慶應義塾

リベラルな国際秩序の終わり?

執筆者プロフィール

  • 細谷 雄一

    法学部 政治学科教授(外交史)

    細谷 雄一

    法学部 政治学科教授(外交史)

今、国際秩序が大きく動揺しています。中国やロシアのような権威主義体制が影響力を拡大していることや、アメリカのトランプ大統領が多国間国際機関やいくつかの国際協定に敵対的な姿勢を示していることなどが、その原因として指摘されています。それとともに、国際政治学の世界では、リベラルな国際秩序が終わりつつあるという議論が頻繁に見られるようになりました。それは、われわれにとっても無関係ではいられない、重大な問題です。  

20世紀に2度の世界大戦を経験した世界は、国際政治が暴力や無秩序に支配されることがないように、国際法や国際組織、さらには民主主義や人権といった規範によって支えられるようなリベラルな国際秩序を確立してきました。日本国憲法に埋め込まれた平和主義も、そのような国際秩序と不可分の一体となっています。われわれが国際政治を考える際にも、世界の動きと日本の動きを結びつけて考えることが重要です。 私はこれまで、世界史と日本史、さらには現代と過去を結びつけて思考する必要を強調してきました。慶應義塾は蘭学塾であった頃から「世界のなかの日本」を強く認識していました。福澤諭吉先生も『西洋事情』という書物などを通じて、世界の動き、とりわけ西洋列強の動きに目を向けていました。伝統を自覚しながら、最先端の革新的な知識を導入することこそが、未来を先導する若者には必要なのです。