慶應義塾

ヘルスコモンズセンター

公開日:2026.06.01
KGRI

センター概要

「ヘルスコモンズセンター」は、ウィズ・ポストコロナ時代を見据えつつSDGsに基づく未来のあるべき社会像(ビジョン)を共有し、その実現に向け学内外のアカデミア間の文理横断的研究連携、産学連携による企業・金融機関などとのイノベーション誘発、自治体との地域課題解決に向けた連携、NPOや市民団体との連携等、多様なステークホルダーとともにビジョン達成に向けた共同研究体制を構築し、産学官民による共創の場として機能する。

ビジョンからバックキャストによる課題の抽出、研究開発目標の設定と実施、研究成果の社会実装による社会システムの変革をセレンディピティとイノベーションを誘発しつつ実現していくことを目指す。具体的には、人々の暮らしや健康を支えるデジタル技術(ヘルスケア・医療・介護データ等)、テクノロジーにサイエンスが融合する「サイエンスナレッジ・データ基盤」を整備し、その利活用による異分野融合研究と、創出された新技術の社会実装を通じ、誰もが参加し繋がることでウェルビーイングを実現する都市型ヘルスコモンズ共創拠点の構築に取り組む。

2026年度事業計画

■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標

本事業はJSTのCOI-NEXT事業として10年間の事業期間をもって推進される。本事業ではセンター運営会議(議長:伊藤公平塾長)による全体計画・年度計画に関する審議を経てJSTの承認を得て進められている。2026年度もこの計画に沿ってセンター活動が推進される。センターの目標は「誰もが参加し繋がることでウェルビーイングを実現する都市型ヘルスコモンズ共創拠点」というビジョンの達成である。

■2026年度の新規活動目標と内容、実施の背景

2026年度においても、COI-NEXT事業における全体計画書・年度計画書に基づき、センター運営会議のもとで適切に実施される。特にバックキャストに基づくプロジェクト運営の仕組みを充実させるとともに、民間からの資金呼び込みに資することを目的として、情報連携実装基盤(商用SKDP等)の開発に着手する。また、拠点ビジョンの実現に向けて、後病の方のニーズに即した ”寄り添う“ サービスの創出につながる研究の促進を目的として整備されているショーケースの運用を拡大させる。

2025年度事業報告

■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

【活動計画】

1.ウェルビーイングな生活環境と社会システムデザインの構築

2027年までに研究開発課題を社会実装する上での政策課題解決を支援する体制として「サービスデザインユニット」「政策・合意形成ユニット」を発足し、現状の診療報酬制度では保険収載対象として想定されていない場合には、将来的な公的保険対象化への具体的な道筋を提言するとともに、民間保険の活用について研究開発課題を支援し、参画機関を含む民間企業における事業化を促進する。

2.ウェルビーイングを共創する技術基盤プラットフォームの構築

「データサイエンス・AI技術基盤ユニット」、「センサ・アクチュエータ技術基盤ユニット」、「リハビリテーション技術基盤ユニット」、「研究用SKDP技術基盤ユニット」を発足し、各研究テーマが社会実装する上での技術的な課題解決の支援を開始するとともに、大学病院と地域を接続する情報連携実装基盤(商用SKDP等)の整備を進める。実証フィールドを活用したPoC取得を概ね2027年までに行い、2028-2030年にリアルワールドでのケアを開始すべく推進する。

3.一人ひとりに寄り添うメディカル・ヘルスケア・介護の実現

健康寿命延伸の観点から、発病後の余命が長く生涯を通して付き合っていく必要のある疾患や、後遺症等の影響が大きく医療・介護従事者等が寄り添っていく必要が大きい疾患として認知症、うつ病、脳卒中、心不全の後病者を主な対象として、さらに腎臓の老化に着目した代謝性疾患テーマなどについて、HCCPを活用して、医療情報に基づくリスクの層別化と日常生活における個々の状態が定量化されたデータを融合することにより、リスクに応じた個別化サービスのためのアルゴリズム開発を行う。2027年度までに実証フィールドにおいて連携企業とともに社会実証を行い、連携企業または医療機関による社会実装を目指す。

4.産学共創システムの構築

慶應義塾大学において本センターを中核として首都圏のアカデミア2機関、企業、自治体から市民までを巻き込んだ産学官民共創システムを設立・運営し発展させ、大学を起点とした知の好循環、資金の好循環、人材の好循環を実現するため、アカデミアの知に基づく未来社会のデザインとバックキャストによる社会価値創造を進める。また本センターの取り組みを社会システムとして持続可能な仕組み・組織として構築する。

【成果】

1.「サービスデザインユニット」により世田谷区に「ヘルスケアコモンズ・リビングラボ」を開設、地域のリビングラボとの連携を進める。

2.研究用SKDPならびに情報連携実装基盤(商用SKDP等)の一部としてリハビリテーション基盤の稼働を2025年度に開始した。

3.企業6社、SU1社と共同研究を実施中である。さらに企業2社と研究成果の社会実装に向けた共同研究を検討中である。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

