慶應義塾

Challenge Grant: 合成データに基づく静止手指画像を入力とした関節リウマチ疾患予測

公開日:2026.06.10
KGRI

研究概要

本研究は、カメラで撮影した手指画像から関節リウマチによる炎症を判定する機械学習モデルを構築し、早期発見や遠隔医療への活用を目指すものです。医用画像のデータ不足と不均衡を克服する目的で、リウマチ患者の手指を再現した合成データを生成し、これを活用して推定精度を高めます。専門医や高価な機器が不要な診断技術を確立することで、医療格差の是正にも貢献することが期待されます。

2026年度事業計画

■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標

本研究は、カメラで撮影した手指画像から関節リウマチによる炎症の有無を推定する機械学習モデルを構築し、早期発見および遠隔医療への応用を目指すものである。関節リウマチは早期診断・早期治療が重要である一方で、専門医による診断や特殊機材などの医療資源が必要となるため、医療アクセスに地域差が生じやすいという課題がある。そのため、一般的なカメラ画像のみを用いて炎症の有無を推定できる技術の確立は、診断支援や医療格差の是正の観点からも重要な意義を持つ。

前年度は、炎症の有無を判定する機械学習モデルの構築に取り組むとともに、医用画像研究において課題となるデータ不足およびデータ不均衡を克服するため、仮想空間上でリウマチ患者の手指状態を再現した合成データを生成し、これを機械学習に活用することで推定精度の向上を図った。これにより、限られた実データのみを用いる場合と比較して、モデルの汎化性能向上の可能性が確認された。

これらの成果を踏まえ、引き続き合成データを活用した機械学習モデルの改良および評価を継続し、より信頼性の高い炎症推定モデルの構築を目標とする。

■2026年度の新規活動目標と内容、実施の背景

2026年度は、実応用を見据えた推定精度および汎用性のさらなる向上を主な目標とする。前年度の成果により、合成データを活用した機械学習モデルの有効性が示された一方で、実際の医療現場や遠隔診療環境での利用を想定した場合、より多様な撮影条件や手指状態に対する頑健性の向上が求められる。

そのため、2026年度は、合成手指データの多様化(炎症状態の多様な表現、撮影条件の多様化など)、合成データと実画像データを組み合わせた学習による機械学習モデルの性能向上、そのための専門医の知見を反映したアノテーションデータの整備などの取り組みを行う予定である。

2025年度事業報告

■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

当該年度は,本研究において,手指画像から関節リウマチによる炎症の有無を判定する機械学習モデルの構築に取り組んだ。また,医用画像研究におけるデータ不足およびデータ不均衡の課題に対応するため,仮想空間上でリウマチ疾患の状態をモデル化した手指データを合成し,これを機械学習に活用することでモデルの推定精度の向上を図った。

これらの研究活動の成果として,国際会議での発表1件,国内研究会での発表1件,および受賞1件の成果を挙げることができた。以上の結果から,当該年度の事業計画に対して十分な成果が得られており,研究は概ね計画通りに進展したと考える。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

学会発表件数(国際1件)

Rintaro Chiba, Shun Kato, Daiki Kistunai, Yasushi Kondo, Shuntaro Saito, Aoki Yoshimitsu, Mariko Isogawa, "Image-based Joint Inflammation Estimation for Rheumatoid Arthritis with Virtual Hands", Asian Conference on Computer-Aided Surgery(ACCAS 2025)

学会発表件数(国内1件)

千葉倫太郎, 加藤駿, 橘内大輝, 近藤泰, 斉藤俊太郎, 青木義満, 五十川麻理子,"仮想合成手指画像を用いた関節リウマチに起因する関節炎症推定手法", 第28回 画像の認識・理解シンポジウム, 2025

イベント(1件)

慶應テクノモール,パネル展示「画像を入力とした関節リウマチに起因する炎症有無の検出」2025年12月12日,東京

受賞(1件)

MIRUインタラクティブ発表賞(画像の認識・理解シンポジウムでの発表において,全601件のポスター発表のうち,上位11件に該当するとして選出された.)

■プロジェクト活動を通じて特に成果を挙げた事柄

実応用に向けた取り組みとして、医学部と理工学部の共同研究により、特許出願に至った。本研究成果は国際会議および国内研究会において発表され、さらに受賞を得るなど、学術的にも一定の評価を得ることができた。

プロジェクトメンバー

研究代表者

五十川 麻理子

准教授理工学部コンピュータビジョン、センシング、機械学習