センター概要
現代社会の営みは、数理科学の発展とその応用を抜きにして考えることはできない。数理科学は現代のさまざまな活動に使われて、その重要性は高まるばかりである(たとえば、セキュリティシステムを管理する暗号理論やビッグデータの解析など例をあげればきりがない)。また、その成果がさまざまな分野に応用されるだけでなく、数理科学的な考え方も多くの分野に取り入れられて、現代社会の発展の要となっている。そして、このこととも関連して、慶應義塾大学にはさまざまな学部に数理科学関係の教員が在籍している。慶應義塾に在籍する数理系の教員を結集して、数学固有の問題はもとより、さまざまな研究分野の間の横断研究を行うことおよび国際的活動を行うことが、このセンター設置の目的である。2017年まで活動していた統合数理科学研究センターによって築かれてきた研究活動の基礎に基づいて、これを進化・発展させ、さらなる先端的研究活動を行う。
2026年度事業計画
■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標
2026年度は2025年度より所員を6名増員して活動する。2025年度より頻度を増した先端数理科学研究センター談話会およびセミナーは、引き続き定期的に開催する。このような研究交流は、所員個別の研究への刺激になるだけでなく、本センターの所員間の共同研究、とくに異分野間の共同研究のサポートに繋がる。2025年度はアメリカ国内の事情により開催が見合わされたBoston-Keio-Tsinghua Workshopも2026年度には再開することを目指し、準備を進めている。このWorkshopに限らず、教員、若手研究者の国際研究集会での研究発表を積極的にサポートしていきたい。さらに、注目される成果を挙げている海外の若手研究者を招聘することも検討している。以上のような活動を継続することにより、慶應義塾における数理科学研究のより一層の発展を目指す。
■2026年度の新規活動目標と内容、実施の背景
2025年度から開催の頻度を上げた先端数理科学研究センター談話会を定期開催する。この談話会では本センターの所員のみならず国内外の研究者にも広く講演を依頼し、センター内外の研究者との研究交流および共同研究をより活発なものとする。また、国際研究交流に関しては、2024年度まで継続して開催してきたBoston-Keio-Tsinghua Workshopを再開することが第一の目標とする。このWorkshopおよび国際研究集会への教員、若手研究者の派遣をこれまで以上に推進し、多くの若手研究者に国際的な研究交流の場を提供することを目指す。
2025年度事業報告
■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度
これまで毎年Boston大学で開催してきた Boston-Keio-Tsinghua Workshopは、アメリカ国内の事情により開催が見合わされた。一方、本センターのメンバー個別の国外出張、国際研究集会での研究発表、海外共同研究は順調に行われている。また、2025年は先端数理科学研究センター談話会を3月、5月、8月、11月、1月に、先端数理科学研究センター臨時セミナーを10月に開催するなど、センター内外の研究者との情報交換、研究交流を積極的に進めた。談話会には常時30名近くのセンター員および大学院生の参加があり、質疑も活発に行われた。これらのイベントにより、各メンバーの国際的研究活動の成果が本センターのメンバー間に共有され、本センターの研究活動の発展に大いに寄与している。
■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)
研究論文(学術雑誌、18件)
Tatasuo Iguchi and Masahiro Takayama, Well-posedness of the initial boundary value problem for degenerate hyperbolic systems with a localized term and its application to the linearized system for the motion of an inextensible hanging string, Osaka Journal of Mathematics 62 (2025), 507-538, 共著, 査読有り.
David Burns, Masato Kurihara, Takamichi Sano, On derivatives of Kato's Euler system and the Mazur-Tate Conjecture, International Mathematics Research Notices 2025 (4) 1-26, 国際共著, 査読有り.
他16件
学会発表(11件)
Masato Kurihara, Kolyvagin systems of Gauss sum type and the structure of Selmer groups, Automorphic Forms and the Bloch–Kato Conjecture (International Centre for Theoretical Sciences, Bangalore),(国際学会, 招待講演)2025年05月
Kenichi Hayashi, Contradictory conclusions in classification metrics: a study of paired design, The 8th International Conference on
Econometrics and Statistics (EcoSta 2025), 2025年08月
他9件
主なイベント
先端数理科学研究センター談話会 2025年5月16日, 2025年8月8日, 2025年11月19日, 2026年1月23日, 日吉キャンパス.
■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄
数学および数理科学の研究において、談話会を始めとした研究交流により、本センターのメンバー間の相互理解、情報共有、および共同研究のための体制が一層強固になった。
2024年度事業報告
■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度
国際的な連携活動についてまず述べると、アメリカのBoston大学において、定例のBoston-Keio-Tsinghua Summer Schoolが微分方程式・力学系・応用数学をテーマにして、2024年5月に行われた。メンバー以外にも、多くの大学院生を含む若手研究者が参加し、充実した研究集会が行われた。また、2024年7月に慶應義塾大学日吉キャンパスにおいて、Development of Iwasawa theoryと題する岩澤理論の国際研究集会が行われた。この分野を先導する研究者を世界から招聘し、全体として世界11か国から126名(海外からは31名)が参加するという、数学の一つの分野の研究集会としては大規模な集会となり、最先端の研究に関する発表ならびに活発な議論が行われた。研究集会に先立って、若手研究者によるセミナーも行われた。
2024年12月には慶應義塾大学日吉キャンパスにおいて、先端数理科学研究センター談話会が行われ、本センターのメンバーほぼ全員(文系学部に属するメンバーもこめて)が参加した。メンバーの相互理解、共同研究の発展、本センターの発展に寄与するところがきわめて大きなイベントとなった。以上のように、慶應の先端数理科学研究センターを中心にした国際的研究活動は、着実に進んでいる。
■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)
研究論文(学術雑誌、33件)
D. Burns, M. Kurihara, T. Sano, On derivatives of Kato's Euler system for elliptic curves, Journal of the Mathematical Society of Japan 76-3 (2024), 855 - 919, 国際共著, 査読有り
S. Esaki, H. Tanemura, Stochastic differential equations for infinite particle systems of jump type with long range interactions, Journal of the Mathematical Society of Japan 76-1 (2024), 283 - 336, 共著, 査読有り
K. Murota, A. Tamura, Note on Minkowski Summation and Unimodularity in Discrete Convex Analysis, Journal of the Operations Research Society of Japan, 67-4 (2024), 126 - 134, 共著, 査読有り
他30件
学会発表件数(17件)
Masato Kurihara, T-unsmoothed Iwasawa modules, Development of Iwasawa theory(国際学会), 2024年07月
Mihoko Minami, Model for Bycatch and Clustering Method for Distributions, International Day of Women in Statistics and Data Science, 招待講演, CAUCUS for women in Statistics and Data Science(国際学会), 2024年10月
他15件
主なイベント
Boston-Keio-Tsinghua Summer School, 2024年5月28日~5月31日, Boston University (国際学会)
Development of Iwasawa theory, 2024年7月22日~7月26日, 慶應義塾大学日吉キャンパス(国際学会)
■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄
数学および数理科学の研究において、国際的な活動を推進して、着実に成果を上げることができた。特に、Boston-Keio-Tsinghua Summer School を盛大に開催できたことは大きな成果であった。また、談話会を始めとした活動を通じて、本センターのメンバー間の相互理解と共同研究のための体制を築くことができた。
設置期間
2018年9月1日~2028年8月31日
