慶應義塾

SDGsを"道しるべ"に社会の再構築を

政策・メディア研究科 蟹江憲史教授

2020/10/30

近年、社会全体でSDGsへの関心が高まっています。SDGsとは、2015年9月に国連サミットで採択された、Sustainable Development Goals、すなわち、持続可能な開発目標です。2030年までに世界で達成すべき17の目標が設定されました。慶應義塾大学も教育・研究機関として、SDGsに関連するさまざまな取り組みを行っています。

今回は、SDGsに関わる研究を行っている政策・メディア研究科の蟹江憲史教授、そして塾員、塾生の活躍の一部を紹介します。

SDGsを“道しるべ”に社会の再構築を政策・メディア研究科蟹江憲史教授

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コロナ禍が浮き彫りにした持続「不」可能な現代社会

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、私たちはこの社会が「持続可能ではない」ことをあらためて認識させられました。感染拡大に伴い経済活動は縮小し、企業の倒産や解雇が相次ぎました。所得や教育格差の広がり、感染者への差別、ジェンダーに基づく暴力などの問題も指摘されています。また、こうした影響を最も受けるのが、シングルマザーや非正規雇用者といった社会的弱者であることも目の当たりにしました。

では、これからどうすればいいのか。答えは明確です。今こそSDGsを“道しるべ”とし、社会を再構築していくべきです。実はいま我々が直面している課題──感染症への対処、ワクチンなどの医薬品開発、インターネットを含むインフラ構築、差別の撤廃、貧困解消など──はすべてSDGsの目標に掲げられています。今回のコロナ禍は、課題解決を先送りにしてきたツケでもあるのです。同じ過ちを二度と繰り返してはなりません。

SDGsは、193の国連加盟国すべてが合意した“未来のかたち”です。意見や手段が違っても、世界が最終的に目指している姿は同じ。つまりSDGsにいち早く対応することは、あらゆる国や企業にとって成長の源にもなるのです。採択から5年、一定の認知を獲得した今、いかに実際の行動へと結びつけていくかが次なる課題です。

学術機関や若い世代がSDGs達成に重要な理由

SFCの蟹江研究室では、SDGsの採択以前からその研究に取り組んできました。近年では、兵庫県の人口減少地区でのフィールドワーク、企業の評価や分析、国連のハイレベル政治フォーラムでの調査など、活動は多様な広がりを見せています。今年9月から東急電鉄ほかが運行しているラッピング列車「SDGsトレイン2020」のプロジェクトにも携わっています。

ニューヨークでのハイレベル政治フォーラム(2019年)

また3年前に立ち上げた研究ラボラトリ「xSDG・ラボ」と研究コンソーシアムでは、良品計画や楽天ほか約20の企業、自治体、政府関係者とともに、研究やプロジェクトを実施しています。6月に公開した「企業のためのSDG行動リスト」は、SDGsを実際の企業行動に“翻訳”したもので、自治体や金融機関による企業の評価ツールとしても活用されています。さらに今秋には、SDGsを今後どう解釈すべきかを示した「コロナ後のSDGs」を公表する予定です。

こうしたさまざまな活動において、常に客観性・中立性を持って指標や方法論を示すことができるのは、学術機関の意義であり、果たすべき役割だと思っています。また、学生をはじめとする若い世代の柔軟な発想と行動力は、SDGs達成の大きな力となります。できない理由を挙げるのではなく、「どうすれば達成できるか」をポジティブに考える、その姿勢はSDGsの在り方そのものです。今後は、大学と一貫教育校が一緒にSDGsを学ぶなど、慶應義塾としてより一体となった活動へと広げていければと考えています。

研究室の学生たち(国連本部にて)

一人一人が行動を変えれば、社会は変わる──。このことを私たちは、皮肉にもコロナ禍で実感したはずです。手洗いや咳エチケット、行動制限を皆が励行すれば感染者数は減る。守らなければ感染者は増える。SDGsも同じです。マイボトルを使う、電力会社を見直す、フェアトレード商品を購入するといった一人一人の小さな行動の積み上げが、やがて社会を変える大きな力になるのです。ぜひ、できることから実行していきましょう。

「キャンパスSDGs」プロジェクト2019年 政策・メディア研究科修士課程修了和田 恵君

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SDGsが採択された2015年、日本ではその存在すら知らない人が大半でした。そこで、まずはSFCという小さな単位から認知度を高めていこうと2016年に実施したのが「キャンパスSDGs」プロジェクトです。ロゴや説明を記した約2500枚のステッカーを目標と関連する場所(食堂やトイレ、講堂など)に貼付。認知度は2割から8割に上昇しました。「認知」の次は「行動」です。SDGsを通して、社会の“当たり前”を共に変えていきましょう。

ハイレベル政治フォーラムを見学して総合政策学部3年大貫萌子君

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昨年、ニューヨークの国連本部で「ハイレベル政治フォーラム」を見学しました。国や宗教を超えた多様なステークホルダーが平等に議論する姿は鮮烈で、SDGsは世界の共通言語なのだとあらためて実感しました。いま問題意識を持っているのは、さまざまな企業や個人から「どう取り組めばいいかわからない」との声が聞かれること。より身近でわかりやすい提示ができないか模索中です。同年代の人にも、SDGsに取り組む楽しさをもっと広めていきたいです。

※所属・職名等は取材時のものです。

この記事は、『塾』2020 AUTUMN(No.308)の「特集」に掲載したものです。

『塾』2020 AUTUMN(No.308)