慶應義塾

【特集:脱オフィス時代の働き方】座談会:テレワークは働き方に何をもたらしたのか

登場者プロフィール

  • 松岡 利昌(まつおか としあき)

    その他 : 日本オフィス学会会長その他 : 経営コンサルタント文学部 卒業経済学研究科 卒業

    塾員(1984文、88経管研修)。建築、デザインの知識と経営戦略支援の実績との融合を目指して、日本的ファシリティマネジメント(FM)コンサルティングサービスを実施。京都工芸繊維大学特任准教授。元名古屋大学特任准教授。

    松岡 利昌(まつおか としあき)

    その他 : 日本オフィス学会会長その他 : 経営コンサルタント文学部 卒業経済学研究科 卒業

    塾員(1984文、88経管研修)。建築、デザインの知識と経営戦略支援の実績との融合を目指して、日本的ファシリティマネジメント(FM)コンサルティングサービスを実施。京都工芸繊維大学特任准教授。元名古屋大学特任准教授。

  • 高田 朝子(たかだ あさこ)

    その他 : 法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授経営管理研究科 卒業

    塾員(1996経管研修、2000経管研博)。モルガン・スタンレー證券会社勤務を経て、Thunderbird 国際経営大学院修了。博士(経営学)。高千穂大学経営学部准教授を経て現職。専門は危機管理、組織行動。著書に『女性マネージャーの働き方改革2・0』等。

    高田 朝子(たかだ あさこ)

    その他 : 法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授経営管理研究科 卒業

    塾員(1996経管研修、2000経管研博)。モルガン・スタンレー證券会社勤務を経て、Thunderbird 国際経営大学院修了。博士(経営学)。高千穂大学経営学部准教授を経て現職。専門は危機管理、組織行動。著書に『女性マネージャーの働き方改革2・0』等。

  • 島津 明人(しまず あきひと)

    総合政策学部 教授

    2000年早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程修了。博士(文学)。東京大学大学院医学系研究科准教授、北里大学人間科学教育センター教授等を経て現職。専門は臨床心理学、精神保健学。公認心理師、臨床心理士。著書に『Q&Aで学ぶワーク・エンゲイジメント』等。

    島津 明人(しまず あきひと)

    総合政策学部 教授

    2000年早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程修了。博士(文学)。東京大学大学院医学系研究科准教授、北里大学人間科学教育センター教授等を経て現職。専門は臨床心理学、精神保健学。公認心理師、臨床心理士。著書に『Q&Aで学ぶワーク・エンゲイジメント』等。

  • 鶴 光太郎(司会)(つる こうたろう)

    商学研究科 教授

    1984年東京大学理学部数学科卒業。オックスフォード大学 D.Phil. (経済学博士)。経済企画庁調査局内国調査第一課課長補佐、OECD経済局エコノミスト等を経て現職。専門は比較制度分析、雇用システム等。経済産業研究所プログラムディレクター。著書に『人材覚醒経済』等。

    鶴 光太郎(司会)(つる こうたろう)

    商学研究科 教授

    1984年東京大学理学部数学科卒業。オックスフォード大学 D.Phil. (経済学博士)。経済企画庁調査局内国調査第一課課長補佐、OECD経済局エコノミスト等を経て現職。専門は比較制度分析、雇用システム等。経済産業研究所プログラムディレクター。著書に『人材覚醒経済』等。

2020/12/07

「リモートで働く」ということ

新型コロナウイルス感染症の流行拡大で、周知の通り、オフィスワーカーの働き方が激変しました。毎日決まった時間に通勤して職場に行って働くという、以前は当たり前であったことが当たり前でなくなった。これはコロナが終息しても、たぶん不可逆的な動きなのだろうと思っています。その意味を、本日は皆様と多面的に考えていきたいと思います。

まず1つの大きな柱として、そもそも「リモートで働く」という意味をどう捉えるべきかを考えてみたいと思います。今までは考えたこともなかったけれど、やってみれば案外できてしまった。まさに「脱オフィス」が実現してしまったということだと思うのですが、一体そこで何が起こり、何がもたらされたのだろうか。そして果たして効率化が進んで生産性が上がっているのか。また逆にリモートではできないことというのは何なのか。

2番目の柱としては、コロナ流行以前から、ここ数年働き方改革が言われてきました。こういったリモートの働き方が進む中で働き方改革はどうなったのだろうか。進んでいるのか、それともマイナスになっているのか。そういった観点から現状を評価して、テレワークで出てきたメンタルの問題なども議論できたらと思います。

3番目の柱として、これからのオフィス環境はどうなっていくのかを考えたいと思います。ある程度テレワークが定着し、アフターコロナの時代になったとしてもオフィス環境が以前と同じ状況に戻るとは考えづらい。そうすると、テレワークをしている人が一定人数いる中でのオフィスの役割とは何だろうか。その中で本当に出社し、対面でしかできないことは一体何なのか。このあたりが問われてくるのだろうと思うのです。

