発もあった、と仰っていました。そういうことはありませんでした?
私は「アンヌだ、アンヌだ」と言われたことない。
そうなんですか?
子供番組だから、子供がそんなこと言えないじゃないですか。大人になると、ほかに、麻丘めぐみだとか興味がどんどん変わっていって(笑)。だから、「アンヌだ」って騒がれたりしたことは全然ない。
でも、実際にやられていた1年間で、街に出ると「アンヌだ」と言われたことはないですか。
ないです。ダンもほぼない。サイン会をしたときに、ガラスも割れそうになるほどデパートに集まって、これ以上は危ないからって途中で止めたことがあったんです。それで着替えて、観衆の前を通ったら、みんな知らん顔だもの。
そうか、ウルトラ警備隊の隊員服じゃないと分からない(笑)。
そう。だから、あの制服がインパクトなんですよ。
あれ自体がもうアイコンになっている。
私は随分してからなぜか『プレイガール』というテレビドラマに出たんです(1973年)。
見ました、見ました。
私の登場回で視聴率が倍ぐらいに上がったんですよ。スタッフの人は、「なんでだろう」と不思議がっていたんです(笑)。私は、ひし美ゆり子の名前を新聞の番組表で見た人たちが、ああ懐かしいと思って見てくれたんじゃないかなと思ったの。
『プレイガール』はかなりセクシーで、僕もびっくりしました。「真面目なアンヌが不良になっちゃった」と思って(笑)。
そういう方が多かったみたいです。それで視聴率が上がった(笑)。子供のときに見たアンヌが、もうちょっと大人になった少年たちとタイミングが合ったというのかな、ちょっとお色気路線で。
はい。ドキドキしました。
だから、こんな変わった女優はいないと思う(笑)。
振り幅がすごいですよね。
そう。180度どころか、360度ですよ。学校映画のお母さん役をやったり『好色元禄㊙物語』に出たり。それもたったの9年間で。
その中でも、やはりセブンのインパクトがすごく強いですよね。
セブンという作品自体の力がすごいんですよ。
セブンの音楽とデザイン
セブンというと、どうしても私がこだわってしまうのが、冬木透先生の音楽なんです。
音楽も、成田亨先生のデザインも、すべていい。
そうですね。特に、自分がクラシックファンということもあって、やはり最終回のシューマンのピアノ協奏曲は心に響きます。
実はここで使われたピアノ協奏曲はカラヤン指揮の1948年録音のものですが、ピアニストのディヌ・リパッティはこの録音の2年後に30ちょっとの若さで病気で亡くなってしまうんです。
冬木先生はそこまで分かってこの録音を選択したのでは、とも思うんですね。その音楽を最後の命を懸けて戦うセブンの姿に重ねて……。
なるほど。
当時は子供だから、セブンのために書かれた曲かなと思っていたのが、シューマン作曲と分かると、「よくあれだけピタッと合う曲が見つかったなあ」と思って。
冬木先生は、高校の音楽の先生で担任まで務めながら関わった作品だったんですよ。製作費を抑えるためかどうかは分かりませんが、たまたま学生時代にTBSでバイトに入って円谷一さんや実相寺さんと知り合って。
なるほど。そうすると、冬木先生を使うと安いというところも大きかったと。
真意のほどは分かりませんが、それでいてあんなに素晴らしいものを残した。だから、セブンに関わった人はみんなこうやって引き出されているわけです。
ウルトラセブンの主題歌も、ホルンのあのブーン、ブーンという音がものすごく耳に残るんですね。
つい反応してしまいます。
ああいうホルンの使い方自体そうそうない。あれは変ホ長調の曲で、変ホ長調というのは、クラシックの世界では英雄の調べといわれるらしいのです。英雄というのは、強いけれども、どこか悲しみを背負っていて、でも先頭に立ってやっていかないといけない。ベートーベンのピアノ協奏曲の5番「皇帝」と、交響曲の第3番「英雄」は、両方とも変ホ長調の曲なのです。それをやはり、ウルトラセブンの主題歌でも使っている。ホルンで勇壮さを出して。
