慶應義塾

グリーン社会ICTライフインフラ研究センター

公開日:2025.06.30
KGRI

センター長 : 植原 啓介(環境情報学部准教授)

活動拠点キャンパス : 新川崎

センター概要

緩和策だけでは対応しきれない気候変動の悪影響に備える適応策が重要との認識が、近年高まってきた。本研究は、気候変動の影響のうち、特に自治体レベルにおける、エネルギーや様々な生活分野での適用策を策定することを目的とする。気候変動の予測には不確実性があるため、発生する影響の生活分野における、継続的モニタリングとエネルギーマネジメントが必要である。本課題で実証実験を行う二つの自治体(東京都奥多摩市、宮城県栗原市)は、どちらも高齢化の進んだ典型的な過疎地であるが、異なる地域特性を持っている。メッシュデータを用いて気候変動の自治体への影響を推定し、地域の脆弱性分析を行う。先端技術を組み合わせた「グリーン社会ICTライフインフラ」のプロトタイプを開発し、家庭のエネルギー消費・供給の情報を測定し最適化する。同時に、健康・医療や農業への悪影響等の生活情報を測定・分析し、地域の脆弱性に対応する適応策を策定し、その効果を実証する。本事業では、ソーシャルキャピタルを高めることで適応策の実効性を高め、resilientな社会を形成するという社会システム改革を実施する。提案される適応方策が全国に普及し、大きな緩和効果がもたらされるためには、いくつかの制度的隘路が解消される必要がある。本研究における理論面での研究と実証研究、また、それらを踏まえて、実現に向けた提案を行う。そのために、本センターを設置し、研究活動を行う。

キーワード・主な研究テーマ

グリーン社会 ライフインフラ エネルギーマネジメントシステム(EMS) 健康・医療 遠隔医療 農業 災害対応 ソーシャルキャピタル 社会システム改革

2014年度 事業計画

■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標

本センターは、科学技術戦略推進費による事業として2010年度から5年間の研究期間が文部科学省の中間評価を受け決定した。したがって、本センターの活動は、文科省に提出した申請書の活動計画に沿って5年間の継続活動を行なっている。

特に、気候変動予測のダウンスケーリングデータの取得と分析、地域のEMS(エネルギーマネジメントシステム)の構築、高齢者の調査、健康・医療や農業といった生活情報のモニタリング、それに、それらの情報を統合する「ICTライフインフラ」の構築と自治体レベルでの適応策の形成は、ソーシャルキャピタルの考え方に基づいたレジリアントな社会の構築を目標にした、互いに連関する一連の研究活動を形成している。

■2014年度の新規活動目標と内容、実施の背景

  • 2013年度に新たに設置した、自治体情報研究グループにおいて、グリーン社会ICTライフインフラを用いた自治体における政策・計画・施策等の形成や評価のあり方を示し、新しい自治体経営の計画や政策形成の方向を示す。

  • 気候変動グループは、5kmダウンスケールデータを用いて、気候温暖化予測結果を自治体の既存データベースシステムに統合する。そのことで、温暖化適応策の立案への活用するアプローチを試みる。

  • エネルギーマネージメントシステムグループは、主要な実証実験フィールドである宮城県栗原市において、十数カ所の実際の家庭にHEMS(Home Energy Managemant System)の構築し、住民レベルのEMS実験を行う。

  • 健康・医療グループは、引き続き栗原市、奥多摩町の高齢者を対象に遠隔医療などの実証実験を行う。また、健康状態と地域のソーシャルキャピタルに関する悉皆調査結果を基に、各地区の特性を踏まえ、気候変動に伴う健康状態の変化に適応するための地域づくりプログラムを開発する。

  • 農業グループは、気候の変化が農業に与える影響の測定を踏まえた地域農業に関する脆弱性への対応と適応するため、これらを見据えた営農や地域開発を支援するプラットフォームの検討・開発を行う。

  • 情報通信システムグループは、気候変動、エネルギー、健康医療、農業などのデータ、また、自治体の各種計画のデータを統合するライフインフラの第三次モデル(プロトタイプ)構築を目指す。