今、政府も「脱ハンコ」を推進していますが、そういうことを含めて、オフィス、会社組織、そして社会の変化があると考えられます。雇用、また働き方もいろいろと変わってくるだろう。副業の推進ということもそうだと思います。そうした中でわれわれのライフスタイルや価値観も大きく変わっていく可能性があると思っています。

まず最初にテレワークのそもそもの意味や意義をどう考えるか。島津さん、いかがでしょうか。

島津

テレワークへの移行は、やはり当初はかなり強制的な形で始まったのだと思います。皆さん多少無理をして始めたところもあるかもしれません。それまでは、毎日同じ時間帯に同じ場所で同じ人たちと同じように働くことが日常だったのが、働き方をかなり考え直さなければいけなくなりました。

従来の接触型の働き方が非接触型の働き方になった状況で、個々人が自律しながらも分散した場所で、協働しなければいけなくなった。こういった非常にかじ取りが難しい状況で働くことが求められているのだと思います。

心理学で言うと、人間には大きく3つの欲求があります。1つは自律性です。他の人から強制されることなく、自律的に行動したいという欲求。2つ目は親和性です。つまり、他の人と関わっていたいということです。この関わりの部分がテレワークという状況でどのように充足できるのか。それから3つ目は有能性です。自分の能力をきちんと発揮したいということですが、その裏返しに承認欲求というものもあるのかもしれません。

最近、自分の仕事が上手くできているかどうかを確認したがる人たちが、とても多い気がします。おそらく自分がきちんと能力を発揮できているかどうか、あるいは自分の仕事が他の人に認められているかどうか、手応えがなくて心配になっているのではないかと思います。

コロナの状況が始まり、メンタルヘルスにどのような影響があるのか、6月頃、緊急事態宣言が解除された後から追跡調査をしているのですが、在宅日数によってストレスの症状がどの程度出るかは、結構、個人差があることが分かってきました。

どういう人にストレス症状が出やすいかと言いますと、1つは普段から同僚と気軽に話ができるような機会をあまり持っていない人です。そういう人たちは在宅日数が多くなるとストレスの数値が上がってしまうようです。ところが、普段から気軽に話ができる同僚との関係を持っている人は、在宅日数が多くなってもそれほどストレスの数字は上がらない。

最近よく雑談が大事だ、と言われていますが、これをもう少し細かく見ていきますと、おそらく普段から気軽に何かあったら頼れる人がいるかどうか、そういった関係性を普段の職場の中で築けているかどうかが、非常にクリティカルなポイントになっているのではないかと思っています。

高田

島津さんの話はとても興味深いです。私はリーダーシップが専門ですが、リーダーシップはやり過ぎると、部下が鬱になる可能性を秘めています。リーダーシップは良い文脈で語られることが多いけれども、行き過ぎると害になる。経営学というのは基本的に「効率的にいっぱい働きなさいよ」という産業革命以降の発想から始まっている学問なのですが、「働く」ということが部下にとってもハッピーなうちはよいですが、バーンアウトが起きてしまったり、様々な弊害が発生することもあります。

今、島津さんがおっしゃった、オフィスの中で適度に雑談ができていたり、雰囲気がいいところではあまりメンタル疾患の人が出ないということは以前から言われていますが、これはリモートワークになっても同様だということですね。

別の観点から言うと、日本の会社というのは、多くの場合、個人があまり大きな意思決定をしなくていいようにできていると思うのです。限定された範囲の中で意思決定をすることは求められますが、クリエイティブな意思決定とか、「責任取って俺がやるよ」みたいな大きな意思決定は、大きい会社ほどあまり必要ない。なので、意思決定をすることが、そもそも日本のビジネスパーソンは下手だったんです。

なぜそれでもよかったかというと、その後ろにあるのは常態化した長時間労働だと思うのです。これを私は「一緒にいた時間評価」と呼んでいるのですが、朝から晩まで一緒にいると、ある種360度評価ができますよね。あいつは夜遅くまで頑張っているとか、あいつは今回失敗したけれどもすごく一生懸命やっていたからそこを評価してあげようとか、そういったもので今まで上手く回ってきたのが日本の会社だと思うのです。

ところがリモートになってしまうと、一緒にいて長い時間で全体を見て部下を評価するということが難しくなります。リモートというのは、やはりアウトプット、成果重視になるわけです。そのアウトプットだけで評価する/されることがいいのかという不安があって、それがたぶん意思決定やそれに伴う承認への不安につながってくるのだろうと思うのです。

リモートという形態は今まで経営の現場のマイノリティであることが多かった女性にとって、チャンスとなる面も大いにあるのですが、とりあえず、今日のメンバーの中で唯一ダイバーシティを広げている人間から言わせてもらえれば、リモートになって、「おじさん」たちが長い時間一緒にいた時に評価をしてきたシステムが壊れたということなのだろうと私は捉えています。

テレワークの様々な課題

松岡

これまでオフィスのあり方はどうなっていたかということから言いますと、このコロナが始まる前までは、大きなビル1つにセンターオフィスとして集約しようという動きが大きかったのです。基本的には部長さんが窓際にいて、課長さんがいてという従来型の形です。

