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こちら慶應スポーツ新聞
〜慶應生の”今”を追い続ける記者の”今”〜
プロフィール
塩田隆貴(しおだたかき)
在学生/文学部人間科学専攻2年慶應義塾体育会の試合や練習の様子を取材し、スポーツ新聞を発行している学生団体、慶應スポーツ新聞会の編集長(取材時は副編集長・男子ソッカー班チーフ・レスリング班チーフ)。
初めは、スポーツに興味なんてなかった。そんな彼がスポーツ取材に魅せられていったワケ
塩田さんが「伝える」活動に興味を持ったきっかけを教えてください。
実を言うと、最初から「大学スポーツの良さを広めたい」という気持ちで入部したわけではありません。高校時代、写真部に所属していて「大学でも写真を撮れたらいいな」と考えていたところ、先輩が「スポーツ新聞という選択肢もあるよ」と教えてくれたのが最初のきっかけです。
ケイスポに入部して初めて取材されたのは何部ですか?
野球部です。しかし野球部の試合はインタビューが限定的で、ネット越しに写真を撮り記事を書いて完結という形で進むため選手と直接関わる機会が多くありませんでした。選手との距離が遠く、取材している実感が湧きにくかったです。
取材をすればするほど、サッカーに惹かれていった
サッカーは撮影場所が素晴らしい。ゴールネットの横という特別な場所で撮影できるのは、大学スポーツ新聞の特権です。試合後には、選手に直接インタビューをしたり「お疲れ様でした」と声をかけたりすることもできます。
また、ケイスポに入った時、全国高校サッカー選手権に出場した母校の先輩が慶應義塾体育会ソッカー部でキーパーをされていて、「あのとき選手権で見た選手が、今、慶應で活躍しているんだ」と感動したのもソッカー部の取材に行くようになった大きなきっかけです。
「信頼関係があるから撮れる写真こそ、最も価値がある」。学生記者をするということ
ソッカー部の取材では、肝心の「一瞬」を捉えるために、どのような工夫をされていますか?
カメラ機材を一脚と椅子に固定して構えた状態で90分間、常にボールを追いかけます。1試合で1,500枚ほど連写しますが、それでも、決定的な瞬間を撮り逃すことはあります。「うわ、今ゴールが決まるのか」とか、(逆サイドでゴールが決まって)「こっちで決めてくれよ」と思うこともありますね。
「自分にしか撮れない写真」を撮りたい。だからこそ心掛けていること
ソッカー部の取材で撮った写真の中で、「会心の1枚」はありますか?
2025年の早慶戦で撮った西野純太選手の写真です。彼は、前年からスタメンで活躍していましたが、2024年12月に脳しんとうを起こしてしまい、春のリーグ戦には1試合も出場できませんでした。脳しんとうは2回やると危ないと言われており、彼は、この早慶戦を最後にサッカーを辞めることを決めていました。しかし、トップチームの練習に参加できない間も、Bチームの練習に顔を出して指導したり戦術を考えたりと、陰で努力していました。そんな彼が、最後の試合で、しかもヘディングで、ゴールを決めたのです。そのパフォーマンスを間近で見られた時は、涙ぐみながらシャッターを切りました。
塩田さんご自身が「いい写真だ」と感じるのは、どのような写真ですか?
極論かもしれませんが、良いカメラ機材さえあれば、誰でもある程度の写真は撮れてしまいます。重要なことは、機材の良し悪しや技術論以上に「自分にしか撮れない写真」を撮ることです。例えば、スポーツ報知の宮崎亮太さんというカメラマンは、契約更新時には大きな判子を持って行ったり、クリスマスには選手にサンタの帽子を被らせたりと工夫をされています。そうした「信頼関係があるからこそ撮れる写真」こそが、最も価値があると思います。
記者として心がけていることはありますか?
ひとつは「はしゃぎすぎない」ことです。スポーツ新聞の記者には、普段は入れないような場所まで入らせていただく貴重な機会があります。しかし、あくまでも「学生記者」としての立場をしっかりとわきまえ、節度を持って行動することを心がけています。
もうひとつは、選手に関してネガティブな発言はしないことです。「なんで負けるんだ」と怒りのような感情が湧くことがあっても、ネガティブな発言をしたり、「また負け」のような揶揄する見出しをつけたりするようなことは絶対にしたくありません。あくまで同じ大学の仲間が戦っている姿を応援する立場で取材したい。どんなにひどい負け方をしたとしても、「次こそは」という前向きな雰囲気で記事を書くことを意識しています。
「仕事」じゃなくて「趣味」。自分がやりたいことをやっているだけ。
日々忙しく記者活動をされていますが、遊びやアルバイトなど、学生ならではの楽しみを諦めてでも活動をしようと思える原動力とは、何なのでしょうか?
ケイスポは、僕にとっては「趣味」のようなものです。もしギターを弾きたければギターを弾いているでしょうし、写真を撮りたければ写真を撮っているでしょう。今、僕が一番やりたいことが、ケイスポでの活動なのです。仕事で土日を犠牲にしているというよりは、アーティストのライブや遊園地に行くように、趣味に時間を費やす感覚で活動しています。
「人生そのもの」。慶應生だからこそ経験できた、特別な日々
もし大学1年生に戻れるとしたら、どのサークルを選びますか?
当然、ケイスポです。
塩田さんにそう思わせる、ケイスポの魅力とは何でしょうか?
ひとつは、普段は立ち入れないような場所で取材ができることです。ゴールネットの横で撮影できる機会は、プロのカメラマンでもなければありません。2024年はサッカーの早慶戦が国立競技場で開催され、ピッチレベルまで入らせてもらいましたし、エスコンフィールドのグラウンド内に入る機会もいただけました。ケイスポでは、このような貴重な体験ができます。
そして何より、同年代のひたむきに頑張っている人たちに、気兼ねなく会えることです。彼らのことは、心の底からカッコいいと思っています。「人生の夏休み」と呼ばれる時期に真剣にスポーツに打ち込むのは、僕には到底できないことです。真剣にスポーツに取り組む選手たちを間近で見ていると、こちらも無為に大学生活を送ってはいけないなと強く感じます。
塩田さんにとって、ケイスポの記者として日々を過ごすことは、どのような意味を持ちますか?
…人生そのものかもしれません。もしケイスポに入っていなかったら、今の自分は想像できません。一体何をしていたんだろう、と思いますね。
大学スポーツの知名度はまだまだ...。静かに汗を流す選手たちにもスポットライトを当てたい
今後、ケイスポとして、目指していきたいゴールはありますか?
大学スポーツの知名度が、選手の頑張りに比べて低いと感じています。野球やラグビー、慶援指導部の知名度に対して、サッカーやレスリングなどは、まだ知名度が高いとは言えません。比較的マイナーな部活でも、選手たちは一生懸命練習しています。それらの競技の知名度を上げていくためには、ケイスポに多くの部員が必要です。2026年度は新入生を50人ほど迎えて、100人を超える組織にしたいと考えています。