センター概要
量子ソフトウェアとHPC・シミュレーション技術の融合により、サスティナブルなAI技術を開拓する。具体的には、少数データに対する量子機械学習手法と多体問題量子シミュレーション手法を開発し、量子古典融合表現形式と量子最適化技術を駆使することで、量子機械学習・量子シミュレーション・量子デバイスを結合した量子AI技術を創出する。さらに、量子オフローディングや量子AIエッジコンピューティングのための量子HPC基盤を構築・展開する。量子AI技術を社会経済システムに組み込み、量子技術を活用した新産業やスタートアップ企業の創出を通じて国際競争力を高め、量子AIに支えられ生産性革命や新産業創出が持続する社会の実現を目指す。
2026年度事業計画
■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標
1.量子データを効率的に量子回路に埋め込み、解析する手法を開発する。開発した手法を応用し、与えられた量子データの入出力集合を(近似的に)再現し、新たな量子データを生成するモデルの構築を目指す。
2.Physical AIの領域も含めて、量子最適化アルゴリズムや量子・古典ハイブリッド手法を開発する。
3.高速量子シミュレータや量子回路生成ツールの性能評価を進める。
4.量子誤り訂正の実時間化に向けて、FPGA・クラスタ実験環境を活用して理論から実装までを一体で推進する。
■2026年度の新規活動目標と内容、実施の背景
機械学習を始めとして、シミュレーション、最適化等を含む総合的な情報処理技術としての「AI」の活用が今後ますます不可欠となってくる。しかしながら、AI技術の持続性や普及・利活用には克服すべき課題が数多く残っており、量子ソフトウェアや量子シミュレーション技術に基づく量子AIの開発を避けて通ることはできない。上記の事業計画項目はこの思想に則るものである。
2025年度事業報告
■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度
1.量子データに対する生成モデルを、その訓練法も含めて一般的な量子状態変換則で記述し、量子生成モデルの訓練に要する計算複雑性を見積もり、量子生成モデルとして扱うべき適切なクラスの特定を行った。
2.テンソルネットワークと量子回路により励起状態や励起スペクトルを計算するためのアルゴリズム開発し実装を行った。有限温度や散逸・量子測定の効果、量子もつれを評価するための方法の開発や、実装のための量子誤り抑制との融合を行った。また、量子デバイスで実現しやすい実時間発展に基づいた量子多体系のグリーン関数計算手法を開発し、古典計算機上で手法の検証を行った。量子機械学習による異常検知や連続量光量子技術を用いた暗号通信へのテンソルネットワークの応用手法の研究と実証環境の構築を進めた。量子回路のシミュレーションに向けて、非一様なテンソルネットワークの近似縮約計算手法の研究開発を進めた。
3.最適化問題の数理構造、特に制約条件の構造に適合するゲート型量子コンピュータ・量子アニーリングマシン・イジングマシンなどのアルゴリズム構築を実施し、大規模最適化問題に対する古典・量子ハイブリッドアルゴリズムの構築を行った。さらに、2024年度までに実施してきた研究の知見をもとに、イジングマシンと機械学習のハイブリッド計算によるブラックボックス最適化手法の高度化を進め、適用範囲のさらなる拡大を進めた。
4.量子古典結合の最適化のため、状態ベクトル方式量子ゲートシミュレーションをSATAディスク直結型FPGAボード上に実装し、対象量子ビット間のカスケード実行、状態情報の圧縮など高速化技術の確立に取り組んだ。さらに、引き続きHPC環境での量子ゲートシミュレータの性能評価を行うほか、様々な評価やAIモデル構築の際の学習データとして用いることのできるパラメタライズ可能な量子回路生成ツールを開発した。
■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)
・公刊論文数15件(主たる公刊誌:Quantum, IEEE Access, Physical Review Research)
・学会発表件数80件(国内40件、国際40件)
・イベントなど社会貢献の実績
第3回 K2オープンセミナー、2025年11月27日、AIRBIC(KBIC かわさき新産業創造センター)1F 会議室 など
■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄
イジングマシンと機械学習を組み合わせたブラックボックス最適化手法SWIFT-FMQAの提案。データ学習方法に工夫を施すことにより、ブラックボックス最適化の性能を向上させる方法を提案した。
2024年度事業報告
■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度
2024年度の計画で挙げていた5点について、実施状況を以下に示す。
ハミルトニアンシミュレーションに基づく量子選択配置相互作用の提案。ハートリー・フォック近似が基底状態として良好な結果を与える分子だけでなく、多配置混成特性を持つ強相関系にも適用できることを明らかにした。
量子CAEの基礎となる手法の提案。計算工学におけるトポロジー最適化をイジングマシンで行う手法を検討した。
数理最適化手法とイジングマシンを組み合わせた手法の提案。列生成法の計算フローの一部にイジングマシンを用いることで、イジングマシン単体では解くことが難しい最適化問題を解くことが可能になることを示唆する結果を得た。
量子アニーリングマシンにおける変数固定効果の物理特性の明確化。大規模な問題を量子アニーリングマシンで解く際に行う変数固定が、最適化性能に及ぼす影響を物理学的観点から考察した。
■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)
公刊論文数9件(主たる公刊誌:IEEE Access, Physical Review A)
学会発表件数50件(国内30件、国際20件)
イベントなど社会貢献の実績
第2回経営者・リーダー向け量子コンピューティングセミナー 量子最適化について、2024年10月4日、新川崎・創造のもり
■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄
数理最適化手法とイジングマシンを組み合わせた手法の提案。列生成法の計算フローの一部にイジングマシンを用いることで、イジングマシン単体では解くことが難しい最適化問題を解くことが可能になることを示唆する結果を得た。
設置期間
2024年4月1日~2029年3月31日
