登場者プロフィール
嘉副 裕(かぞえ ゆたか)
(佐賀県立佐賀西高等学校出身) 2004年3月 慶應義塾大学 理工学部システムデザイン工学科卒業 2006年3月 慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻修士課程修了 2008年9月 慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻博士課程修了 2009年3月 米国ジョージア工科大学機械工学科研究員 2010年5月 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻特任研究員 2011年2月 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻助教 2015年9月 東京大学医学部附属病院血液浄化療法部特任講師
嘉副 裕(かぞえ ゆたか)
(佐賀県立佐賀西高等学校出身) 2004年3月 慶應義塾大学 理工学部システムデザイン工学科卒業 2006年3月 慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻修士課程修了 2008年9月 慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻博士課程修了 2009年3月 米国ジョージア工科大学機械工学科研究員 2010年5月 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻特任研究員 2011年2月 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻助教 2015年9月 東京大学医学部附属病院血液浄化療法部特任講師
私が理工学部に入学してから早いもので15年経ち、現在は大学で教員をしています。これまでの学生生活やその後についてできるだけ紹介したいと思います。
慶應義塾大学入学以前
私は幼少時から生き物を捕まえて図鑑で調べることや工作が好きな子供でしたので、その延長で高校までは何となく理系に進んでいました。大学の理工系には化学、物理、機械をはじめ様々な学科があるのを知り、実際に内容を見てから選択したいと思い、入学後に学科を選べる大学を志望しました。浪人もしましたが、慶應義塾大学理工学部の学門4に何とか合格することができました。
学部時代、大学院時代
入学後は、2か月間も夏季・冬季休暇がある大学の自由さを満喫しつつマイペースな学生生活を送りました。サークル活動では何か新しいことをやってみたいと思い、マンドリンクラブに入りました。音楽もマンドリンという弦楽器も初めてでしたが、演奏会、合宿、クラブ運営から普段の部室での何気ない会話等々、楽しい生活を送ることができました。多くの友人ができ、今でも交流が続いています。一方、2年目の学科選びでは、高度に複雑化したシステムの要素である電気、機械、制御、情報など様々な学問を学べることに魅力を感じ、システムデザイン工学科に進みました。が、学科選びで安心したのか、2年目からは怠け者の学生と化してしまいました。(教員になった今、真面目に勉強すればよかったと後悔しています。。)
思えば転機となったのが、4年生の研究室配属でした。それまでの成績がたたり、全く志望外であった熱流体工学の研究室に配属されてしまいます。そこで新しく着任された佐藤洋平先生のもと、数10μmという髪の毛よりも細い流路の中の液体の流れの研究に従事することになりました。これは、混合・反応・分離など様々な化学の操作を数cm角のチップ上に集積化して、1滴よりも少ない血液での健康診断や高効率の医薬品合成などを実現する、マイクロ化学システムと呼ばれる新しい学術分野を背景にした研究です。実際の研究生活は、数10μmの流路を自分で製作して、レーザーやレンズや顕微鏡などを使って光学系を組み、解析プログラムも構築して、微細な流路の中の流れをはかる計測システムを開発する毎日でした。当時の私は、ミーティングに遅刻したりと自堕落な学生でしたが、佐藤先生からは物事に優先順位をつける基本的な仕事の進め方から論文・プレゼンテーションに至るまで厳しくも温かいご指導を頂き、そのおかげで結果も出て進学した大学院で多くの学会発表や論文発表の機会を得ることができました。
大学院生活の中で、未知の現象や課題に対して自分で考えながら試行錯誤しつつ解明・解決して、学会で色々な研究者と議論しながら研究を進めていくことに面白味とやりがいを感じ、研究者への道を志すようになりました。また、学会発表で欧米をはじめとする様々な国で異なる文化に触れられることも魅力的でした。日々の生活で先輩・同期・後輩と苦楽を共にしながら研究の課題をクリアしていき、博士課程では自分の研究を1つの論文にまとめるのに苦労しましたが、通常3年の博士課程を2年半で終えることができました。
その後
博士課程修了後、研究室の菱田公一先生のご紹介で、米国ジョージア工科大学機械工学科に研究員として滞在し、Minami Yoda先生のもと、自分が得意とする微細な流路内の流れの測定法について更に研鑚を積みました。日本と比べて一長一短ですが、米国は上下関係もなく研究室間、学科間の交流も活発な環境で、私も思う存分研究に取り組みました。また、台湾人、トルコ人、中国人との共同生活も新鮮な経験で、現地日本人の方々との交流もあり、研究と遊びのメリハリをつけながら米国生活を謳歌しました。その後、東京大学工学系研究科応用化学専攻の北森武彦先生からお誘い頂き、これまでの微小空間の流れの研究に加えて、マイクロ化学システム全般に関わる研究に取り組むことになりました。現在は、数10μmのさらに1/100で、学術的にこれまで未踏の領域であった数100nmという極小空間の流れの研究や、これを用いた分析デバイスの研究に取り組んでいます。化学、バイオや材料工学など様々な分野の研究者と議論しながら、新たな科学・工学分野を開拓すべく、学生と一緒に四苦八苦しながら研究する毎日を過ごしています。
おわりに
私のこれまでを振り返ってみると、大学生活にしても研究にしても、よくわからない中でもとりあえず何か始めてみて、徐々に自分の考えや研究の独自性が固まっていったように思います。大学は様々な機会を与えてくれる場で、特に慶應義塾は学生個人の自主性を尊重する気風が強いのではないかと感じます。以上は私個人の経験ですが、これから理工学部を志望される方々の参考になれば幸いです。