慶應義塾

一生懸命に考えると頭の血の巡りがよくなります。

登場者プロフィール

  • 富田 豊

    富田 豊

私の研究室は生体計測をやっています。計測には電気生理的な計測もありますし、力を測ったり、長さを測ったりすることもあります。今日お話する脳の活動を測ることもあります。私たちの何気ない動きには脳はほとんど活動しません。それはそうですよね、歩くときにいちいち右足を出して、体重を右足に乗せて、右足のつま先で地面を後に蹴りながら、次に左足を出して、...なんてことを考えていたら電車に乗り遅れてしまいます。歩行はほとんど反射です。さて、皆さんは右手で3拍子、左手で2拍子を打つことができますか?ピアノを弾く人はできるでしょう。3連符を弾いている感じです。ドラムを叩く人もできるでしょう。こういう人は右手で3拍子、左手で2拍子を打っても大脳はほとんど活動しません。しかし、ピアノやドラムをやらない人は、一生懸命考えないとずれた拍子は打てません。そこで、脳の血流を頭皮の上から測る、左下の図1にある光トポグラフィという道具を使うと、前頭葉とよばれる、意思をつかさどる部位が活動していることがわかります。右下の図2を見てください。これは右手も左手も3拍子で叩いているときの活動状態です。ほとんど活動していませんね。簡単な動作だからです。しかし、右手で3拍子、左手で2拍子になると、手の動かし方を一生懸命考えるので右下の図3にあるように前頭葉が活動してきます。でも、この運動を1週間位訓練すると慣れてしまって、前頭葉が活動しなくなります。もう歩くのと同じ反射で両手が動くようになってしまいます。ちょっと前までは、脳機能を測定するというと、脳波、脳磁図、fMRI(機能測定用磁気共鳴画像装置)、PET(陽電子放出断層装置)などしかありませんでしたが、いい計測装置ができると、もっといろいろな機能が測れるようになります。

(図1)光トポグラフィ装置を装着したところ
(上 図2)簡単な動作をしているときの前頭葉の活動は少ない (下 図3)複雑な動作をしているときの前頭葉の活動は大きい