創造
研究概要
近年、深層学習に基づくAIツールが飛躍的に普及し、大量の学習データに依拠した大規模言語モデル(LLM)の説明可能性をめぐる諸問題が深刻化しつつある。本研究は、私たちの社会生活を取り巻くコンピューティング環境の説明可能性と公平性をめぐる諸問題の解決のために、日仏の国際連携のもと、論理的手法を利用した方法論を具体的に提示することを目的とする。日仏の研究連携を推進し、社会還元につながるLLMの説明可能性モデルを探究したい。
2025年度事業報告
■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度
本年度は、LLMの説明可能性に関する基準の明確化とベンチマーク構築を中心に研究を推進した。特に、(1) 社会規範的推論能力の評価では、Wason課題を用いた義務的条件推論の分析および論理・様相的観点からの比較ベンチマークを構築し、国際会議(EACL、BlackboxNLP)および国内学会で成果を発表した。(2) 数学的推論に関しては、入れ子構造を含む帰納法証明を対象とした評価課題(Direct Induction Proof Challenge)を提案し、LLMの証明生成能力の限界と特徴を明らかにした。また、証明コーパス構築を通じた言語的分析も進めた。これらの成果により、説明可能性評価のための具体的指標とデータセット整備が進展し、当初計画に対して高い達成度を得た。
■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)
本年度は、国内学会発表2件、国際会議・ワークショップ発表5件を実施し、EACL本会議やEMNLPワークショップ(BlackboxNLP)、ICMLワークショップ等の主要国際会議で成果を発信した。また、人工知能学会および言語処理学会において受賞実績を得た。社会貢献として、国内ワークショップ1件、国際ワークショップ・会議3件を主催し、UNESCO世界論理デー関連イベントを含む形で、説明可能性と公平性に関する学際的議論の場を提供した。これにより、研究成果の社会還元と国際的発信の双方において顕著な成果を挙げた。
国内ワークショップ主催(1件)
- 科学基礎論学会2025年度研究例会(ロジックフェスタ2026)ワークショップ「論理とAI」(UNESCO世界論理デーイベント、オンライン、2026年1月10日)
国際ワークショップ主催(3件)
- 「AIとデジタル環境の説明性と公平性にむけて」ワークショップ(慶應義塾大学三田キャンパス東別館9階カンファレンス・ルーム、2025年11月4日)
- ハイブリッド「論理と数学と計算の哲学」日仏会議(慶應義塾大学三田キャンパス東館6階G-Lab、2026年2月25日)
- 第6回日仏「論理とリーズニングにおける不一致」ワークショップ(慶應義塾大学三田キャンパス東館6階G-Lab、2026年2月28日)
■プロジェクト活動を通じて特に成果を挙げた事柄
日仏連携のもと、三田キャンパスにおいて国際ワークショップを3回開催し、継続的な研究交流基盤を確立した点が特筆される。また、中国・ドイツ・イスラエルの研究チームとの連携を進め、国際共同研究ネットワークを拡張した。さらに、哲学・論理学とAI・自然言語処理を横断する学際的研究体制を確立し、EACLなどのトップ国際会議で成果を発表するなど、国際的な発信を着実に行った。これにより、説明可能性研究の理論的・実証的基盤の強化に寄与した。
2024年度事業報告
■当該年度活動計画に対する実施内容、および研究成果と達成度
2024年度は、次の二点に重点を置いて研究を進めた。(1) 日仏の研究グループにより、論理推論、ならびに、因果推論の観点から大規模言語モデル(LLM)を含むAIモデルにおける説明可能性と公平性の概念の明確化に取り組んだ。(2) これと並行して、日本側グループを中心に規範的推論・実践推論に着目したLLMの推論能力評価のための新たなデータセットを構築し、説明可能性の観点から現状のLLMの評価を行った。(1)については、2024年度末にフランス側のプロジェクトメンバー4名を含む研究者を招き、三田キャンパスにて国際ワークショップ、および、ワーキングセミナーを開催した。(2)については、その成果を国際会議論文として発表し、データセットを研究目的で公開した。当初の計画に沿って、順調に研究が進展したと言える。
■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)
国際会議論文7件(Findings of the Association for Computational Linguistics ACL 2024, Proceedings of the 14th International Conference on the Theory and Application of Diagrams, Proceedings of th 3rd International Conference on Human and Artificial Rationalities など)、国内学会発表3件、国際ワークショップ "France-Japan Meeting Considering Fair Development and Scientific Knowledge & Data Sharing with the Digital Environments of Our Lives and Society" を主催(2024年3月21日、三田キャンパスG-Lab)、ワーキングセミナー "Working Seminar on Fairness and Explainability in the Digital and ML Environments" を開催(2024年3月27日、三田キャンパスOpen-Lab)
■プロジェクト活動を通じて特に成果を挙げた事柄
LLMの論理推論能力の評価を進め、自然言語処理・計算言語学の主要な国際会議であるACL2024を含む国際会議において論文発表し、あわせてデータセットの公開に結びつけたことは特筆すべき成果として挙げられる。また、2024年度末に日仏国際ワークショップを開催したことは、今後のさらなる研究連携の推進につながる重要な成果の一つである。
