研究概要
人々のライフラインであるネットワーク、とりわけ最も身近な存在であるモバイルネットワークとセンサーデータおよびAI技術に着目し、未来の情報空間を切り拓くための先進技術や次世代サービスの研究開発をおこなう。未来の情報空間は、日常生活に溶け込み、キャンパスやオフィス、街中といった実空間とシームレスに融合したサービスを創出することで、人々の生活と深く結びつくことが求められている。また、このような環境では、情報の信憑性やデータ管理なども重要な検討課題である。SFCに展開されたモバイルネットワークとAI計算機環境は、ネットワークとAIが一体となって人々の生活空間に寄り添う新しい情報空間の実現に向けた歩みを着実に進めている。
本プロジェクトでは、ネットワークインフラとしての5Gや6Gのモバイル通信技術、物理空間のデジタル化技術として各種のセンサー情報や動画像認識技術、空間センシングなどのマッシュアップ基盤、そして3次元高精度地図と自己位置推定技術などの研究開発を大学のキャンパスを実証基盤とすることにより、基盤技術の研究をおこなうだけではなく、社会実装を視野に入れた研究開発を推進する。
また、2026年度からは、内閣府や経済産業省やその他政府省庁が連携し創設した経済安全保障重要技術育成プログラム(通称K Program)の下、偽情報分析に係る技術開発のメディア解析基盤の研究開発を進める。2026年度は、こうした取り組みをさらに発展させるとともに、AI技術の急速な普及を背景としたインターネット上の情報の信頼性確保という新たな課題にも取り組む。情報を扱う上でのプライバシーやセキュリティに関する課題についての研究をおこない、規格化・標準化なども見据えた今後の新しい情報社会の創出をおこなうための基盤に資する活動をおこなう。
2026年度事業計画
■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標
2025年度には、SFC前交差点を対象とした視覚障害者向け横断支援システム、夏季特別プロジェクトでは、SFCキャンパスからのバス情報の提供システムなどデジタルツインキャンパスの実証環境を用いたアプリケーションの開発が行われた。
2026年度では、新たに提供を開始しするAI基盤も融合することにより、より多種多様なアプリケーションの創出をしていく。
■2026年度の新規活動目標と内容、実施の背景
AI技術とデジタルツインキャンパスが持つ様々なセンサーやデータをより融合したアプリケーションの開発を進めるとともに、K-programの研究支援の下で、偽情報の分析基盤や情報の出所確認、情報へのアクセスの為の認証認可などの研究を進める。
2025年度事業報告
■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度
本プロジェクトでは、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)を実証基盤として、モバイルネットワーク・センサ情報・AI技術を統合したデジタルツインキャンパスの構築と社会実装に向けた研究開発を推進した。
2025年度は特に、SFC前交差点を対象とした視覚障がい者向け横断支援システムの実証実験に取り組んだ。視覚障がい者へのヒアリングで明らかになった「残り時間がわからない」「進行方向が把握できない」といった課題に対し、信号機情報とスマートフォンのセンサを連携させた音声ガイダンスシステムを開発・評価した。また、SFCキャンパスが提供するデジタルツイン基盤(センサAPI、3Dマップ、位置情報API等)を活用した学生向け特別研究プロジェクトを実施し、33名が参加してキャンパス課題を解決するアプリケーションを開発した。AI-RANテストベッド環境の運用支援・制度整備についても継続的に取り組んだ。
達成度:順調に進展している。
■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)
・集中講義「デジタルツイン基盤を活用した特別研究プロジェクト」開催(2025年8月〜9月、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)
・Interop Tokyo 2025 出展(2025年6月11日〜13日、幕張メッセ)
・KEIO TECHNO MALL 2025 出展(2025年12月12日、東京国際フォーラム)
・INTERNET Watch 記事掲載(2025年6月)
■プロジェクト活動を通じて特に成果を挙げた事柄
視覚障がい者向け横断支援システムの実証実験において、視覚障がい当事者4名が参加する屋外評価実験を実施し、残り信号時間の音声提示が有用性・安心感の両面で高い評価を得た。また、学生が開発したキャンパス前バス停の混雑モニタリングシステムが研究室での継続運用に至るなど、DTC基盤を活用した成果の社会実装事例が生まれた。対外イベントへの出展を契機として複数企業との具体的な連携協議に発展し、プロジェクトの認知・パートナーシップの拡大においても成果を挙げた。
