登場者プロフィール
狩俣 太雅(カリマタ タイガ)
薬学部薬学研究科 2025年 薬科学専攻 後期博士課程修了2026年3月現在
狩俣 太雅(カリマタ タイガ)
薬学部薬学研究科 2025年 薬科学専攻 後期博士課程修了2026年3月現在
研究を前に進める力として、特許が秘める可能性。 弁理士として、日本の研究力の正当な評価に貢献したい。
私が卒業後の仕事として弁理士を選んだ最大の理由は、研究活動において資金調達がいかに大事かを痛感したことです。日々、研究に没頭する中で「もっと資金があれば、この研究をスムーズに進められるのに」と感じる場面が何度もありました。研究費を工面する手段はいくつかありますが、その中でも特許は、技術を社会に還元し、対価を得て次の研究へとつなげる重要な役割があり、もっとスポットライトが当たってもいいと思っています。
特許という法律と、自分の専門である研究・技術が交差する業界に興味がわき、独学で勉強を始めたのですが、その奥深さに魅了され、ついには自分の仕事となりました。今年(2026年4月)から弁理士として登録される予定です。現在、日本の特許ライセンス収入は米国に比べてまだまだ低く、日本の優れた技術には活用できる余地があると感じています。私は薬学のバックグラウンドを持つ弁理士として、ルールに基づき厳密に権利を守りながら、日本の研究力が正当に評価される社会の実現に貢献していきたいと考えています。
祖母の他界をきっかけに志した薬学の道。 有機化学のおもしろさを知り、新しい分子をデザインする世界へ。
私が薬学の世界を志したのは、高校1年生の時に祖母を亡くしたことがきっかけでした。その際の薬の飲み合わせや処方のあり方を通じて、薬を正しく使うこと、そして新しい薬を創ることの重要性を感じ、その研究に携わりたいと思って、高校2年生の時に薬学部受験を決めました。入学当初は創薬の研究職に就くことを想定していましたが、学部時代の授業で有機化学のおもしろさに目覚めたことが、ひとつの分岐点になりました。
修士2年から所属した熊谷直哉先生の「分子創成化学講座」は有機化学への興味を引き継ぎながら、「新しい物質を創り出し、それがどう変化していくかを探る」という、より自由で広がりのある基礎研究に重点を置いていました。自分の資質として、ひとつの要素に集中するよりも、いろいろな要素に興味が分散していくところがあるようで、私は「分子創成化学講座」が合っていました。
自ら見つけ出したテーマで、自由に試行錯誤させてもらえる環境。 研究の成果に対する国内外の学会での評価は、大きな自信に。
研究は、1つの疑問を解決すると10の課題が出てくるような終わりのない作業だと思いますが、自分の立てた仮説がデータによって証明された瞬間の感動は、何物にも代えがたいものです。当時の私の研究テーマは、TriQuinoline(TQ)誘導体という新しい分子を用いた、DNAの特殊構造(G4)に作用するリガンドの創製でした。このテーマは自分自身で見つけ出したもので、自由に試行錯誤させてもらった成果として日本薬学会第144年会で「学生優秀発表賞・口頭発表」を受賞できたことは、大きな自信につながりました。
また、博士課程3年次には、佐藤製薬株式会社の学会支援金をいただき、ポルトガルで開催された国際学会に参加することができました。歴史的な円安の時期で物価も高く大変でしたが、単身で現地に赴き、世界中の研究者と議論を交わした経験は一生の宝物です。
大切なのは、自分の「好き」を見つけて、追究すること。 「役立つかどうか」にとらわれず、好奇心のままに勉強を。
受験生や後輩の皆さんには、ぜひ「自分の好きなこと」を見つけて勉強してほしいと思います。サイエンスの世界における重要な発見の多くは、研究者の「どうしてこうなるのだろう?」という純粋な知的好奇心や試行錯誤による偶然から生まれています。私が今、携わっている特許の世界でも、何に役立つのか一見するとわからないようなアイデアが、後に世界を変える発明になることだって少なくありません。
効率性や強迫観念にとらわれた勉強は、なかなか実を結ばないと思います。もちろん、受験には合格点を取るという制約はありますが、合格した先にある大学生活では、ぜひ自分の興味を突き詰めてください。薬学の世界で培われる客観的な視点や論理的思考は、私のように法律の世界へ進む場合でも、間違いなく強力な武器になります。まずは自分の「好き」を追究して、あまり決め込まずに広い視野で将来を眺めることが大切だと思います。