研究概要
本プロジェクトは、日本に在住するブラジル国籍者・日系ブラジル人が、どのような条件のもとでブラジル本国の選挙政治に関与し、在外投票への参加・不参加、候補者・政党選好、母国政治への心理的距離を形成するのかを実証的に解明する。
ブラジルは義務投票制を採用しているが、国外居住者の投票行動や棄権要因、とりわけ日本に暮らすブラジル人の生活条件、情報環境、宗教・家族・地域ネットワーク、世代差、在留の長期化が母国政治への関与に与える影響は十分に検討されていない。
本研究は、2026年ブラジル大統領選挙を中心に、群馬県大泉町、静岡県浜松市、愛知県豊田市等でのフォーカスグループ、半構造化インタビュー、参与観察、質問票調査を組み合わせ、在外投票を単なる制度上の権利行使ではなく、受入れ社会での日常経験と社会関係のなかで再構成される越境的政治参加として捉える。
具体的には、SNS・メッセージアプリ、家族・友人関係、教会・宗教ネットワーク、職場・学校・同郷会、日本語・ポルトガル語環境、日本社会での制度アクセスや差別経験が、政治関心、政治的効力感、ブラジル社会への帰属意識、投票参加にどのように作用するのかを分析する。
2026年度は、三地域でのフォーカスグループと聞き取りから調査票・インタビューガイドを精緻化し、選挙後サーベイに接続可能な一次データと分析仮説を整備する。成果は、在外投票研究、移民・ディアスポラ研究、日本の多文化共生研究を接続する基盤となり、今後の日伯比較研究および大型外部資金申請へ発展させる。
2026年度事業計画
■2026年度の新規活動目標と内容、実施の背景
本年度は、2026年ブラジル大統領選挙を中心的契機として、在日ブラジル人の政治意識、在外投票行動、母国政治への関与を継続的に把握するための調査体制を整備し、選挙前・選挙期間中・選挙後を通じたデータ収集と初期分析までを行うことを目標とする。
具体的には、年度前半に、櫻田會政治研究助成によるパイロット調査とフォーカスグループを基礎として、群馬県大泉町、静岡県浜松市、愛知県豊田市における地域協力者、教会、学校、職場、同郷会、商店、SNS等を起点とするリクルート経路を確認する。あわせて、日葡対応の調査票、説明文書、同意手続、匿名化・データ管理手順を確定し、本格調査に向けた実施基盤を整える。
選挙前には、政治情報源、候補者・政党認知、在外投票登録、投票所へのアクセス、宗教・家族・職場・地域ネットワーク等を把握するための聞き取りと予備調査を実施する。
選挙期間中および選挙直後には、投票行動、参加・棄権理由、政治情報の流通、地域間の差異を把握するため、選挙後サーベイ、半構造化インタビュー、追加フォーカスグループを実施する。選挙時の判断や経験に関する記憶が鮮明な時期に調査を行うことで、投票参加に至る過程とその背景を詳細に記録する。調査音声・議事メモについては、Rimo等を用いて文字起こし、要約、初期コーディングを行い、研究補助者も含めた効率的なデータ整理体制を構築する。
あわせて、GMOリサーチ&AI等を利用したオンライン調査の設計・実施可能性を検討し、RDS(Respondent-Driven Sampling)または地域・人的ネットワークを活用した調査と組み合わせることで、在日ブラジル人の多様な層を把握する本格調査の方法を精査する。
年度内には、候補者支持、政党支持、政治情報源、宗教的背景、世代性、帰国志向、日本社会における制度アクセス等を含む暫定データセットを構築する。その上で、量的データの初期集計とフォーカスグループ・インタビューから得られた質的所見を統合し、次年度以降の本格的な分析および研究成果の公表につながる中間報告を作成する。
メンバー