  • 社会システム改革については、引き続き社会実証戦略委員会と連動して、必要な規制緩和に向けた提案を行う。

2013年度 事業報告

■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

  • 気候変動の影響/自治体レベルのメッシュデータについては、気象庁/気象研究所から提供された気候変動5kmメッシュデータを自治体レベルのデータ生成を行うシステムを構築し、また、自治体職員が自らデータを獲得し分析できるシステムを構築し、一部、公開した。

  • エネルギーマネジメントシステムの開発・運用については、栗原市において前年度までに構築されたEMSシステム構築をさらに詳細なものとし、宿泊設備、教育施設などへのセンサやシステムの導入を行なった。また、家庭におけるセンサーによるHEMST(Home Energy Managment System)を構築し、十数カ所の実際の家庭で利用していただき、一般市民の行動とエネルギーの関係、また、ソーシャルキャピタルとの関連を調べる実証を開始した。

  • 健康・医療/ソーシャルキャピタルについては、高齢者を対象に実施した健康状態と地域のソーシャルキャピタルに関する二回目の悉皆調査を実施した。分析は一部、来年度に行う。各地区の特性を踏まえた「サロン活動」を開始したが、健康改善効果が大きいことから他地域にも広げる事にした。

  • 農業については、平成24年度に栽培を始めたいちごの新品種について、他地域のデータとの比較等を含めて試験栽培状況を分析し、気候の変化が与える影響測定を行い、脆弱性モデルへの対応方策、そして構築中のICTプラットフォームの有効性検証を進めた。

  • 情報通信システムについては、「ICTライフインフラ」二次モデルとして、複数分野にわたるセンサデータ等がそれぞれの分野で蓄積されているデータベースを基盤とし、それらのデータを統一的なインターフェースで統合的に扱い、分析するモデルのプロトタイプを実現し、それを活用した典型的なアプリケーションを開発した。今年度から加わった「自治体情報グループ」では、自治体の諸計画などの情報を気候変動、EMS、健康医療、農業などの情報と統合する準備を実施した。

  • 研究グループ共通課題/社会システム改革については、社会実証戦略委員会と連動して、必要な規制緩和に向けた提案を行なった。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

  1. 公刊論文数:12件 Journal of Social Entrepreneurship IEEJ Transactions on Electronic Engineering IAEG 50th Anniversary -The IAEG XII Congress 2014 電子情報通信学会論文誌、週刊農林

  2. 学会発表件数:国内14件・国際13件 第72回日本公衆衛生学会総会 2013 RESEARCH COLLOQUIUM ON SOCIAL ENTREPRENEURSHIP The 2013 International Conference on Internet Computing and Big Data 第21回環境自治体会議ひおき会議 International Conference on Regional Climate - CORDEX 2013 ほか

  3. イベントなど社会貢献の実績 2013年/並列/分散/協調処理に関する『北九州』サマー・ワークショップ(SWoPP北九州2013)、座長、2013年7月30日~8月1日、北九州国際会議場/イノベーションワークショップ2013、講師、2013年11月14日、フューチャーアーキテクト株式会社(東京都品川区)/『いばらきの地域資源とサステイナビリティ』講演、2013年 11月19日、水戸京成ホテル/ORF2013、セッション企画及びブース展示、2013年11月22・23日、東京ミッドタウン/自治会活動事例発表会審査委員、2014年1月26日、宮城県栗原市/東京都福祉保健局医療政策部 医療情報におけるICT活用の勉強会、講演、2013年12月16日、東京都庁/ほか計20件

■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄

気象庁気象研究所の協力を得て気候変動の5kmメッシュデータを利用できることになった。そのデータを基にして本プロジェクトのフィールドワークの拠点である宮城県栗原市と東京都奥多摩町の地域別の気候変動予測データを生成し、自治体としての政策に結びつける事を可能にするシステムを開発し、一部、公開した。このような分析を自治体レベルでシステマティックに行う事は、日本で初めてのことである。また、東日本大震災時には、岩手宮城内陸地震の教訓から宮城県栗原市と共同開発してきた衛星通信を用いた被災者支援・災害対応システムを数十カ所の避難所や自治体災害対策本部に提供し、基本的に情報伝達を可能にしたことで各地で感謝された。

プロジェクトメンバー

研究代表者

武林亨

教授衛生学公衆衛生学

小川克彦

教授環境情報学部 専門

村井純

教授環境情報学部 一般