執筆者プロフィール

岡山 裕
法学部 政治学科教授(アメリカ政治)
岡山 裕
法学部 政治学科教授(アメリカ政治)
アメリカの2020年大統領選挙で、再選をめざすトランプ大統領は人種や党派間の対立をあおり、選挙の正当性を認めようとしませんでした。年明けにはトランプ支持派が議会を襲撃する事件まで起きています。
しかしアメリカでは、トランプの登場以前から、人種や階層等の社会的な亀裂と二大政党間の対立が重なる形で、対立党派の人々を嫌悪し危険視する傾向が強まっていました。各州では、敵対する党派を打ち負かすべく、とくに共和党が選挙区の区割りや投票の手続きを操作するなど、民主的な手続きを通じて民主主義の制度的な土台を掘り崩しかねない動きも生じています。
アメリカに限らず、自分達だけが正しいという独善的な見方から反対勢力を敵視する姿勢が、ポピュリズムなどの形で他の国々でも目につくようになっています。政治体制、つまり国全体の政治の大枠に関する研究では従来、一度民主主義が安定すれば、以後体制は変わらないと考えがちで、どうやって独裁国家などを民主政という「ゴール」に導くかに関心が集まっていました。それが、先進国でも民主主義からの「後退」が懸念され、競争的な選挙といった民主的な要素を含む非民主主義体制の存在も注目されるようになっています。
このように、政治学では研究対象となる事象の深い理解と、計量的な分析も用いて幅広い現象を一般的・抽象的に説明しようとする姿勢の両方が求められます。私も、一般的な理論を踏まえつつ、アメリカで二大政党がイデオロギー的に分極化していく過程を歴史的に検討して、民主主義がどのように分断と対決の道にはまり込んできたのかを解明しようとしています。問いの探求には文理の垣根も越える政治学の貪欲な姿勢は、福澤諭吉先生のいう「実学〈サイヤンス〉」の精神に通じるものといえます。学生諸君にも、様々な考え方に触れるなかで「知的な欲張り」になってもらうよう心がけています。