登場者プロフィール

中迫 雅由

中迫 雅由
今年の春、2機の人工衛星が火星に到着し、生命の痕跡を求めて砂漠のような場所を徘徊したのを覚えていますか?生物の化石や這いずり回った痕跡を見つけようとしているのかと思ってニュースを見ていましたが、どうも探しているのは、火星に水が存在したことを証明することのできる化合物や侵食痕のある岩石や地層のようでした。この例に見るように、NASAの火星探査プロジェクトも含めた多くの科学者は、“水の存在”=“生命の誕生”という論理をもとに物事を考えているようです。でも、誰もこの論理を科学的に裏付けることができていないように思います。
私たちの研究室では、至極当然のごとくその恩恵に浴している“水”という液体が生命活動にとってどんなに大切なのか、どのような影響を与えているのか?という非常に素朴な疑問に対する答えを探しています。生命と水の関わりを分子や原子のレベルで探求してみようと研究を始めてから、すでに7年が経ちましたが、現在では、水の重要性をほんの少しだけ説明できそうです。生命体を構成し、生命現象の担い手である蛋白質や核酸がどのようにして水と関わっているのかを原子や分子のスケールで詳しく調べるために(図1)、素粒子加速器から得られるX線(図2、図3)や中性子を使って研究しています。
コップ一杯の水をじーっと眺めながら、よーく味わって飲んでみると、水と生命の関わりについて沢山のことが想像できるかもしれません。
図1:もしも、細胞の周辺を1億倍ぐらいに拡大してみることができれば、青い球で描かれた水の中で蛋白質(リボン模式図)が運動する様子が見えるでしょう。細胞膜の厚さは4ナノメートル(10億分の1メートル)です。
図2:兵庫県の西播磨地区にあるスプリング8と呼ばれる電子加速器です。私たちの研究室は、年に5回ぐらい、この施設でX線を使った実験を行っています。中央の山を取り囲んで白く帯状に見えるのが蓄積リングと呼ばれる建物で、周長1.5kmもあります。
図3:図2の写真の建物の中には70台ぐらいの巨大な実験装置があります。その中の1台で実験を行った際の写真です。いろいろと複雑な装置を操作しながら徹夜で実験を行います。