慶應義塾

古澤純一郎:目指せ! 日本一楽しいゴミ拾い

執筆者プロフィール

  • 古澤 純一郎(ふるさわ じゅんいちろう)

    その他 : NPO法人海さくら理事長法学部 卒業

    1998政

    古澤 純一郎(ふるさわ じゅんいちろう)

    その他 : NPO法人海さくら理事長法学部 卒業

    1998政

2019/07/23

「ウルトラマンになりたい!」幼少期、自分もふくめ、私の周りには地球を守るスーパーヒーローになりたい友達が沢山いました。いつからだろう、地球のために頑張っている人を「偽善者」「意識高い系」と呼ぶようになったのは……。

私は東京の船具屋の息子として生まれ、海・川にお世話になって生きてきました。現在ゴミ拾いや海への関心を高める活動を14年間していますが、もともと「ポイ捨て」をしていた人間であり、何か、自分の「利」がないことをやっている人達を「偽善者」「意識高い系」と、どこか頭の隅で思っていた人間でもあります。しかし現在、「地球を守るため」というと大げさですが、子供達に大好きな「海」「自然」の素晴らしさを伝えたい、そしてきれいな海を回復させたいと心底思うようになっています。

「地球のため」というよりは、ただ自分がやりたいこと自体が、「江の島の海にかつて生息していたタツノオトシゴがもどってくるくらいに海をキレイにしたい」ということです。その過程はとにかく「楽しく!」やることが大切なのです。私達の心に残っている小さな「ウルトラマン魂」を、そろそろ点火させてもいい時期に来ていると思います。海は今、それほど深刻な状況で、悲鳴をあげているのです。

海のゴミは川から、川のゴミは街から、街のゴミは人の心から

「海岸に流れ着くゴミ」「海に流れているゴミ」の約7~8割は「川、そして街」からやってきている、ということを知らない人がほとんどかと思います。海のゴミは、自分達の生活から海へと流れているのです。

私は大学時代、体育会庭球部に所属しており、強い選手ではなかったので、ボールボーイばかりでした。当時のボールボーイは、水も飲めずに、すべてダッシュでボールを拾い、レギュラーの選手にボールを手渡し、試合のときは、学ラン・制帽でボールボーイをするのです。レギュラーになれなくて悔しかったのですが、いつの間にか、ボールボーイでは日本ランキングに入るのではと思うくらい自信をつけました。

体力、根性、また「拾うこと」に関しては自信があったので、2005年にゴミ拾いを開始したとき「江の島の海岸(西浦)のゴミは、1人で全部拾いピカピカにしてやるぞ!」と意気込んでいました。しかし、ゴミの多さに驚き、「今日はここだけはキレイにする」と範囲を狭め妥協。翌月になると、先月キレイにしたところには、ゴミがまた沢山!

1人だとつまらないし、到底拾いきれないと思い、任意団体「海さくら」をつくり協力を仰ぐことにしました。そして無理やり、友達や後輩に来てもらい、月に1回のゴミ拾いを始めたのですが、海水浴客や観光客が少ない季節にもかかわらず、拾っても拾ってもゴミはまた海岸にあったのです。

「なんで?」と疑問を抱き色々と調べてみたところ、「海のゴミは川から、川のゴミは街から、街のゴミは人の心が出している」ということを知ったのです(実際にそれを知ったのは活動を開始してから2年たったときでした)。

14年間ゴミ拾いをしておりますが、実感としては、90%以上が生活から出た街のゴミだと思っています。それくらい、街のゴミが海に流れ着くのです。そのため、この江の島の海をキレイにするためには、街の人達にこのことを伝えていかないとキレイにならないと思ったのです。

街の人に海に関心をもってもらうためには

「ゴミ拾いをしよう!」「海をキレイにしよう!」と活動当初は眉間にしわを寄せながら、無理やり友達や後輩にゴミ拾いに参加してもらっていました。以前はポイ捨てしていた私の急な変化に皆、違和感を抱いたと思います。そのうち、だんだんと参加してくれなくなりました。また、自分も「ゴミ拾い」のときに、毎回電話をして来てもらうことに疲れてきました。何より自分自身がつまらない……。

「ゴミ拾いしよう」とか「海をキレイにしよう」と大きな声を出されても、お付き合いで参加するだけでは、「行きたい!」にはなかなか繋がらないのです。そして「環境に興味がある人達ではなく、街で生活している普通の人達に伝えていかないと海はキレイにならない」と、悩みました。

私自身の「心の変化」は、ニュースを見るよりも、自分で見て体感したときに起こります。1回でもゴミ拾いに来てくれれば、ゴミの多さにビックリし、そのゴミが生活から来ていることを知り、心の変化が起きると思いました。普段、街で生活している人にこれを体験、体感してもらいたい……。

ではどうすれば「海岸に来てくれるのだろう?」「自分だったらどうだろう?」。「かわいい女の子が水着でいてくれたら……」「美味しいものが食べられたら」などが頭に浮かんできました。つまり「楽しそう!」がないとそこに足を運ばない。

