慶應義塾

KGRI・ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター

公開日:2026.09.07
KGRI

研究概要

研究開発とSociety5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)は、研究開発成果の社会実装を推進するプログラムであり、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)や各省庁の研究開発施策と連携する。

本研究開発の目的は、認知機能が低下しても、高齢者が地域の中で必要な支援を受けながら、自らの希望に沿って消費、契約、資産管理、資産活用等の経済活動を継続できるよう、金融機関、自治体、福祉関係機関、消費者行政等が連携する「金融包摂プラットフォーム」を構築することである。

単に認知機能低下を発見して通報するのではなく、本人の希望に沿ったお金の使い方、生活の継続、権利擁護、消費者被害防止を一体的に支えることを基本理念とする。

2026年度事業計画

■2026年度の新規活動目標と内容、実施の背景

1.実施の背景

高齢化の進展に伴い、認知症や軽度認知障害(MCI)のある高齢者の増加が見込まれる。認知機能が低下すると、預貯金管理、金融商品取引、公共料金・医療費・介護費等の支払、消費者被害・特殊詐欺への対応、相続・遺言など、日常生活と密接に関わる経済活動に困難が生じうる。他方、本人や家族は変化を認識しにくく、医療・介護サービスだけでは金銭管理上の異変を早期に把握できない場合も少なくない。

金融機関は、口座利用、支払、窓口相談等の日常的な顧客接点を通じて、高齢顧客の金銭管理上の変化や判断力低下の兆候に比較的早期に気づき得る立場にある。しかし現状では、個人情報保護、本人同意、自治体・福祉関係機関との接続ルール、金融機関内の記録・管理、現場職員の負担等が障壁となり、支援を必要とする高齢者を地域支援へつなぐ仕組みは十分に標準化されていない。

SIP第3期では、金融ジェロントロジーの知見に基づき、金融機関、自治体、地域包括支援センター、社会福祉協議会等が連携する「金福連携」の地域モデルを進め、モデル自治体又は候補先を拡大した。

BRIDGEでは、これらSIPの研究開発成果を社会実装へ橋渡しする。社会福祉法の重層的支援体制整備事業における支援会議、消費者安全法に基づく消費者安全確保地域協議会、成年後見制度、日常生活自立支援事業、新たな第二種社会福祉事業等の既存制度を視野に入れ、金融機関が把握した高齢顧客の生活・金銭管理上の異変を適切に地域支援へ接続する仕組みを実証・標準化する。

2.新規活動目標と背景

金融と福祉の連携(金福連携)では、3つのフェーズを想定する。

第1フェーズは、金融機関で認知機能低下が疑われる高齢者を把握した場合に、地域包括支援センター等へつなぐ「発見・連携モデル」である。

第2フェーズは、高齢者の日常的な金銭管理、生活費、医療費・介護費等の支払を支援する「金融包摂サービスモデル」である。

第3フェーズは、金融機関と福祉関係機関の双方で対応が必要なニーズを相互に情報共有し、継続的に支援する「互恵的連携モデル」である。

2026年度においては、自治体での金福連携のモデル類型化や第1フェーズの連携ルートの検証を進めるとともに、標準化案やAI実装に伴う課題整理、ガイドライン改定の論点整理を行う。

中核の一つを担うのが

①金福連携に関わるモデル自治体研究会

②日常生活自立支援等効率化研究会

③AI実装研究会の3つの研究会

である

モデル自治体研究会では、早期発見・早期支援、通報・連携フロー、個人情報保護・本人同意、自治体向け標準モデルを検討する。日常生活自立支援等効率化研究会では、社会福祉協議会と金融機関のインターフェース、代理・代行、支払、本人確認、通帳・証書管理、プリペイドカードやデジタルツール等を活用した効率化・標準化を検討する。AI実装研究会では、AIツールの社会実装に伴う諸課題を整理する。

プロジェクトWebサイト

メンバー

研究代表者

山田 篤裕

教授経済学部社会政策、労働経済学

高山 緑

教授理工学部老年心理学、生涯発達心理学

尾川 宏豪

特任講師経済学部高齢者法学、成年後見制度