登場者プロフィール

辻 和彦

辻 和彦
結晶では原子が周期的に並んでいます。これを、長周期秩序があると言います。氷の温度を上昇させると水に変わるように、結晶の温度を上昇させると、液体に変わります。このときの体積変化は数%程度なので、原子間の平均の距離はほとんど同じですが、原子の並び方には長周期性はなくなってしまいます。
では、物質に圧力を加えて、体積を減少させるとどうなるでしょうか?結晶では全体が相似的に収縮していきます。そして、多くの場合、転移圧力で、結晶全体が相転移して、不連続に別の結晶構造に変わってしまいます。
典型的な半導体として知られているシリコンやゲルマニウムでは、ダイヤモンド型構造の結晶は10数万気圧の超高圧力下で相転移して、錫と同じ結晶構造に不連続に変わります。高圧力相は金属であり、低温にすれば超伝導を示します。このように物質の高圧力相は、1気圧のときとは性質が全く異なってしまいます。この意味で、高圧力実験は新物質を次々と作り出している研究と言えます。
液体に圧力を加えるとどうなるでしょうか?結晶とは違って、原子間の距離には分布(構造ゆらぎ)があり、収縮しやすい場所と、収縮しにくい場所があります。このため、液体の局所構造の収縮の仕方は結晶とは大きく異なると考えられます(図1)。
圧力は力/面積で表わされるので、高圧力の実験には大きな力や小さな試料が必要です。1500トンの圧力装置を用いたり、0.1 mmの大きさの試料を用いたりします。超高圧力下の液体の構造の研究には、高強度で透過力の大きなX線が必要です。
兵庫県にあるSPring-8(写真1)や茨城県にある高エネルギー加速器研究機構の放射光施設では、実験室のX線よりも百万倍以上強度の強いX線が使えます。これらを用いて、液体の中での急激な局所構造の変化や、結晶には見られない液体特有の局所構造の発見などの多くの成果を得ています。