登場者プロフィール

本澤 豊(ほんざわ ゆたか)
(東京都立小石川高等学校出身) 1981年 オレゴン州立大学留学(1年間) 1983年 慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業 1986年 慶應義塾大学大学院理工学研究科管理工学専攻修士課程修了 1986年 ソニー株式会社入社 現在に至る

本澤 豊(ほんざわ ゆたか)
(東京都立小石川高等学校出身) 1981年 オレゴン州立大学留学(1年間) 1983年 慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業 1986年 慶應義塾大学大学院理工学研究科管理工学専攻修士課程修了 1986年 ソニー株式会社入社 現在に至る
はじめに
「よく卒業できたな! 社会人になってもがんばれよ!」 約30年前、同級生や恩師からかけられた激励(安堵)の言葉が今も鮮明に残っている。30年後、なんと、「塾員来往」執筆の依頼を頂いた。これは、私にとっての学生生活、そして、それが現在にどう通じているかを、ありのままに伝えてほしいとの期待に違いない。以下、学生生活(8年!)と現在に至るまでの振り返りをさせていただきたい。
学部時代
高校時代から始めたラグビーに没頭した。所属は、理工学部体育会ラグビー部。当時のラグビー部長は塾長を務められていた久野先生。14期上の先輩には、後に塾長になられた安西先生がいらっしゃった。安西先生は、私が義塾に入学の年、カーネギーメロン大学博士研究員を終わられて塾に復帰した眩しいほどスマートな先輩であった。私は、夕方のグラウンドと夜の宴席は元気一杯、一方、昼まで瞼が開かない学生だった。そんな私の転機は、米国留学。留年ぎりぎりの成績で第2学年を終了、3年次をオレゴン州立大学で迎えた。1980年3月のことだ。即座にラグビー部に入部。アメリカンフットボール崩れの不器用な巨漢に交じりプレーした。日本では普通のパスも、米国では器用なパス。「Magic Yutaka」と褒めちぎられた。よいことは素直に認める米国の度量を経験した。自分の狭い世界観も実感した。レーガン大統領が強いアメリカを標榜して第40代アメリカ大統領に就任した時期だった。米国で学生生活をしながら、世界の中の日本、日米関係などを強く意識せざるおえなかった。あらゆることへの好奇心が目覚めた。帰国後、再度3年次に復学、ラグビー部では主将を言い渡された。相変わらずラグビー中心の生活に戻ったものの、大きな違いは好奇心。グラウンド、宴席のみならず、あらゆることへの好奇心に目を向けた。管理工学科のカリキュラムは好奇心を満たしてくれる工夫満載だった(ということが大学4年目になってようやく判った)。管理工学のホームページに以下の記述がある。「管理工学は人間や社会に対する視点を重視し、その対象は企業の生産効率の追求から、都市や交通問題、地球規模での経済や環境問題まで扱い、人間を含む複雑な現状の中から問題の本質を見つけ出し、研究をしている。」 広く好奇心を持っている学生になんと最適なことか!
大学院時代
好奇心を満たす一心で、迷わず大学院に進んだ。劣等生である自分を指導教官(高橋吉之助先生、専門は経営・会計学)は嫌な顔一つせず受け入れてくれた。大学院時代の好奇心は管理工学科を超えて三田の教科にも及んだ。経済、憲法、国際法、外交史、フランス語、、、3年かけて大学院を終えた。
ソニー入社後
ソニー入社(既に26歳!)。好奇心は留まることがなかった。世界を知りたい。そして配属されたのが情報システム海外営業本部。中南米部に配属された。中南米の歴史、経済事情を猛勉強。マイアミに中南米本社を置くべく提言し、そのまま赴任(31歳)。新会社立ち上げに奔走。その時役に立ったのが、「人間を含む複雑な現状の中から問題の本質を見つけ出す」基礎を与えてくれた管理工学の体系的知識。
5年後、NY勤務となり、米国事業戦略セクションへ。体系的財務知識の必要性を身に染みて感じた。その時救ってくれたのも研究室時代の本。帰国後の配属は本社経理部門(38歳)。これまで積み上げてきた横の広い経験と知識が一挙に縦に深堀されるのを実感。欧州勤務でさらに経験を広げた40代。そして、本社マネージメント、IASB (International Accounting Standard Board ) 日本代表委員として活躍の場を与えられた50台前半。丁度このころ、ソニー取締役会にて、社外取締役に就任されてた安西先生と何度かご一緒させていただいた。少しは成長したな、、と思って頂けたかどうかは定かでない。
すべての基礎は、「人間を含む複雑な現状の中から問題の本質を見つけ出す」基礎を与えてくれた管理工学の体系的知識および好奇心にあると実感している。
現在
現在、北米エレクトロニクス事業のCFOを務めている(昨年1月着任)。業務の枠を超えたsocietyとの付き合いにも及ぶ(これは苦手なのだがそうは言っていられない)。着任早々、プロスケーターTony Hawkとの懇親会、カリフォルニア州副知事Gavin Newsomとの意見交換など、定期的に顔を出さなければならないイベントがある。ここでも役立ったのが、横と縦に広がった経験と知識、そして好奇心だ。
伝えたい事
海外に出よう。海外から日本を客観的に見つめよう。回り道を楽しもう。回り道は経験の引き出しを広げてくれるもので、長い目で見れば必要だ。目的意識と好奇心をもって、義塾、そして管理工学にて触れる(学ぶ)ことのできる事柄を見回してみよう。好奇心を満たしてくれる工夫が満載だ。私の人生に豊かさの礎を築いてくれた義塾、そして管理工学には感謝の念で一杯だ。劣等生でもそれを実感できるのが慶應義塾の懐の深さだ。深謝。