慶應義塾

世界が注目「レイのブログ」の開発者 キャンパスライフで育った起業の芽

登場者プロフィール

  • 堀口 野明(ほりぐち のあ)

    環境情報学部 4年

    2002年アメリカ・カリフォルニア州生まれ。大学進学をきっかけに18歳の時に初めて来日。中高生向けプログラミングスクールLife is Tech!での教育インターン、日本ファクトチェックセンターで記者として活動。ファクトチェックの世界にいる中で感じた課題を解決するために今井君・古堅君と共にClassroom Adventureを創業。

    堀口 野明(ほりぐち のあ)

    環境情報学部 4年

    2002年アメリカ・カリフォルニア州生まれ。大学進学をきっかけに18歳の時に初めて来日。中高生向けプログラミングスクールLife is Tech!での教育インターン、日本ファクトチェックセンターで記者として活動。ファクトチェックの世界にいる中で感じた課題を解決するために今井君・古堅君と共にClassroom Adventureを創業。

  • 今井 善太郎(いまい ぜんたろう)

    総合政策学部 3年

    2001年生まれ。カナダの公立高校を卒業後、日本に帰国。幼児向けEdTechサービスを運営する株式会社YOMYで取締役副社長を務める傍ら挑戦したファクトチェックの世界大会で堀口君・古堅君と共に日本優勝。Classroom Adventureを共同創業する。エンジニアリングなどのシステム開発を担当。

    今井 善太郎(いまい ぜんたろう)

    総合政策学部 3年

    2001年生まれ。カナダの公立高校を卒業後、日本に帰国。幼児向けEdTechサービスを運営する株式会社YOMYで取締役副社長を務める傍ら挑戦したファクトチェックの世界大会で堀口君・古堅君と共に日本優勝。Classroom Adventureを共同創業する。エンジニアリングなどのシステム開発を担当。

  • 古堅 陽向(ふるかた ひなた)

    環境情報学部 4年

    2001年生まれ。「レイのブログ」のコンテンツの開発者。堀口君・今井君とClassroom Adventureを共同創業。YouTuberの運営として約2年間でチャンネル登録者を20万人以上に成長させる。また日本ファクトチェックセンターでインターン、動画メディアを立ち上げる。

    古堅 陽向(ふるかた ひなた)

    環境情報学部 4年

    2001年生まれ。「レイのブログ」のコンテンツの開発者。堀口君・今井君とClassroom Adventureを共同創業。YouTuberの運営として約2年間でチャンネル登録者を20万人以上に成長させる。また日本ファクトチェックセンターでインターン、動画メディアを立ち上げる。

株式会社 Classroom Adventure

2024/11/05

世の中に氾濫する情報の真偽を見抜く目を育てるメディアリテラシー教育。日本でも最近やっと中学や高校の授業の中での学びがスタートしています。そんな中、慶應義塾大学の学生3名が立ち上げたプログラムが話題になっています。3人が立ち上げたベンチャー企業Classroom Adventureが開発した「レイのブログ」。彼らが作ったプログラムは、生徒が夢中で学んでくれると話題になり、世界的な注目を集めています。昨年末には米Google社からフェイクニュースに対する持続可能で全く新しいアプローチだと高い評価を受け、シンガポールで開催されたアジア最大のメディアサミットTrusted Media Summit 2023に招待されました。彼らはどのようにしてこのプログラムを開発したのでしょうか。これまでの活動と今後の取り組みについて話を聞きました。

-「レイのブログ」とは、どのようなプログラムですか?

今井君

インターネット上の情報に対しどう向き合って行くかを謎解きゲームを通して学べるプログラムです。ゲームとレッスンの2つのパートを通してメディアリテラシーへの理解を深めることができるものです。参加者は、スマートフォンなどのデバイスを使って「レイのブログ」にアクセスします。プログラムはアニメーションを使った物語仕立てになっていて、中学時代にタイムスリップするところから物語が始まります。レイと名乗る人物からの挑戦状を受けとり、レイが残したブログからレイが誰なのか、謎を解いていくというのが大まかなストーリーです。レイが残したブログには沢山の誤情報が含まれていて、誤情報を見破るごとに謎に一歩近づいていくような仕掛けになっています。

今井善太郎君

レイのブログの説明動画をYouTubeで配信している。

-海外でも高い評価を受けていますが、そんなプログラムを開発した3人はどのように出会ったのですか?