ところが、センターオフィスと言われる本社オフィスに、まさにコロナ禍において、感染のリスクが高まるので皆が集まれなくなった。それで強制的に働かされる場所が家になってしまった。在宅勤務でテレワークをしなさいよということになって、家が働く場所となったのです。結局テレワークというのは、そもそもセンターオフィスで働いていた人たちが、それ以外のところで働かされるようになったということです。

現在、テレワークで働いているのは全従業員の大体30から50%ぐらいのようですが、だんだんと、やはり顔を見ないと働けないという声もあがってきている。もう1つの理由は、在宅で働くこと自体が、家庭では非常に難しいという面もあります。

つまり家にはオフィスの設えがないために、非常にストレスフルになっている。かつ従来だと、皆が課長の顔を見て働いていたのが、顔がまったく見えなくなったためにどこで何をやっているんだという話になってくる。

日本はジョブ型の人事制度ではなく、時間管理はできているとしても成果主義ではないので、できる人はどんどん仕事をするのですが、できない人は仕事をしなくなる。そうなると、結局できる人ほどプレッシャーになって、家でテレワークをすればするほどストレスがたまって、まさにストレスフルな状況に追い込まれてしまうということが、現実にもう起き始めています。

そういう意味で、テレワークはまさに本社オフィスがあるべき姿を改革するということと、もう1つは、それ以外のところで働く時の選択肢を選べる働き方ができるかどうかが課題ではないかと思います。

私は従業員が働き方を選べる、多様で柔軟な働き方を実現することと、新たなテクノロジーをどのように活用していくのかの2つの両輪がとても大事だと、実はコロナの流行以前から申し上げていました。この2つが揃わないと、なかなか働き方改革は次のところへ行けない。そのまさに1丁目1番地がテレワークだと思っています。

つまり、日本の会社では、多様で柔軟な働き方改革と新たなテクノロジーの活用が充分に行われていないところに、この春から強制的なテレワークが始まってしまったところが多かったわけです。考え方から何から、ありとあらゆる面でそうです。

そこで、このコロナ禍で先進的な取り組みをしていた企業とそうでない企業の間で、ものすごく差がついてしまったと思います。

ICTのリテラシーをめぐって

テレワークの問題というのはかなりの程度がテクノロジーの問題であるところがありまして、今ではオフィスをデスクトップ上で再現するということがかなりできるようになっています。Zoomなども、私は以前はほとんど使うことがなかったのですが、やってみると、ほぼ対面と同じように感じられ、自分が思っていたよりもできるという印象です。

そうなってくると何ができないのか。島津さんがおっしゃったような、雑談とかちょっとした質問をしたいというようなこと。つまり、あらかじめ予定されていないタイプのコミュニケーションが難しいという状況が出てきている。ただ、いろいろな取り組みを聞いていると、これもやりようがあるのではないかとも思います。

高田さんがおっしゃったような中高年のおじさんは、やはり「職場」というイメージを強く持っているから、そこに大変こだわりを持っていて意識改革ができない。早く元の状態に戻りたいと思っている人たちが多い。今の経営層に近い人たちはそういう考えの人も多いと思います。

島津

鶴さんが言われたようにテクノロジーの進化は、ずいぶん大きいものがあって、Zoomにしても、ずいぶん使いやすくなってきたと思います。これをどのくらい使いこなせるかどうかが確かに重要ですが、反面、こういったテクノロジーが進化しすぎた場合、逆に人間はもしかしてテクノロジーに支配されてしまうのではないかという点がなきにしもあらずです。

最近、人類生態学の先生と話をした時に、こういった便利になった社会というのが本当に人間にとっての幸福につながるのかどうか、ちょっと考えてしまいました。テクノロジーの利便性のメリット、デメリットを考えなくてはいけないかと思うのですが、確かに働き方の選択肢が広がったのは非常に大事なことだと思います。

これまで対面でしか会議ができないと思い込んでいたのが、リモートでもやればできるじゃないかと、意識をガラッと変えさせたことのメリットというのは、やはりすごく大きいですね。

高田

確かに今、ITにおいてイノベーションが起きているわけですよね。イノベーションというのは、最初はたぶん10何%の人しか受け入れられないから多くの人々は抵抗を感じます。しかし、今のこの変革の時期というのは、そんなに悪い時期ではないのではないかという気が個人的にはしています。

私は、今年サバティカルなので教授会に出ていないのですが、同僚は、オンライン化されたために本当に長い教授会がなくなってよかったと言っています(笑)。ところが、偉い先生方は我慢ができなくなってしまって、今月から教授会を対面でもやることになったそうです。

これは鶴さんがおっしゃっていた、昔のパターンでないといけないという人たちが多いということだと思うのです。アカデミアの世界でも、そういった人たちが多くの場合決定権を持っている。だから、それに逆らうことができるぐらいの理論武装とか便利なツールが出てこないと、改革の速度は遅くなるのかなと思っています。