すごいセンスですね。ウルトラマンのときはあまりクラシックというイメージがないですよね。音楽も全然違うタイプで。やはりセブンで全体が変わって大人っぽくなっている。話そのものも子供たち向けというだけでなくなっている。
それと、やはりデザインに注目ですね。成田亨さんもそうですが、僕にとっては池谷仙克(いけやのりよし)さんです。
池谷さん。うん、うん。
実相寺作品で一緒に仕事をさせていただいたりしたのですが、池谷さんのデザインも、50年どころか、ずっと生き続けると思います。
そうですね。だから、ノンマルト(42話)をキャベツからイメージしたりとか。池谷さんも亡くなってしまって……。
デザインというと、メカのデザインもありますね。
素晴らしい。ウルトラ警備隊専用車のポインターも大好きだし。
ポインターもですが、やはり子供心にウルトラホーク1号の分離・合体というのは本当に格好よくて。プラモデルつくりましたよ。
どれほどつくったか(笑)。
α、β、γとあって、分離・合体するんですよね。
はい。途中でγ号に強制的に合体して助けるというのがありました。あれキュラソ星人の回(7話)でしたよね。
さらわれたアンヌを助けるために合体した、7話「宇宙囚人303」(鈴木監督)です。うちのそばに、ロケをしたガソリンスタンドがまだ残っているんです。
キュラソ星人が人を殺すところですね。
私、あの星人が一番怖かった。
実際、ただの犯罪者なんですよね。本国の星からも、「見つけ次第処刑してもらっていい」と地球にわざわざ言ってくる。リアルな怖さがありましたね。
ひし美 現実のストーカーみたいな感じで。
科学万能へのクエスチョン
セブンの前のウルトラマンは、大人を意識した要素がなくて、お子さん相手の娯楽だったわけですよね。
中には違うものもありますけど、基本的には怪獣がドーンと出てきて、ウルトラマンがドーンと倒してという、勧善懲悪に近いようなものが主体でしたね。
それに怪獣というのは自然現象みたいなもので、なぜ現れたとか、どうしたいとか、そこには理屈がなかった。でも、セブンの宇宙人は理由があって地球に来ている。こうやって侵略しようとか、彼らには知性も考えもあるんです。
向こうの言い分もある。
だから、正義って本当に何が正しいのだろうと考えさせるところがありますね。
ペガッサ星人(6話)にしても、悪気があるわけではなく、たまたま自分たちの乗っているペガッサ市が地球にぶつかるから、ぶつからないようにしたいと。でも、故障しているので、地球を動かしてくれと言う。しかし、地球には動かす技術がない。
すごい話ですよね。
しょうがないからペガッサ市を破壊するしかないということになって地球防衛軍は破壊するのだけど、見ていて切なくなる話ですよね。
単純に善と悪に分かれていて、善であるこちら側が、悪である敵を倒すという話ではまったくない。
ノンマルト(42話)なんかもその最たるものですね。もともとノンマルトが地球人だという、真市少年のセリフがありますよね。
あれはすごい設定ですよね。
先住民。
当時、沖縄の方や北海道の方がご覧になっていたら、どんなふうに見えたんだろうと思いますもの。
そうですね。だから、当時も本当にうっすらとした記憶ながら、キリヤマ隊長の「これで地球はわれわれのものだ」というセリフも、「いや、本当にそうなの?」とちょっと感じましたよね。
地球人と宇宙人が戦っているんだけど、それを凝縮したものは、地球の中のいろいろな問題の比喩に全部なっているわけね。
イメージが置き換えられる。第3次世界大戦だとか、あるいは冷戦構造のメタファーとして。
だから、いつまでも分かりやすい。人間としてすごくうなずける内容になっているんじゃないかと。50年たってもそうだから。
だから、悲しいことですけど、人類って成長してないなあ、となりますよね。「第四惑星」にしても、今これだけAIとかロボットが出てきて、実際それによって奪われる職もあるわけです。今はAIにさせたほうが間違いない判断ができることも多い。すると、行き着く先はこの第四惑星のような世界になるんじゃないかと。
