慶應義塾

カーボンナノチューブ内の液体が示す特異な熱の伝わり方を解明

-ナノチューブの太さによって変わる熱伝導率と液体構造・壁面摩擦の関係-

公開日:2026.11.05
広報室

国立大学法人 京都工芸繊維大学

慶應義塾大学

久本 健太(京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科 博士前期課程 機械物理学専攻)(研究当時)

小林 祐生(京都工芸繊維大学 機械工学系 助教)

池田 高浩(京都工芸繊維大学 未来デザイン・工学機構 特任助手)

山本 詠士(慶應義塾大学 理工学部 准教授)

山川 勝史(京都工芸繊維大学 機械工学系 教授)

【発表のポイント】

  • カーボンナノチューブ内の液体アルゴンで、熱伝導率(熱の伝わりやすさ)が管の長さとともに増す条件と、その増加が抑えられる条件をシミュレーションで明らかにしました。

  • 原子が一列状や一層の筒状に並ぶ細い管では、調べた範囲で熱伝導率の増加が続く一方、複数の列や層が共存する太い管では、その増加が大きく抑制されました。また、太い管では、原子の集団運動の特徴が変化し、壁との摩擦も大きくなることがわかりました。

  • 本成果は、ナノスケールの流路内の熱の流れを見積もるための基礎となります。将来、流路の寸法や壁面の性質を考慮した熱設計に役立つことが期待されます。

京都工芸繊維大学の久本健太 博士前期課程学生(大学院工芸科学研究科機械物理学専攻)、機械工学系 小林祐生 助教、山川勝史 教授、未来デザイン・工学機構 池田高浩 特任助手、慶應義塾大学の理工学部 山本詠士 准教授らの研究グループは、カーボンナノチューブの内部に閉じ込められた液体アルゴンについて、管の太さによって熱の伝わり方が大きく異なることを、分子動力学シミュレーションにより明らかにしました。具体的には、細い管では管が長くなるほど熱伝導率が増加する一方、太い管ではその増加が大きく抑えられることを確認しました。さらに、これらの熱の伝わり方の違いと原子の並び方や壁との摩擦との関係を示しました。

熱伝導率は通常、試料の長さによらない物質固有の値として扱われます。しかし、原子や分子の動きが一方向に制限されるような極めて細い管の中では、管が長くなるほど熱伝導率が増す場合があります。この増加が続く条件や抑えられる条件、また液体の構造や壁との摩擦がどう関わるのかは、十分に明らかになっていませんでした。

本研究では、管の太さによって内部のアルゴン原子の並び方が変化することに着目しました。アルゴン原子が一列または一層の筒状に並ぶ細い管では、調べた範囲で管が長くなるほど熱伝導率が増加しました。一方、アルゴン原子が複数の列や層を形成する太い管では、この増加が大きく抑えられました。さらに、こうした違いには、原子の集団運動や管の壁面との摩擦が関係していることを示しました。

これらの結果は、ナノスケールの流路における熱輸送現象の理解を深め、熱伝導率を正確に予測・評価するための新たな知見となることが期待されます。本研究成果は、2026年11月4日付で英国王立化学会の学術誌『Nanoscale』にオンライン掲載されました。

プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。

プレスリリース(PDF)