松岡

その状況はよくわかります。鶴さんの言われたテクノロジーベースで言うと、ICTの進化によって、それを使いこなせる人と使いこなせない人の格差、いわゆるICTリテラシーの問題がすごく大事になってきます。

若い人たちはもちろん皆ICTを使えるけれども、年配の意思決定者たちはなかなか上手に使いこなせない。そうして、ますます格差が開いてしまうところがある。

一方、おじさんたちの強みは何かというと、ICTを介在しないコミュニケーションリテラシーでした。これはもう腹芸の世界で、いわゆる暗黙知のコミュニケーションを得意にしている。この人たちが、テクノロジーを使って遠隔で働かなくてはいけないという話になった途端に弱者になってしまい、やはり意思決定のようなところが企業の中で非常に不明瞭になっている。

若い人たちはばらばらに働いているから、情報も分散して偏在化してしまう。やはりどこかで情報を一極に集中させて意思決定しないといけないわけです。経営陣は、意思決定を行う時にはフェース・トゥ・フェースで、空気を読みながら決めていくコミュニケーションリテラシーが重要になってくるわけですが、このあたりの弱点がまさに浮き彫りになってきている感じがするのです。だから企業もものすごく悩んでいるのだろうと思います。

暗黙知という言葉も出ましたが、日本のメンバーシップ型の雇用の中では皆同じところに長くいて、阿吽(あうん)の呼吸で通じていたところもあった。高田さんがおっしゃったように、そのことによって、明確に言わなくても皆同じことを考えているような、コーディネーションシステムとしてものすごく効率的なものを日本の大企業はつくり上げてきた。

皆が同じところで、同じ釜の飯を食う。上司も部下も相手の顔が見えることによって安心している。それはそれですごく効率的なシステムなのですが、そこで抜け落ちてしまっていることもいろいろあったと思うのです。このコロナ危機で何か日本の企業の組織や働き方の、ものすごく本質的なところが炙り出されて、われわれが無意識でやっていたようなことについてもいろいろな気付きが出てきているのでしょう。

リモートと「働き方改革」

次に、近年働き方改革と言われていましたが、その視点から考えてみたいと思います。長時間労働の是正の面など、働き方改革の流れと、テレワークでの働き方の課題との連関をどう考えるか。またメンタル問題の話ももう少しできればと思います。

高田

私はリモートワークについては結構ポジティブなんですね。私たちの国は、何かのものすごい外圧がないと基本的に変わってこなかったという歴史があるので、この危機を契機に変わっていけばいいなと思っているのです。

皆が出社するという今までのシステムは顔を見て判断できるという点では合理的なシステムだったわけです。今、阿吽の呼吸とおっしゃいましたが、ビジネスの現場では「察する」ということがすごく大事だった。上司の半歩先を読めることができるビジネスマンの条件でした。

阿吽の呼吸とは、上司が次に何をしたいかを察することで、それは常に一緒にいるからこそできることです。リモートになってしまうと、一緒にいたことで得る情報で未来を予測するという情報処理ができなくなって、逆に自分で集めてきた情報を自分なりに加工して何とかするという能力がすごく求められるようになってくるのだろうなと思います。

働き方に絡めて言うなら、これまで重要な情報は、アフター・ファイブだったり残業の時間などに出てきていた。これは家庭がある女性にとっては不利なシステムで、5時に帰ってしまう人たちにとってはその情報にアクセスしようがない。私はオールド・ボーイズ・ネットワークと呼んでいるのですが、今までおじさんたちの一緒にいた時間の長さで形成されるネットワークに女の人は入ってこられなかった。

ところが、リモートになると、オールド・ボーイズ・ネットワークの形が変わってしまうので、これは女性たちにとってはプラスなのではないかと思います。もちろん現実を見れば、非正規雇用の女の人たちは最初に切られてしまいますから、全部の女性にとっていい兆候だとは決して言えないですけれど、少なくともキャリアを志向している女性、もしくは正社員でずっと頑張って働こうと思っている女性には良い側面もあると思っています。

松岡

まさに働き方改革は何のためにあったかというと、労働時間を短縮しながら労働生産性を上げていこうということだと思うのです。しかし、リモートで家で働きなさいという話になると、さぼっている人もいる一方で、過剰に働いている人たちもいる。

1人で家でずっと集中して仕事をし続けている若い人たちが、孤独感や疎外感に苛まれたりするのは、そうならざるを得ないところもあって、決して生産性が上がっているわけではないと思います。日本生産性本部の調査では、リモートワークになって約70%の人は仕事の効率が下がったと感じたという調査結果も出ています。

もう1つ大きな問題はイノベーションだと思います。新しいことをつくり出すための知恵を出すには、直接関係ないことをいろいろやりながら、ああでもない、こうでもないという雑談の中からアイデアが生まれたり、プロトタイピングをしたり、皆でワーワー言いながら生まれてくることが多い。そういう部分がリモートではまだできていない。