でも街の人達はサーフィンや海遊びをしない人達がほとんどです。そこで「海さくら」を立ち上げて2年目の2007年、「目指せ!日本一楽しいゴミ拾い」というスローガンを掲げ、海で楽しいことをしながら、そのなかで押しつけがましくなく、海の現状を体験、体感してもらい伝えていこう! と決めたのです。

様々な企画で人を呼び込む

まずはゴミ拾い自体のイメージを変えたい。ゴミ袋をかわいくし、参加してくれる人にスタンプカードを渡し、スタンプが満たされると「ゴミ拾いの達人Tシャツ」がもらえるようにしました。

イベントも行いました。海に流れ着くタバコのフィルターを5分間で誰が1番拾えるかというゲーム(排水口が海の入口ということや、街と海のつながりを説明)、面白いゴミを拾った選手権(面白いゴミを最後に発表してもらい、どんなゴミが落ちていたかをみんなで共有)それぞれの種目で1位になった方には、江の島特製いかの塩辛をプレゼント。ゴミ拾いに参加してくれた方のファッションを紹介。ゴミ拾いのあとにまかない料理をつくり、みんなで夕日を見ながらくつろぐ、などなど、様々なことを企画しました。

すると少しずつはじめての方が来てくれるようになり、今は多いときには、1日に1000人も来てくださるようになりました。

特に現役のお相撲さんがまわしをつけて一緒にゴミ拾いをし、キレイになったビーチで参加者と相撲ができたら楽しい、という発想で生まれた「どすこいビーチクリーン」には、多くの街の方たちが来てくれるようになりました。サッカーチーム、湘南ベルマーレの選手にも来てもらいました。そこで当時の湘南ベルマーレの社長と仲良くなり、15000人動員される湘南ベルマーレのサポーターの皆様に「海にゴミは行かせない!」を合言葉にスタジアムで動画を流し、スタジアムでのホームゲームの試合終了後にゴミ拾いをする(一年で約20試合)、LEADS TO THE OCEAN(通称:LTO)を日本財団様と一緒に立ち上げることができました。

現在LTOには、Jリーグ9チーム、プロバスケットボールチーム1チーム、プロ野球チーム1チーム、合計11チームが参加し、各地で年間約220回ゴミ拾いを実施し、約250万人の街の方たちに海の現状を伝えられるようになりました。

そのLTOの活動では、ゴミを拾ったらサッカーボールになるゴミ袋を制作、使用したり、数多くゴミ拾いに参加してくれた方は「ゴミ拾いマスター」としてグラウンド内で選手から表彰状がもらえることにしています。

その他、釘を1本も使用しない「釘のない海の家」を建設したり、海遊び、外遊びする子供達が減ってきたので、「ちびっこBEACH SAVER パーク」を浜辺につくったり、海の日に青いサンタクロースの恰好でゴミ拾いしたりと、本当に沢山のチャレンジをしてきました。しかし、いまだ、海のゴミは減っていません。

湘南海岸で1年で回収されるゴミは、鎌倉の大仏、47体分(約6000トン)。当然、回収されないで海に流れていくゴミ、沈んでいくゴミは、その何倍もあるはずです。

2050年には、海では魚の量よりもゴミの量が多くなると言われています。本当にこのままでは、そうなると危惧しています。

どすこいビーチクリーンの様子

エコブームとSDGs

我々の活動10年目(2015年)に、組織をNPO法人海さくらにしました。そのとき、国連サミットでは持続可能な開発目標(SDGs)が採択され、国際目標の1つに「海の豊かさを守ろう」が2030年までの国際目標になりました。

昨年くらいから「スターバックスがプラスチック製ストローをなくす」「各地でレジ袋をなくす」などの報道がされるようになり、海への関心が高まり、我々の活動を後押ししてくれています。しかし、そこにはどうしても「他人事」で自分事ではない伝え方になっているのでは、という懸念もあります。つまり「あっ、スターバックスがプラスチック製ストローを廃止するのね」で意識がとまり、「なぜ、なくそうとしているのか?」「なぜ、レジ袋をなくそうとしているのか?」と個人が考えるまでに達していないと思うのです。

「なぜ?」が伝わっていないので、このままだと、ゴミは海に流れ続け、悲惨な海になるのではと思います。逆に「ゴミがなくなるとこんな素敵な海になる」ということが、可視化されていません。

このSDGsからの大きな流れを一過性のブームにせず、これからも我々は、「なぜ?」や「海の未来予想図」をわかりやすく説明しながら、「目指せ!日本一楽しいゴミ拾い」活動を実施していきます。

そろそろ「海にゴミは行かせない!」と皆様の心の隅にまだある小さなウルトラマン魂を海や自然に向けていただけると嬉しいです。海は人間だけのものではなく、魚や海鳥を含めたほか皆のものです。魚をさばいていたらゴミが出てくるような状況にしたくありません。ゴミはいつか未来の子供に戻っていきます。やるなら今しかない!

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。