慶應義塾

[第191回]上森 寛元

登場者プロフィール

  • 上森 寛元(うわもり ひろゆき)

    (自修館中等教育学校出身) 2014年3月 慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科卒業 2016年3月 慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻前期博士課程修了 2019年3月 慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻後期博士課程修了 2019年4月 国立研究開発法人理化学研究所脳神経科学研究センター触知覚生理学研究チーム研究員 2021年4月 日本学術振興会特別研究員(PD)(理化学研究所所属) 2021年6月 基礎科学特別研究員(理化学研究所所属) 現在に至る

    上森 寛元(うわもり ひろゆき)

    (自修館中等教育学校出身) 2014年3月 慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科卒業 2016年3月 慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻前期博士課程修了 2019年3月 慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻後期博士課程修了 2019年4月 国立研究開発法人理化学研究所脳神経科学研究センター触知覚生理学研究チーム研究員 2021年4月 日本学術振興会特別研究員(PD)(理化学研究所所属) 2021年6月 基礎科学特別研究員(理化学研究所所属) 現在に至る

自己紹介

私は今現在、国立研究開発法人理化学研究所脳神経科学研究センターのポスドク研究員として脳の研究、特に知覚の研究を行っています。我々人間や動物が外界からの様々な刺激や外界の事物をどのように知覚し、理解するのか。膨大な数の神経細胞などによって複雑なシステムを成す脳がどのような動作原理・信号のやり取りによって知覚を成立させるのか。そういった問いに対して、神経細胞を活動に応じて光らせる技術、脳を深くまで見て多数の神経細胞の活動を捉えるための顕微観察技術、神経細胞の活動を光によって操作する技術など、様々な技術を駆使して日々実験を行ってデータを取得し、その解析をして知見を深めています。

自分のルーツ

私は小学校の登下校の時にふと、「自分の見ている世界って友達が見ている世界と同じなのかなぁ」と思ったことがあります。そしてさらに、「自分の見ている世界と友達が見ている世界が同じかどうかってどうやったらわかるのか」ということに疑問を持ちました。いくら郵便ポストは「赤い」ってみんなが言ったとしても、その「赤い」という言葉とみんなの頭の中にある色は同一とは限りません。小学生の時に抱いたこのような疑問は、成長するにつれ、「なるほど、自分たちが世界を認識できるのは脳によるものなのか」と知るようになり、もっと脳のことを知りたい、と思うようになりました。これが私のルーツです。

なぜ理工学部を選んだか

修士1年の時の研究室メンバーと行ったマザー牧場での1枚。当時は人数が少なく、とてもアットホームな雰囲気の中、お互いにディスカッションしながら実験をするような日々でした。

私が理工学部を選択した動機は、学問領域が多岐に渡ることでした。大学入学時点では将来的に脳研究をしていきたいという強い意志があったわけではなく、どういった道をこれから歩むことになるにせよ、様々な学問を学ぶことで将来の選択肢を広く構えたいという思いがありました。慶應義塾大学理工学部は、数学、物理、化学、生物などの基礎学問について学んだ上で、機械工学、制御理論、信号処理、細胞生物学、流体力学、プログラミング、統計学など、より専門性の高い学問や技術を履修・修得することができます。そのような様々な学問に触れることで、自分が本当に好きなことは何か、何を自分の軸に据えたいか、を漠然と考えながら学生生活を過ごしていました。

海外経験

初めての国際学会(ボストン)におけるポスター発表での1枚。この時は口頭発表も行い、このポスター発表のコンテストでは世界1位の賞を受賞することができました。

理工学部では学部4年になると研究室配属となります。私の場合、システムデザイン工学科の須藤亮先生のもとで毛細血管網の生体外再生という研究からスタートしました。大学院入学とともに、神経幹細胞と血管再生とを組み合わせた微小脳組織の再生というテーマを立ち上げました。その研究成果を初めて国際学会で発表したのは米国マサチューセッツ州ボストンでしたが、須藤先生がハーバード大学医学部(Harvard Medical School)にて准教授(associate professor)として脳神経-血管の相互作用の研究をされている荒井健先生を紹介してくださったことがきっかけとなり、その後博士課程に進んだ際にハーバード大学医学部・マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)内の荒井先生のラボで短期間の研修をさせていただく機会を得ました。

Harvard Medical Schoolの荒井先生とラボのテク、留学生、そして須藤先生と一緒に行ったランチでの1枚。アメリカはどこで食べてもピザがとても美味しいです。

その際は、博士学生を対象として海外の著名な大学の先生から副指導教官として直接ご指導いただくための支援となる博士課程学生研究支援プログラムに採択され、渡航費用に関しても奨学制度を積極的に利用しました。その結果、当該分野において様々な研究成果を出されている荒井先生のラボにおける実験技術を直接ご指導いただき、私自身が進めていた研究を大いに進展させることができました。学内のこのような支援プログラムや奨学制度のおかげもあり、世界でトップクラスの研究機関において勉強するという大変貴重な経験をさせていただきました。

博士号取得の先の道

一般的に、博士号取得者は企業もしくはアカデミア(大学や研究機関)という2つの選択肢を進路として考えます。この選択はこれまでの人生で一番悩みました。どちらもその限りではないものの、相対的に見れば企業はチームプレーの性質が強く、研究は個人プレーの性質が強いと思います。自分自身を見つめなおしてみると、自分のペースで黙々と何かに没入することや、興味を持ったことに対して深く考えることが好き、という性質が強く、結果的にアカデミアの道を今歩んでいます。そして、学生時は再生医療の分野の研究でしたが、思い切って分野を変え、現在は神経科学の分野で一から勉強し直し研究を進めています。

おわりに

この「塾員来往」は様々な方々がご覧になっているかと思いますが、主に理工学部を志望する受験生に向けたメッセージが多いかと思います。私が最後に言いたいこととしては、様々な学問に触れることで、自分自身が何を軸として、何を生きがいとしてこの先を過ごしていきたいかを考えるための材料として欲しい、ということです。選択肢を広く構えることで、そこから様々な可能性を見出すことにつながると思います。大学で出会った仲間たちと切磋琢磨して充実した大学生活を送れるよう心から祈っています。

私が専用で使用している実験室での1枚。この部屋では、マウスが知覚課題(外部刺激に対して特定の行動をすることで知覚を報告させる課題)を行えるようにするためのトレーニングや、得られたデータの解析をしています。