そう考えると、やはりリモートだけで生産性を改善していくというのは、おそらく現時点では非常に難しいかなと思います。

私は、リモートとリアルのベストミックスみたいなものが究極的には必要になってくると思っています。イノベーションを起こすための準備をするにはリモートでいいけれど、準備ができた人たちがフェース・トゥ・フェースで集まって、ああでもない、こうでもないとやりながら、知恵を絞って何かを生み出していくという作業がやはり要るのではないかと考えています。

生産性とワーク・ライフ・バランス

島津

生産性というキーワードも出てきましたが、心理学の中で生産性というのは大きく2つの領域に分けることができます。1つはインロールパフォーマンス、もう1つはエクストラロールパフォーマンスと言われるものです。

インロールパフォーマンスというのは、その人に決められた役割をきちんと正確に、ある一定の時間の枠の中で遂行できるかどうかということです。エクストラロールパフォーマンスというのは、松岡さんが言われたように創造性を発揮したり、あるいはもう1つ大事なのは利他的な行動、つまり困った人に対して手を差しのべるような行動です。コロナ禍において、テレワーク等の働き方がインロールパフォーマンスとエクストラロールパフォーマンスにどんな影響を及ぼしているのかということかと思います。

インロールパフォーマンスから言うと、マネジメントがしっかりしていて、職務の分掌や規律がきちんとしている組織であれば、場所がどこであろうがきちんと仕事ができると思うのです。ところが、何となく「これやっておいてね」みたいなマネジメントしかできていないところだと、リモートワークになった途端にインロールパフォーマンスが下がってしまうことが考えられます。

ではエクストラロールパフォーマンスはどうか。例えば新しいものを生み出すようなものでしたら、よく「ワイガヤ」と言いますが、ちょっとした刺激のある環境というものが必要かもしれません。それから利他的な行動は、リモートの環境でできるのかと言えば、おそらく上手な会社は、リモートでもお互いサポートし合うような関係性を確立しているようなこともあるのではないかと思っています。

もう1つ、ワーク・ライフ・バランスも、スピルオーバーとか流出効果と言われる視点から見ると分かりやすいと思います。これは働く人たちが仕事領域と、家庭・プライベート領域の2つを持っていると、そういったものの中で、時間であったりストレスとか役割が行ったり来たりするわけです。

例えば仕事が非常に忙しいと、労働時間が家まで持ち越されて、プライベートの時間を食ってしまう。これが仕事から家庭へのネガティブな流出効果、スピルオーバーです。逆の方向もあります。それは家事・育児がすごく忙しくて、リモートワークをやっているけれども、隣に子供がいておむつ替えしなくてはいけないといったことで、労働時間を食ってしまうことがあります。

そのように仕事と家庭・プライベートの領域を行ったり来たりする、こういった流出効果を考えなければいけないのですが、これはポジティブもネガティブも両方あるのです。リモートワークの生産性を考える時、ここを押さえていくことが大事ではないかと思います。

そこで大事になるのは個人差です。仕事とプライベートをきちんと分けること、これは「セグメンテーション・プリファレンス」というのですが、その境界線をきちんと区切りたい人にとっては、もしかしたら在宅勤務は難しいのではないかと思うのです。「俺はもう会社を1歩出たら仕事の話なんかせん」みたいな人は、プリファレンスの障壁が高い人です。ところが、フリーランスとか兼業、副業をやっている方というのは、24時間何らかの形で仕事と関わっている。プリファレンスの障壁が低い人たちだと思います。

今われわれがやっている追跡調査で、約1400人にセグメンテーション・プリファレンスについて聞いてみたところ、「家でも仕事のことを考えてもいい」という人は2割ぐらい。「どちらでもない」という人が2割、「考えたくない」という人は6割ぐらいです。そういった個人差も勘案しながらリモートワークというものの設計が必要なのかなと思うのです。

最適な「職場」とは?

生産性やイノベーション、それからワーク・ライフ・バランス、どれもすごく大事な問題だと思います。

私はテレワークの推進をかなり前から提案していました。その時に申し上げたのは、テレワークをやることによって職場よりも生産性や集中力が高まるという人がいるということです。皆、自分がどこで仕事をやるのが一番よいかは仕事によっても違うし、その時々によって条件は違うと思うけれど、それを選べるということが大事だということです。

「私は職場でやるのがやはり一番生産性が上がる」という人は職場でやればいい。だから皆が働く場所を選べる環境が大事なのですが、以前はその選択肢がないことが大きな問題でした。海外の研究などを見ても、そうした選択が可能であるほうが、大まかに言って生産性はやはり上がっているという結果が出ているようです。

もともと、日本の場合、職場が大部屋でなかなか集中できません。私が昔役所にいた時を思い出すと、電話が常に鳴っていてゆっくりものを考えられない。それで結局、残業なのです。

