研究テーマ
森 樹大
東アジアにおけるブラックカーボンの長期変動と気候への影響
ブラックカーボン(BC)は大きな正の放射強制力を持つ。BC排出量が世界最大である東アジアはBCの発生源として最も重要な地域である。これまで22°Nの台湾から44°Nに位置する北海道までの5つの観測所で長期にわたりBC濃度を高精度で観測してきた。本研究ではこれまで得たデータを解析し、BCの空間分布と時間変動を明らかにする。また解析されたデータを地球システムモデル(MRI-ESM2)と比較しモデルの精度を評価する。精度評価されたモデルを用いて、アジアにおけるBCの時空間変動の要因を解明する。またBCの放射効果・気候影響とその時間的推移を明らかにする。
北極圏における長期BC観測によるトレンドおよび森林火災イベントの特徴
ブラックカーボン(BC)は大きな正の放射強制力を持つ。近年の地球温暖化により、北極圏における森林火災が増加することが知られている。BCは森林火災から排出される重要な微粒子であるため、森林火災の増加に伴い、BC粒子濃度の増加が温暖化を促進する可能性がある。我々はこれまで、北極圏に位置する5地点の観測所でBC質量濃度を高精度・高時間分解能で計測を行ってきた。そのBC質量濃度の年々変動が人為起源もしくは森林火災由来による影響かどうかを定量的に理解することを目的とする。
富士山頂における帯電粒子の挙動解明
大気エアロゾルは太陽放射の散乱および吸収を通じて地球の放射収支に影響する。粒子の帯電状態は雲粒や雨滴への取り込み効率を変化させ、粒子数濃度に影響を与える重要なパラメータである。そこで本研究では、自由対流圏に位置することの多い富士山頂で夏期に帯電粒子数濃度を連続観測し、大気電場および大気電気伝導率との関係を解析することで、帯電粒子の挙動およびエアロゾル除去過程に及ぼす影響を解明し、粒子数濃度予測の高度化を目指す。
能登における帯電粒子の挙動の解明
エアロゾル粒子とイオンが衝突して生成する帯電粒子は生体内に沈着しやすく、ぜん息などを引き起こすことが報告されている。特に発雷時は、環境大気中の大気電場と大気電気伝導率が大きく変化するため、イオンがエアロゾル粒子に多く衝突する。近年、申請者はサブミクロン領域における帯電粒子の数濃度と帯電分布を高い時間分解能で計測する手法を確立した。しかしながら、発雷頻度の高い能登大気観測ステーションにおいて、大気電場とイオン濃度の急激な変化に応答する帯電粒子の挙動を明らかにした例はない。そこで本研究では、大気電場と大気電気伝導率、帯電粒子の数濃度を高い時間分解能を持つ装置で観測し、発雷時における帯電粒子の挙動を明らかにする。本研究の遂行により、数値モデルで推算される「環境大気中の帯電粒子の個数濃度」や「生体内に沈着する帯電粒子の数」の予測性能が大きく向上すると期待される。