これを50年前にやっているわけですからね。もちろん進化や進歩には、いいこともたくさんあるんですが、「でもね」という部分もセブンでは描いていました。あの時代に、「科学万能でいいのか」「進歩することはすべて正義か」とクエスチョンを投げかけたことは強調していい。
「超兵器R1号」(26話)を見ても、もっと強い兵器をつくれ、と言って不幸になっていく。
今だって、まさにそういうことですよね。
ダンが「血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ」と言う。
しかも、そういう内容を日曜の夜7時にやっていたこと自体がすごいですよね、今思うと(笑)。
忘れられない夕陽の画
技術が進んでいくと、結局は人と人との信頼関係が大事だということになるのですが、そこでおもしろいのは、「狙われた街」(8話)です。「我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから」という、最後のナレーションがある。これは非常に皮肉だなあと。ひし美あれは浦野光さんのナレーションが効いている。誰が書いたのかしら。碓井実相寺監督が書き加えたみたいですよ。ひし美実相寺さんが! それは冴えていたわね。いい言葉だもの。桑畑この回も、今でも名作と語り継がれている。碓井いやあ、確かに、あの四畳半のちゃぶ台での「差し向かい」は、かなりの衝撃ですもん(笑)。オンエアを見ていた当時も、子供たちは「今回は、なんかいつもと違うなあ」という気持ちはあったんです。大人になってから、あれは実相寺という変わった監督がつくったんだとか、だんだんわかってきて納得するんですけど。桑畑あと、やはりメトロン星人のデザインですね。これがすごく頭に残る。ものすごくカラフルでありながら変な形をしていて。
最後は夕陽の中ですごくきれいな映像だし、子供心にもやっぱり刷り込まれる。碓井あの夕陽のシーンは忘れられないですね。桑畑碓井さんは実相寺さんと一緒にお仕事されていた際、どのようなことを感じられていましたか。碓井僕は亡くなる頃まで、4半世紀もお付き合いをさせていただきました。実相寺監督は、どんな画を撮りたいかが第1で、ある意味では役者さんをオブジェみたいに扱いますから、時々ハラハラしました。だからこそ、他の演出家の方たちとは違うものになったわけですが。ひし美噂によると、TBS時代に美空ひばりさんを撮ったときに顔を撮らないで足を撮った?碓井いや、超アップで鼻の穴まで撮ってしまったんです。それで、もう大騒ぎ。
怒られたらしいですね。碓井もちろんですよ。とにかく、普通に撮ればいいものを普通に撮らない人だから。ただの歌謡ショーなのに、「美空ひばりの鼻の穴」じゃあ、どっと抗議がきますよ(笑)。桑畑でも、当然意図があったのでしょう。碓井いや、決まりきった映像を撮りたくなかっただけだと思います。ひし美それが彼の映像の信念ですね。テレビ局のディレクター的なものは合わなかったんじゃない?碓井逆にそういうことがあったおかげで、円谷プロへ行って監督はウルトラシリーズに出会う。結果的にはよかったのかもしれない。ひし美4本しかセブンは撮っていないのにすごいですよね。もう、今年の50周年を機に早く12話(「遊星より愛をこめて」、実相寺監督)を解禁してほしい。桑畑そうですね。今、欠番扱いという形になってはいますけれど。碓井ちゃんと見てもらえば、当時誤解されたということが明らかになると思うんですよ。決してそんなおかしなものではないわけで。ひし美そうそう。あれを没にしたらもったいないですよ。私はもう20年以上前から「12話解禁!」って言っているんです。桑畑いわゆる同人の方々が、12話だけのムックをつくったりしていましたね。ひし美「12話会」というのがあるんですよ。桑畑ぜひこの50周年をきっかけにして、もう1度この12話の再評価も含めた形で盛り上がってくるとうれしいと思うのですね。
メトロン星人の知性
碓井さんは印象に残っている宇宙人とか怪獣、ロボットというと?
