2025/07/09
国立研究開発法人国立がん研究センター
慶應義塾大学医学部
他
【発表のポイント】
日本人の肺腺がん1,773症例で全ゲノム・全エクソームシークエンス解析を行い、若年発症例(40歳以下)での特徴を調べました。
解析の結果、若年発症例では非若年発症例と比較してBRCA2やTP53遺伝子の生殖細胞系列病的バリアント(生まれつき持っている遺伝子の変化)の頻度が高いことが明らかとなりました。
BRCA2遺伝子の病的バリアントを有する症例の腫瘍では、切断されたDNA鎖を正確に修復するための相同組み換え修復機構が破綻しており、既存の分子標的薬(PARP阻害剤) が有効である可能性が示唆されました。
また、ALKBH2遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントが、若年発症肺腺がん症例の新たなリスク因子として同定されました。
今後、遺伝性腫瘍の患者さんが抱える課題等を共有し、遺伝医学の知見を踏まえた新しいがん医療を築く必要性が、本研究により示されました。
国立研究開発法人国立がん研究センター(東京都中央区、理事長:間野博行)、研究所 ゲノム生物学研究分野 白石航也ユニット長、河野隆志分野長、張萌琳外来研究員らは、全国8施設からなる研究コンソーシアムを構築し、日本人の肺腺がんについて大規模に解析し、若年(40歳以下)で発症する肺腺がんの原因を調べました。
本研究において肺腺がんの若年発症例と非若年発症例を比較した結果、若年発症例ではTP53遺伝子、BRCA2遺伝子に生まれつき変異している生殖細胞系列病的バリアントが多くみられることが明らかとなりました。また、BRCA2遺伝子のバリアントを有する肺腺がん症例では、乳がんや卵巣がんなどでみられる相同組み換え修復機構が破綻している特徴が観察されました。これにより、既存の分子標的薬(PARP阻害剤) が有効である可能性が示唆されました。さらに、DNA修復に関わるALKBH2遺伝子の生殖細胞系列病的バリアントが、若年発症肺腺がんの原因の一部となることが示唆されました。
40歳以下で発症する肺腺がんは、進行期で発見される場合が多く、予後も不良であることが知られています。今後、遺伝性腫瘍の患者さんが抱える課題等を共有し、遺伝医学の知見を踏まえた新しいがん医療を築く必要性が、本研究により示されました。
本研究成果は、2025年6月15日(米国東部時間)付で、国際学術誌「Journal of Thoracic Oncology」にオンライン掲載されました。
プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。