でも先ほどおっしゃった公私の切り分けというところは、コロナの前から、なかなか難しいと言われていました。例えば、育児中の人はテレワークがいいと思える反面、むしろ子供が一緒にいたら、邪魔するから働けないというお母さんが多いかもしれない。これはまさに島津さんがおっしゃった個人差で、1人1人皆が違う状況だからこそ、どのように選べるかが大きなポイントなのかと思います。

イノベーションについては、私は日本の環境では、やはりテレワーク的な環境で集中できるほうがイノベーションは起こせると思うんですね。でも欧米みたいに個室が当たり前だった職場では、皆ちょっと集まって、雑談をしながらアイデアを交換するのがすごく大事だよと、今ではシリコンバレーとかでは徹底して言われているわけです。

だからイノベーションの求め方というのも、方向性がいろいろなのだと思いました。

高田

テレワークの個人差というのは、まったくおっしゃる通りだなと思います。ロースクールの先生に聞くと、今年は男性も女性も離婚相談件数が過去最高なのだそうです。家庭内が上手くいかなくなってしまったら、テレワークどころの騒ぎではないですよね。

今までの働くイコール会社に通勤し、そこで仕事して帰ってくるものと、マインドセットされていたのが、突然、「家でやって」となった時に、仕事のやり方、生活の仕方が混乱して、危うくなってしまっている人もいるのかもしれません。一方で、いやこれはチャンスだと捉えている人もいるかもしれない。その人の置かれている環境とその人の性質にすごくよるのだろうなと思います。

ただ、今後のことを考えると、コロナがたとえ終わっても、またこのような事態が十分起こりえると考えると、ある種、企業も働く側も腹をくくる時期なんだろうと思っています。

「ウェルビーイング」という視点

松岡

私も、今後、また別の感染症が流行するリスクもあると思うので、もうこれは戻れない変化なのだと思っています。

われわれの働き方は、今まで大学を卒業したらいわゆる一括採用で1つの会社に就職するという1つのロールモデルできていた。「就職」せずに「就社」してきたのです。つまり会社に帰属することがメインになっていて、自分のスペシャルな専門領域を築くことをあまりしてこなかったことが問題かなと思うのです。自立性を持ち、独立自尊の考えで自分の能力を磨くということが求められる時代がやっと日本にも来たのかと感じています。

そういう意味では、先ほどのイノベーションもそうですが、個々の人が自分のパフォーマンスをどう上げていくのかということに真剣に向き合って考えるべき時が来たと思います。ただそれを家庭の中でやるのは難しい。したがって、私はサードプレイスという、オフィスでもない自宅でもない、第3の場所が答えになるような気もしているのです。

新たな働く環境をつくりながら自分たちの能力を生かしていくという、意識改革をやはりこれからやらなくてはいけないのではないでしょうか。

島津

先ほど生産性という言葉が出てきましたが、もう少し広い意味で、人間にとっての「ウェルビーイング」(よりよく生きるということ)という捉え方が重要かもしれません。生産性を高めることが、もしかしたら自分の健康を損なうことにつながっているかもしれない。例えば、在宅勤務でがむしゃらに仕事をすることによって生活習慣をないがしろにして、その犠牲の上に生産性を上げているのかもしれません。

また、誰にとっての生産性なのかという視点も大事です。在宅勤務をしているとWi-Fiの電波の取り合いになってしまって、自分を優先するとパートナーの生産性が落ちるということにもなりかねない。どのユニットで生産性を最適化していくか、システムとして生産性も考えていく必要があるのではないかとも思います。

もう1つ、松岡さんのサードプレイスの話に絡めてですが、これまで職場と自宅との往復の中で、移動時間という中間地点があったと思います。仕事にちょっと疲れても、嫌なことをふっと忘れられるような、クッションとなる時間や場所ですね。

ところが、「今日のZoomが終わったら、ご飯の用意」みたいな形で、オンからオフの移行に「間」がなくなってしまった。そうなると、仕事のストレスを家庭にすぐに持ち込みやすくなる、あるいは家庭のストレスを仕事に持ち込みやすくなってしまう。間の緩衝地帯がないわけです。この緩衝地帯をどのように組み立てていくかということも、これから試されるところかなと思いました。

私も最初、在宅を始めて大学の研究室に行けなくなった時、通勤時間がやはりリセットになっていたのだと感じました。私にとって研究室が一番能率の上がる場所だったので、以前はほとんど私は自宅で仕事をしていなかったのです。

しかし、だんだん慣れてくると、ドラえもんの「どこでもドア」みたいにすぐに仕事に取り掛かれることが快感になってきて、移動時間がないという世界がこんなに素晴らしいものなのかと思い始めた(笑)。自分の中でも転換があったように思っています。

多様になる「働く場所」

次にこれからのオフィスはどうなるのかを考えてみたいと思います。皆が集まる職場、物理的なオフィスがどのように変わっていくのか。従業員全員が来ないことを前提としたオフィスということで考えれば小さくしてしまったり、あるいはフリーアドレス(社員が自由に働く席を選べること)が前提になるのか。そもそも出社をして、そこでリモートでできない何をやるのか。会社でしかできないことは本当は何なのか。これらを突き詰めるとなかなか難しい問題だと思うのです。

