慶應義塾

開いた地域としての東南アジアを考える

執筆者プロフィール

  • 山本 信人

    法学部 政治学科教授(現代東南アジア論)

    山本 信人

    法学部 政治学科教授(現代東南アジア論)

他者理解としての地域研究

地域研究とは他者の生活する特定の地域への理解を深める作為です。理想的には、他者理解のためには言語を修得することから始まり、食生活や文化や慣習、そして政治・社会・経済制度などを学習して、その上で他者の考え方への想像力を磨く必要があります。言うまでもなく一朝一夕では他者理解はできず、じっくりと腰を据えて他者(そして自己)と向き合う必要があります。地域研究を極めるという理想の実現には時間がかかりますが、授業を介して少しでも他者理解の機会を学生諸君に提供したいとぼくは考えています。

東南アジアへの視角

ぼくの担当する科目は現代東南アジア論です。東南アジア地域は11個の国民国家が存在します。しかし東南アジアはその11カ国で閉じているのではなく、他の地域や国家や人との密接な関係性を有する開いた地域です。なかには国民国家への帰属を意識しないで生活している人びともいます。長く劇的な人の流れの歴史をもつ東南アジアは一筋縄では理解できない魅力が満載です。ぼくの講義では、空間的な地域、時間的な地域、そして実態としての東南アジアを複眼的に理解する試みをしています。それを通して、開いた地域としての東南アジアの軌跡と行く末について考える機会としています。

英語を介した東南アジア

少人数の演習形式である特殊研究では、東南アジア地域に関する文献を介して他者理解の仕方を学生諸君とともに模索します。英語文献を主体にし、英語で授業をおこないます。英語で書かれた歴史、政治、社会、文化に関して知識の塊を紐解き批判的に読み込むことで、自分なりの問いと東南アジア理解が形成されます。英語で考えることは日本(語)的な理解から自らを解放する作業でもあります。英語は他者との共通理解への道を切り開き自らを相対化するツールです。英語を介した東南アジア地域研究はそうした可能性を秘める作業であると考えています。