慶應義塾

ヒトiPS細胞由来内耳オルガノイドを用いた薬剤性難聴の治療法開発-高効率な培養法と、世界初の蝸牛神経節細胞様細胞による薬効評価系を確立-

公開日:2022.03.09
広報室

2022/03/09

東京慈恵会医科大学

慶應義塾大学医学部

東京慈恵会医科大学再生医学研究部 岡野James洋尚教授、耳鼻咽喉科学講座 小島博己教授、栗原渉助教、神経科学研究部 加藤総夫教授、北里大学医学部 分子遺伝学 主任教授 藤岡正人(研究当時: 慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室 専任講師)の研究グループは、ヒトiPS細胞から内耳オルガノイド(人工臓器)を培養する新規手法を開発し、薬剤性難聴の治療候補薬の薬効評価に活用できることを示しました。本研究ではヒトiPS細胞から内耳組織を培養するための各ステップを最適化することで高効率での分化誘導に成功しました。また、培養した蝸牛神経節細胞様細胞を世界で初めて薬物効果の評価に活用し、病態モデルとしての評価系を確立しました。

本研究の成果は、難聴の病態解明や治療法開発につながることが期待されます。

難聴の多くを占める感音難聴は内耳有毛細胞と蝸牛神経の障害に起因することが知られています。しかし、ヒトの内耳組織は患者さんから直接採取することは困難であり、このことが詳細な病態解析や治療法開発を行う上での大きなハードルになっています。こうした問題に対応するため、本研究ではヒトiPS細胞由来の内耳組織を培養皿上で作製し研究に活用することを試みました。

  • ヒトiPS細胞から蝸牛神経節細胞様細胞と有毛細胞様細胞を含む内耳オルガノイドを高効率で培養する方法を確立しました。

  • 培養した蝸牛神経節細胞様細胞は生体内の蝸牛神経節細胞と非常に良く似た分子発現・電気生理学的特性・細胞形態を有していることが分かりました。

  • 世界で初めてヒト細胞由来の蝸牛神経節細胞様細胞を用いて薬物の効果を評価し、評価系を確立しました。

  • シスプラチン(抗がん剤)による神経細胞障害作用がCDK2阻害剤の投与によって緩和されることが判明し、シスプラチンの副作用による難聴の治療法につながる可能性が示唆されました。

本研究の成果は3月7日にSTEM CELLS Translational Medicine誌に掲載されました。

また、本研究はJSPS 科研費 JP20K20409、JP21H04839、東京慈恵会医科大学萌芽的共同研究推進費の助成を受けたものです。

プレスリリース全文は、以下をご覧下さい。

プレスリリース(PDF)