松岡

オフィスについては、まさにオフィス学会でいろいろな研究がされていますが、まず先ほどお話ししたように、本社オフィス、センターオフィスはもうそれほど要らないのではないかということで、縮小傾向にあるのは事実です。

実際に東京でもオフィスの空室率は少しずつ上がってきています。そのようにセンターオフィスを見直す動きがあるのですが、なぜ見直されているかと言えば、そこに来る人数が減っているという理由以上に、センターオフィスで3密にならないような構造にするためです。ものすごく密な状態で働くのがわれわれの職場の特性だったので、これをどう改善するかです。

2メートルのソーシャルディスタンスを取りながら働ける環境をつくるために、一部の会社では逆に増床しているところもあります。つまりセンターオフィス自体の安全性を高め、また魅力付けをしないと、誰も来てくれなくなってしまう。家で上手に働ける人たちは、なぜ本社に行くのですかという話になってしまうわけです。

例えば大きなビルだと、ワーク・ライフ・バランスでいう「ライフ」をオフィスの中で経験できるようにすることもできます。様々なアメニティを設け、まるでリビングのようなオフィスがしつらえられて、そこに行くとリラクゼーションもできるし、自宅ではできないようなツールやテクノロジーも装備され、パフォーマンスが必ず上がるというような仕掛けです。そういったことをやらないと誰も会社に行かなくなってしまう。企業はその仕掛けを今懸命にやろうとしています。

もう1つの要は在宅ですよね。在宅勤務の調査をすると、大体リビングで働くか、寝室に小さなテーブルを持ってくるか、子供部屋をオフィス代わりにして働くことが多い。ですから、快適に在宅勤務をするための方策として、ハウスメーカーやマンションデベロッパーたちはいろいろな仕掛けを今、始めています。でも、ITのインフラも十分装備されていないところもあるので、限界も出てきている。

そこで出てきたのがサードプレイスです。昔からコワーキングとかレンタルスペースというのはあり、そこはITの装備は完璧です。不特定多数の人が集まり、感染リスクがあるということで使用にストップをかける企業が多かったのですが、ようやく今、個室型のスペースが使えるようになってきました。そうすると、例えば在宅で上手くいかない時にはそういう場所で働くことができる。

一方、自然環境が豊かな場所で働くというスタイルもあります。つまりバケーションができるようなところでワークもできるというワーケーション的な考え方です。例えば軽井沢などちょっと山の中で憩いながら、緑の中の、自然な空気の中で楽しく働く。そこはコロナの心配も少ないし、リラクゼーションもできるし、ITの装備は完璧です。和歌山県も白浜町にワーケーションの拠点をつくっている。現在、多様な働く場所が出てきていると思います。

問題は、鶴さんが言われたように働く人が、場所を選べるかどうかです。アクティビティ・ベースド・ワーキング(Activity Based Working = ABW)と呼んでいるのですが、業務に合わせて自分で働く場所と時間を選んでいいということです。

日本人は今まであまり選んだことがない。朝、会社に行ったら自分の席が決まっていたので、働く場所について考えたことがない。そういう人たちをどうやって意識改革に取り組ませるのか。これから企業もそういったことに取り組まなくてはいけないし、社会そのものが変わっていくような気がします。

島津

やはりオフィスに集まるとしても、同僚と物理的な距離を保ちながらも心理的な距離をどのように保持していくかがすごく大事だなと思います。在宅勤務やリモートワークが中心となると、出社する場合には、その日に誰と、何をやるのかということをきちんと決めてから出社するようになると思います。ただ何となく出社するということはこれからあり得ないだろうなという気がします。

そういった考え方で仕事というものを組み立て、場の設定を考える時に、その人がどんな仕事に従事しているかということをもう一度意識する必要があるのではないかと思っています。つまり、認知的な負荷がかかる仕事なのか、身体的な負荷がかかる仕事なのか、あるいは情緒的な負荷がかかる仕事なのかということで分類した時に、どこを手当てするようなオフィスが大事なのか、どこをリリースしてあげるオフィスが快適なのかも考える必要があるのではないでしょうか。

試される「人間力」

島津

フリーアドレスやABWの話も出てきましたが、メンタルヘルスの観点から言うと、フリーアドレスというのは自分の居場所がないように感じてストレスがかかる人が多いという調査結果もあります。自分の居場所がきちんと決まっているということの安心感を得たい気持ちが日本人は強いのかもしれませんので、こういったことも考える必要があると思っています。

フリーアドレスを採用している企業でメンタルヘルスが不調になった方は、定時に出社すると苦手な上司の前の席しか空いておらず、困ったと言われていました。上司と離れた席を確保するために朝早く出社しなくてはならず、それがプレッシャーになるそうです。メンタルヘルスが不調な方は、朝が苦手なことが多いので、ますます不調になってしまうという悪循環に陥ってしまう。脱オフィスの動きとは逆行する考え方かもしれませんが、居場所があることの安心感も考える必要があるのではと思いました。

