研究概要
がん免疫療法が奏効しにくい「Cold tumor」を、奏効性の高い「Hot tumor」へ転換することは、がん治療における喫緊の課題である。
近年、腫瘍組織内に細菌が存在する「腫瘍内細菌」が注目されているが、腫瘍内は低酸素、酸性、栄養制限を特徴とする特殊な微小環境であり、腸内細菌叢とは異なる選択圧のもと独自の機能を獲得していると考えられる。特に、細菌が産生する膜小胞(membrane vesicles: MV)は、核酸・タンパク質・脂質などを宿主細胞へ輸送し免疫応答を制御し得るが、腫瘍内細菌由来MVの機能は世界的にもほとんど解明されていない。
本研究では、日本人大腸がん臨床検体から腫瘍内細菌を単離し、それらが産生するMVを網羅的に回収・解析する。さらに、MVによる樹状細胞およびT細胞応答誘導能を評価し、免疫賦活能を有する菌およびMVを同定するとともに、その内包分子と作用機序を解明する。最終的にin vivoモデルを用いて、候補MVが腫瘍免疫環境を再構築し免疫チェックポイント阻害剤の効果を増強し得るかを検証する。本研究により、腫瘍内細菌—MV—免疫の新規連関を解明し、免疫療法不応例克服に資する新たながん免疫療法の創出を目指す。
2026年度事業計画
■2026年度の新規活動目標と内容、実施の背景
本年度は、以降の機能解析・動物実験すべての土台となる「腫瘍内細菌の単離とMV回収・解析系の確立」に加え、樹状細胞を活性化する菌の同定までを目標とする。
具体的には、
日本人大腸がん臨床検体から腫瘍内細菌を分離・同定し菌株ライブラリを構築
分離株からのMV回収・精製プロトコルを確立
各菌株およびそのMVの樹状細胞活性化能を評価し、免疫賦活能を有する菌を同定する
を達成目標とする。
臨床腫瘍検体は倫理審査承認のもと収集し、嫌気条件で培養した菌株から超遠心・密度勾配法でMVを回収する。回収MVは粒径・収量・内包分子(核酸・タンパク質等)を評価するとともに、樹状細胞との共培養により成熟マーカー発現や炎症性サイトカイン産生を指標として活性化能を判定する。
本年度に同定する樹状細胞活性化菌とそのMVは、次年度以降のT細胞応答誘導能解析および作用機序解明へ繋げていく。
メンバー