今井君

大学のドイツ語のクラスで出会いました。僕たちが入学した時はコロナ禍で、授業がほぼオンラインでした。ドイツ語のクラスは週に4回あって、画面越しにほぼ毎朝顔を合わせるようになったんです。それから体育など一部の授業が対面になって、たまたま帰りのバスで一緒になり、よく話すようになりました。

古堅君

SFCのキャンパスは駅からかなり離れているんです。歩くと1時間くらいかかります。だからみんなだいたい最寄り駅の湘南台駅からバスで通学しています。

今井君

そういえば、古堅君は入学前にキャンパス見学にきたけどたどり着けなかったって言っていたよね。

古堅君

そうそう。アクセスを何も調べずに来てしまって。なんとなく、大学だから駅から近いだろうなと勝手に思っていたんです。最寄り駅には着いたけど、キャンパスにたどり着けなかった。今考えたら、そんなの地図アプリで調べたらすぐに出てきたと思うのですが、なぜかその時は思いつかなくて、キャンパスを見ずに帰ったことがありました。

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今井君

バスだとすぐなんですけどね。それで、帰りのバスで初めて対面で会って、「あ、ドイツ語のクラスの…」ということで、話すようになりました。その時に、履修登録の話になったのですが、なんと堀口君が1つも履修登録をしていないことが分かったんです。堀口君はこう見えてアメリカ人なんです。入学後のガイダンスとかも全部オンラインだったので、ほとんど履修の仕組みを分かっていなかったようで(笑)。

堀口君

そうなんです。僕はアメリカで生まれ、18歳で初めて日本に来ました。日本語をしゃべることはできるんですが、日本語の読み書きはいまだに苦手なんです。だから、2人にとても助けてもらいました。

今井君

SFCは1年生からわりと自由に授業が選べて、言語のクラス以外は必修がないんです。だから、自分で履修する授業を決めることができるのですが、堀口君はそのことをどうも理解していなかったようなのです。

堀口君

アメリカでは週末にある日本人学校の補習校に通っていたんですけど、読み書きはやはり難しいです(笑)。

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-三人はなぜ慶應義塾大学への進学を決めたのですか?

堀口君

実は一度、アメリカで現地の大学に入学していたのですが、なんだかフィットしていない感覚がありました。もともとアニメが好きで、日本にも興味があって、起業することにも関心があり、日本で学んでみたくなりました。面白そうな大学はないかなといろいろと調べる中で、「起業」というキーワードでヒットしたのが慶應義塾大学でした。チャレンジしている人が沢山いて、自由な校風に感じました。それで、慶應義塾の受験を決めました。慶應義塾大学を受験するために受験半年前に日本に入国しました。日本の予備校に通って受験勉強をして、それと同時に漢字ドリルなんかを使って日本語の読み書きの勉強もしたのですが履修登録は難しかった(笑)。

堀口野明君
古堅君

僕も実は別の大学に合格をして入学したのですが、コロナ禍でオンラインだけで授業を受ける中、なんだかこの状態で勉強していくのはしんどいなという気持ちが芽生えてしまったんです。現役の時も慶應義塾の文学部とか受けていたのですが、残念ながら当時は合格がもらえずで。この“しんどい”という気持ちを払拭するために、環境を変えてみたいと思うようになって、オンライン授業で大学にも通わないのなら、受験勉強をする時間も取れるのではないかと思って、慶應義塾大学に再チャレンジすることにしました。

湘南台駅にきて、キャンパスを見ずに帰ったと話しましたが、あれは確か受験前の1月だったと思います。当時、僕は信じられないくらい散歩をしていて、駅を降りて少し歩いたら、良い感じの河川敷があって、そこを1時間くらい歩いて帰りました。

古堅陽向君
今井君

郊外の良さってあるよね。実際僕らはバスを使わずによく駅まで散歩しながら3人で帰っているのですが、散歩の間に3人で話が盛り上がって、「レイのブログ」の構想のアイディアが沸き起こった。

堀口君

そう、僕はこのサバーブな雰囲気が好きです。だからSFCにしました。他のキャンパスは都心にあって便利そうだけど、僕はあまり都会過ぎるのは好きじゃないから、このゆったりとした雰囲気のキャンパスが気に入っています。

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今井君

やっぱり集中して勉強する時って、環境も大事だと思うんですよね。僕は東京の世田谷区出身なのですが、高校時代はずっとカナダのすごい田舎の学校に留学していました。アメリカやカナダの大学は広い芝生があり、伸びのびと過ごせるところが多いんです。大学は日本に戻ろうと決めていましたが、できれば、都会から離れて、緑豊かなキャンパスで集中して学べるところがいいなと思っていました。SFCには自分がやりたい分野の先生がいたというのも大きかったのですが、自然が多い環境のキャンパスだっていうのも目指す決め手になりました。芝生もあるし、鴨池という池もあるんです。その池の周りを友達と話しながら散歩するのが好きですね。

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-ドイツ語クラスで出会った3人がそこからどのようにしてメディアリテラシー教育に興味を持ったのですか?