論文数:公刊論文数 4件(『Richness of emotion in people with dementia. Biosystems』『Development and Evaluation of a System to Propagate Micro-Happiness among People with Dementia』『Patient-centered medical tools for sustained motivation in cardiac rehabilitation of patients with heart failure: protocol of a multicenter randomized controlled trial (EXERCISE-HF trial)』、『Electronic Patient-Reported Outcome System Implementation in Outpatient Cardiovascular Care: A Randomized Clinical Trial』)

学会発表数:招待講演 11件(国内 9件・国際 2件)、口頭発表 16件(国内 11件・国際 5件)

イベント等の実績

2026/1/14 「2025年度健康医療AIデザインプログラム(MAP)説明会」、慶應義塾大学信濃町キャンパス、参加約50名

2026/2/3-4「MAPワークショップ」、オンライン、参加30名(見込)

2026/2/7、14、21 「MAPハッカソン」、慶應義塾大学信濃町キャンパス、参加30名(見込)

■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄

センターは研究開発課題3・4・5・6・8と拠点横断型研究支援機能組織(ユニット)および産学連携・社会連携を進めるマネジメント部門で構成されている。2025年度の成果は以下のとおり。

[マネジメント部門] 事業で求められるバックキャストの仕組みを用いて拠点の"Theory of Change"を作成し、拠点運営の指針、研究テーマの管理、新規課題のアイデア創出等を行った。

[ユニット]研究用SKDPおよび情報連携実装基盤(商用SKDP等)の一部としてリハビリテーション基盤の稼働を開始した。

[研究開発課題3] ウェアラブルデバイスを用いた研究において、共同研究機関が提供するシステムを活用してデータを順調に蓄積。同社が検討するビジネス構想により、健康経営を目指す企業の産業保健フィールドを目指すためのPoC取得が2027年までに実施される予定である。

[研究開発課題4] 移動・買い物領域では協力研究機関2社との共同研究契約を締結し、ドライビングシミュレーター、ドライブレコーダー、実車運転による運転評価のデータを順調に蓄積。データ解析に着手するとともに、共同研究機関と、社会実装に向けた事業化モデルについて協議を進めている。

[研究開発課題5] ウェアラブルデバイスにより脳卒中の後病を見守る臨床研究の倫理申請を行い承認を得た。あわせて病院データ、植え込み式心臓電子機器データ、ヘルスケアデータの3つのデータを統合するデータプラットフォームとして、研究用SKDPでの解析環境の整備を行った。

[研究開発課題6] 「質の高い永続的な包括的心臓リハビリテーションが可能なシステムの構築」の一環として薬事申請を行った汗乳酸センサについて、2025年12月に医療機器製造販売が承認された。また、運動支援アプリの医師主導治験、患者自身の目標(なりたい姿)を表出するシステム完成を目的とした治験、参画機関が独自に開発した歩行解析システムでの心不全患者の歩行解析研究、HERとPHRデータを連携した数千人規模のデータ収集の基盤構築を実施した。

[研究開発課題8]拡張知能医学技術および老化評価技術を融合し、老化状態予測アルゴリズムの構築が可能な基盤の整備を完了した。

2024年度事業報告

■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

活動計画

ウェルビーイングな生活環境と社会システムデザインの構築

今後の研究開発動向とその制度的課題を見つつ、公的・民間保険のバランスを考慮しながら、予防(再発・重症化・介護)と後病ケアを公的保険に収載するためのパスを検討し、Health Commons Co-creation Platform(HCCP)の社会的基盤としての位置づけと役割を明確化するとともに、明らかになった制度的課題の解決に向けた政策への落とし込みを行う。

ウェルビーイングを共創する技術基盤プラットフォームの構築

組織を超えて拠点に集まる研究アイディアから「ショーケース」において研究テーマ化され、それらを対象として「データサイエンス・AI技術基盤ユニット」、「センサ・アクチュエータ技術基盤ユニット」、「リハビリテーション技術基盤ユニット」、「研究用SKDP技術基盤ユニット」から支援を行い、地域のリビングラボやAIホスピタルなどの「実証フィールド」での実証試験、最終的には「リアルワールドでのケア」での社会実装事業化への移行を推進する。

一人ひとりに寄り添うメディカル・ヘルスケア・介護の実現

健康寿命延伸の観点から、発病後の余命が長く生涯を通して付き合っていく必要のある疾患や、後遺症等の影響が大きく医療・介護従事者等が寄り添っていく必要が大きい疾患として認知症、うつ病、脳卒中、心不全の後病者を主な対象として、さらに腎臓の老化に着目した代謝性疾患テーマなどについて、HCCPを活用して、医療情報に基づくリスクの層別化と日常生活における個々の状態が定量化されたデータを融合することにより、リスクに応じた個別化サービスのためのアルゴリズム開発を行う。