僕の場合は、やはり実相寺監督「狙われた街」のメトロン星人ですね。彼らは知性も相当なものですが、当時の子供たちは、地球以外にも、これぐらいの生物が存在するかもしれないと想像することができた。
なにしろ「セブン」の放送から2年後の1969年には、人類が月に立ってしまうという時代ですからね。今よりも、社会全体がもつ科学や技術に対する信頼感、そして宇宙への関心や憧れは強かったです。
それと、「狙われた街」で描かれていたのは、人間同士のつながりなど実はもろいものであるとか、すごくアイロニカルな世界観でした。これも驚きで、大人というか人間は、少年たちが思いもしない別の側面も持っていることを教えてくれた1本でもあります。
なるほど。私の場合、ウルトラホークもそうですが、やはり未来に対して夢が持てた時代でしたから、未来はどんなことができるようになるんだろうと思うなかで、キングジョー(14・15話)というのはものすごく印象的なロボットでしたね。
合体するのね。
そうです。分離して合体してロボットになるというあの発想がよかった。それからまたすごく強くて、ウルトラセブンも敵わないロボットが出てきたということで、ものすごく印象に残っていますね。
キングジョーも人気ありますよ。
あと、カプセル怪獣ですね。
怪獣といえば巨大なものというイメージなのに、それをカプセル化するアイデアがおもしろい。
仲間の怪獣もいるという発想ですからね。
後のポケモンに通ずるような感じさえしますものね。
まさにそうですね。
ペガッサ星人の想い出
ひし美さんは、好きな怪獣とか宇宙人はいらっしゃるのですか。ひし美一番愛着があるのは、ペガッサくんです(笑)。桑畑ああ、やっぱり。ペガッサ星人が後ろからアンヌに襲いかかっているという宣材写真のシーンは、本当はないんですよね。ひし美ないです。あれは、たまたまTBSの番宣かなんかが撮ったんです。桑畑あの写真が今でも残っているので、ペガッサ星人は後ろからアンヌを襲おうとしている悪いやつという印象がありますが、実は違うのですよね。最新のシリーズでウルトラマンジードというのが始まりましたけど、ペガッサはレギュラーで出ていて味方なんです。よかったですね。あのときのペガッサが生き残っていて。ひし美アンヌの部屋にいたペガッサはどこへ行ったか分からないという形で終わっているからね。桑畑ちょっと救われる感じがしますね。どういう点で特にペガッサに愛着があるのですか。ひし美やっぱりアンヌの部屋にいたということ。走り方がかわいいのよね、アンヌの部屋からパァーッと出ていくときとか(笑)。気持ち悪かったのがブラコ星人(22話)。股のあたりに触角が2本あって、アンヌを襲う。頭が大きいから、ちょうど触角が股ぐらいの位置なんですよ。それで襲ってくるから、もう気持ち悪い! という感じだったんですよ(笑)。『アンヌ今昔物語』はもうセブンの研究本みたいなものなんです。いろいろな人との共同作業の成果です。ファンの人たちから教えていただいたこともありますからね。一緒にロケ地探訪にも行ったりして。桑畑非常に資料的価値がありますよ。パズルのピースをまさに組み立てて、今形にしていただいているものをわれわれは享受することができるのは有り難いなあと。碓井そう、本当に貴重です。ひし美いやあ、こちらこそそんなこと言っていただいて、とても嬉しいです。以前だったら、「分かんない。だって全然覚えてないもん」という感じだったんですよ。私もちゃんと答えられるように勉強して、やっと少し皆さんに追い付けたという感じでこの1冊が出たのです。碓井よく覚えていらっしゃいますよ。これを読むと、僕らはもうありありとそのときのことが目に浮かぶ。桑畑ぜひ、これからも伝道師として、われわれのような年齢のいった人間もそうですが、もっと若い人たちにも教えていただきたい。これからもウルトラセブンが好きな人たちは増えていくでしょう。そういう人たちにとって、ひし美さんの存在はやっぱり大きいと思います。今日は本当に楽しかったです。有り難うございました。ひし美こちらこそ、有り難うございました。※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。