今井君

3人でなんかやりたいねという話が出ていて、そんな時にたまたま見つけたのがGoogleによるGoogle Verification Challengeというファクトチェックの大会でした。確か、最初はSNS広告で見たんだと思います。夏休みにある日本大会に出てみようという話になり、練習したら日本大会で優勝することができたんです。そこから世界大会に出ることになり、世界大会でも4位に入賞できたのですが、この大会をきっかけにファクトチェックに関心を寄せるようになりました。

カナダの高校でメディアリテラシーの授業は受けていたのですが、「ネットは危ないからあまり使わないでね」というように、アクセスしないのが一番といった教育でした。でも、ネット情報に触れずに暮らすのはもはや難しい時代です。コロナ禍で誤情報に惑わされる体験を日本人も沢山しました。息を止めていられるかでコロナ感染症にかかったかどうか分かるとか、とんでもない情報が氾濫しましたよね。

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堀口君

僕が一番始めに誤情報について警戒しなくてはと思ったきっかけはアメリカの大統領選挙でした。それが2016年くらいでしたけど、そのうちに警戒する気持ちは薄らいで。再び警戒心を持ち始めたのがコロナ禍でした。今井君が過ごしたカナダと同様に、アメリカのメディアリテラシー教育も学校では教わるけれども、それほどみんな熱心に聞いていなかった。

今井君

誤情報に振り回されないことはとっても大切なことです。しかし、学校ではだから「使わないで」という教育になっている。でもネット社会の中で生きるには、「危ないから使わない」ではすまないですよね。いかに「使いこなすか」を学ぶ方が有益なのではないかと、大会を通して考えるようになっていったんです。

もっと楽しく学べたら、メディアリテラシーも向上するんじゃないかと。3人でそれこそ散歩をしている時に、学びをエンタメ化することを思いついたんです。そこで、役割を決めて動き始めました。僕らの所属している研究室はUIやUXを研究しているところで、どちらかというと、教育方面のことを言っているのは僕ばかりで、2人は動画を作ることや、プログラミングなどテクノロジー分野、クリエイティブなことに興味がありました。

堀口君

僕は謎解きゲームがすごく好きで、中学生くらいの頃からハマっています。オンラインの世界と現実世界を繋いだような謎解きゲームがあるんですけど、それがすごく好きで、その大会を学校とか、いろんな所で開催したいなという気持ちがありました。それで、メディアリテラシー教育をゲーム感覚で学べるものにと思った時に謎解きゲームと掛け合わせるアイディアが生まれました。

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古堅君

一応僕がシナリオとか担当することになったのですが、それまでシナリオなんて書いたことがなくて、でも、やるしかないと思って、作りはじめました。

堀口君

大学でプログラミングなどを学びつつ、開発を進めながら、中高生向けプログラミングスクールLife is Tech!で教育インターンとして働いたり、日本ファクトチェックセンターというところで記者として活動しながら知識を身に付けています。

今井君

お金もないので、アニメーションの声優は大学の友人にお願いするなどして作り上げました。プロトタイプは友人とかに試してもらい、完成度を高めていきました。授業を受ける中高生、大学生をターゲットにプログラムを開発していますが、自分たちが当事者の年齢に近いため、何が面白くて面白くないかという感覚がよく分かる。これも僕たちの強みになっていると思います。

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-海外版もローンチされていますね。今後の展望を教えてください。

今井君

ありがとうございます。2023年12月にシンガポールで行なわれたメディアサミット Trusted Media Summit 2023の中でグローバル版として英語バージョンをリリースしましたが、今は台湾など中国語圏で使ってもらえる繁体字版もリリースしました。謎解きゲームという形でエンターテイメント性を持たせたことで、学習する側のモチベーションや、学んだことの定着度が上がることも分かってきました。これら2つはどの分野の学びにも必要なことです。メディアリテラシー教育に限らず、企業研修などでも使っていけるプログラムへと横展開することを考えています。3人で始めたClassroom Adventureですが、学部を超えて協力してくれる塾生仲間が増えてきたので、新たな挑戦もしていきたいと思っています。

シンガポールで行なわれたメディアサミット Trusted Media Summit 2023の様子
(写真左から)今井善太郎君、古堅陽向君、堀口野明君

株式会社 Classroom Adventure

※記事中の所属・学年・職名等は掲載時のものです。