慶應義塾

皮膚は空気の「乾燥」を感じて応答する

-表皮のセンサー分子TRPV4が低湿度への細胞応答の鍵となることを解明-

公開日:2026.09.29
広報室

慶應義塾大学医学部

慶應義塾大学医学部薬理学教室の田中愛美研究員、竹馬真理子准教授と、台湾・国立清華大学の竹馬俊介准教授らの研究グループは、皮膚が低湿度環境に応答する仕組みを明らかにしました。カルシウムを透過するチャネルTRPV4(トリップブイフォー)が、この応答を仲介する重要な分子であることを、ヒト3D皮膚モデルとマウスを用いて示しました。

私たちの皮膚は、常に温度や湿度の変化にさらされています。低湿度は皮膚の乾燥や痒みを引き起こし、乾皮症やアトピー性皮膚炎などとの関連も知られています。しかし、皮膚の細胞が空気の乾燥(低湿度)をどのように感知し応答するのか、その仕組みは十分に分かっていませんでした。

本研究では、ヒトの皮膚に近い構造を持つ3D皮膚モデルを低湿度環境に置くと、皮膚内部から外界へ向かう水分移動が急速に増加し、この水分移動に伴って、表皮細胞のTRPV4が働き、細胞内のカルシウム濃度が上昇することを見出しました。続いてMAPKと呼ばれる細胞内シグナルが活性化し、細胞接着や炎症など、皮膚の恒常性に関わる遺伝子の発現が変動しました。TRPV4を阻害すると、これらの応答は大きく抑制されました。さらに、表皮細胞でTrpv4を欠損させたマウスでも、低湿度によって起こる細胞内シグナルの活性化や遺伝子発現の変化が顕著に減弱しました。

これらの結果から、低湿度は単に皮膚から水分を奪い乾燥させるだけではなく、表皮細胞に一連の細胞応答を引き起こす環境ストレスであることが示されました。またTRPV4は、この低湿度に対する表皮細胞の応答を媒介する重要な分子であることが明らかになりました。本成果は、乾燥環境によって生じる皮膚トラブルや皮膚疾患の理解を深め、新たな予防法・治療法の開発につながる手がかりになることが期待されます。本研究成果は、2026年9月16日(米国東部時間)に米国科学アカデミー紀要Proceedings of the National Academy of Sciences, PNASに掲載されました。

プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。

プレスリリース(PDF)