居場所の話で言えば、新入社員は組織に入って自分がどこに属するのか、その組織との間合いを知り、先輩や同僚と組織の文化も学びながら、自分の位置付け、自分の居場所を見つけていくプロセスが重要なのです。それは先ほど松岡さんがおっしゃった、まさに就社型である日本だからこそ大事なプロセスとなる。そうなると、今の新人、大学1年生もそうですが、そこをリモートでしかやれないというところがやはり一番きついなと思います。

今、バーチャルリアリティ(VR)といったテクノロジーで、あたかも仮想世界の中でインタラクトしながら皆で何かをやったりすることもできるようになってきているので、そうしたソーシャリゼーションもできるようになるのかもしれませんね。

高田

私も、人と人が会って仕事をするよさというのは、組織の学者として捨てがたいなと思っています。

私はケースメソッドでMBAを教えるのですが、何十年もやっている中で、印象的なディスカッションがいくつかあります。例えば「自分の部下や後輩とかが上司のリーダーシップの行き過ぎ、仕事のし過ぎでメンタルが壊れていった時、どうやってそれを察知するのか?」という質問をした時に「臭くなる」と言った人がいるのです。つまり、心を病んで忙しくなってくると、ずっと仕事をしてお風呂も入らなくなり、臭くなってくるというのです。でも、これは会っているからこそできる話ですよね。

確かにテクノロジーを使ってバーチャルでという可能性はとても広がっていると思うのですが、会うことの大事さというのはやはり捨てがたい。

松岡

まさに緊急事態宣言の後、皆モバイルになって人に会えなくなっていくと、再び会えた時に盛り上がるのですね。あの感覚、人にやっと会えたという感覚とか感情の高まりみたいなものは、やはりウェブでは絶対できない世界だと思います。

逆に言うと、会えなくなればなるほど人間力が試されているのではないかとも思うのです。リアルに会うことの価値が相対的に上がっていく。バーチャルに会っていて、リアルに会いたいなと思わせるのは、その人にすごく人間力があるということなのです。だから人間力をものすごく求められる時代がやってきたとも言えるのではないか。

私はヒューマン・セントリック・オフィス、つまり、人間中心で、人間本位のパフォーマンスを出すべきオフィスが必要だと言っているのです。それはセンターオフィスとは限らないし、カフェでもいいし、ワーケーションでも、在宅でも構わない。リモートが当たり前になって、リアルの価値みたいなものが逆に上がっていくような感じがしているのです。

ポジティブシンキングで生き抜く

まさに会うことでしかできないことは何かを突き詰めていくと、今は機会費用がものすごく高まっているので、それに見合った価値がなければ会わないということになりかねない。おっしゃったようにまさに人間力が試されているのだと思うのです。

これは私はAIなどの話も全部同じだと思うのです。要は人間しかできないことって一体何ですか、人間って何なんですかということかと思います。テクノロジーが活用されていく中で、われわれはそのことを逆に問いかけられている。

そうすると、われわれは本質的に、働き方って何なのか、ジョブって何か、タスクって何かと、あらゆるものを解体して、そこから職場って何だろうかということを考えるところに、もしかしたら来ているかもしれない。だからこそポジティブにもいろいろなことを考えられるよい機会ではないのかとも思っています。

松岡

やはり世代の問題というのも大きいのかと思います。米国の場合はミレニアル世代のデジタルキッズが新しい働き方を支える世代になるかもしれないけれども、日本は、いわゆる団塊ジュニアが今一番厚い層になっていて、2030年、今から10年後に大体50歳前後にいるのです。

おそらく私の世代よりもはるかにデジタルに強い世代だと思うので、私は彼らに何か新しい働き方のロールモデルをつくってもらいたいという気持ちがあります。ちょっと他力本願ですけれど、そういう素養があるのではないかと期待しているのです。

そうですね。世代間の対立とまでは言わないけれど、若い人たちはリモートでいいじゃないかと言いながら、50代後半以上の人たちは今のこの流れについていけないところはある。世代間格差は大きくなっているように感じています。

私は若いスマホ世代の人たちはデジタルな環境でも暗黙知ができているような気がするのですね。そんなに困らずにデジタルでかなりのコミュニケーションができてしまっているように感じます。私は年長世代の意識が変わってもらわなくては駄目だと強く言っているのですが、そこは相当難しいという印象を持っています。

今日は、「昔はよかったよね」ということではなくて、これをチャンスにもっといい状況にできるよね、という議論がいろいろできました。ポジティブシンキングができる部分もあるということだと思うのです。

まさにこれを1つのきっかけに、やればできるじゃないかと。やれない理由を探すのではなくて、もっとわれわれがいい方向に行けるように、この機会に考える。われわれに大きな問いかけを与えてくれたと思って、このコロナ禍を生き抜いていくことが大事だなと、皆さんのお話を聞いて思いました。今日はどうも有り難うございました。

(2020年10月20日、オンラインにより収録)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。