産学共創システムの構築

慶應義塾大学において本センターを中核として首都圏のアカデミア2機関、企業、自治体から市民までを巻き込んだ産学官民共創システムを設立・運営し発展させ、大学を起点とした知の好循環、資金の好循環、人材の好循環を実現するため、アカデミアの知に基づく未来社会のデザインとバックキャストによる社会価値創造を進める。また本センターの取り組みを社会システムとして持続可能な仕組み・組織として構築する。

成果

  1. 研究開発課題1および7を母体に「サービスデザインユニット」「政策・合意形成ユニット」の発足準備を進め、2027年までに研究開発課題を社会実装する上での政策課題解決を支援する体制を整えた。

  2. 「データサイエンス・AI技術基盤ユニット」「センサ・アクチュエータ技術基盤ユニット」「リハビリテーション技術基盤ユニット」「研究用SKDP技術基盤ユニット」の発足準備を進め、研究開発課題を事業化する上での技術課題解決を支援する体制を整えた。また、SKD基盤を活用した研究活動を充実させるため、様々なステークホルダーからデータ・シーズを集め、マッチングする仕組みである"ショーケース"を本格稼働させ、7新規研究テーマを研究開発課題候補として採択した。

  3. 企業3社と共同研究を実施中である。さらに企業3社、SU1社と研究成果の社会実装に向けた共同研究を検討中である。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

論文数:公刊論文数5件(『JMIR Aging』、『Procedia Computer Science』、『An Intermaion al Journal of Medicine』、『Sci Rep』、『JMA Network Open』)

学会発表数:招待講演35件(国内22件・国際13件)、口頭発表2件(国内2件)

イベント等の実績

2024/4/6 「都市型ヘルスコモンズ共創拠点(HCCP)ショーケースフォーラム 慶應義塾大学信濃町キャンパス、参加約100名

2024/4/11 「2024年度健康医療AIデザインプログラム(MAP)説明会」、慶應義塾大学信濃町キャンパス、参加約100名

2024/5/21、6/6-8、6/15、6/22、6/29 「MAPハッカソン」、慶應義塾大学信濃町キャンパス・川崎キングスカイフロント東急REIホテル、参加延べ210名

■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄

センターは研究開発課題1~7と産学連携・社会連携を進めるマネジメント部門で構成されている。2024年度の成果は以下のとおり。

  • [マネジメント部門] 事業で求められるバックキャストの仕組みを用いて拠点の"Theory of Change"を作成し、拠点運営の指針、事業化支援法人の設立、新規課題のアイデア創出、政策・合意形成ユニットやサービスデザインユニットの発足等に繋がった。

  • [研究開発課題1] 構想する社会システムの価値循環設計を終え、本センターが目指す「後病者・生活者一人ひとりに寄り添う共創の場」の社会システムの提案を行った。

  • [研究開発課題2] 研究用サイエンスナレッジ・データ基盤を実装。基盤上でデータ解析を実施し、パイロットスタディを完了した。

  • [研究開発課題3] ウェアラブルデバイスを用いた研究において、共同研究機関が提供するシステムを活用してデータを順調に蓄積。同社が検討するビジネス構想により、健康経営を目指す企業の産業保健フィールドを目指すためのPoC取得が2027年までに実施される予定である。

  • [研究開発課題4] 移動・買い物領域ではドライビングシミュレーター、ドライブレコーダー、実車運転による運転評価の体制構築を完了し、協力研究機関2社との共同研究契約を締結。リクルートを開始した。

  • [研究開発課題5] ウェアラブルデバイスにより脳卒中の後病を見守る臨床研究の倫理申請を行い承認を得た。あわせて病院データ、植え込み式心臓電子機器データ、ヘルスケアデータの3つのデータを統合するデータプラットフォーム構築を進めた。

  • [研究開発課題6] 「質の高い永続的な包括的心臓リハビリテーションが可能なシステムの構築」の一環として薬事申請を行った汗乳酸センサについて、年度内のPMDA承認を目指している。また、運動支援アプリの医師主導治験、患者自身の目標(なりたい姿)を表出するシステム完成を目的とした治験、参画機関が独自に開発した歩行解析システムでの心不全患者の歩行解析研究、HERとPHRデータを連携した数千人規模のデータ収集の基盤構築を実施した。

  • [研究開発課題7]SDGsの達成期限である2030年に近い中期アウトカムやスーパーゴールに対してSDGsの169ターゲットレベルで分析を行い、関連する分野や課題について整理を行った。また、研究プロジェクト全体及び研究開発課題6の「Theory of Change」に対して、SDGsの169ターゲットレベルで考えられる課題を分析した。

センター オリジナルWebサイト

設置期間

2023年4月1日~2028年3月31日

メンバー

研究代表者

中村 雅也

教授医学部 整形外科学整形外科、脊椎脊髄外科、脊髄疾患の外科的治療、神経科学(脊髄再生、栄養因子neuroimaging)

斎木 敏治

常任理事/教授理工学部 電気情報工学科ナノテク・材料 / 光工学、光量子科学・ナノバイオサイエンス

北川 雄光

常任理事/教授医学部消化器外科学