慶應義塾

【特集・コロナ危機と大学】座談会1:コロナ危機が教育・研究・国際交流にもたらしているもの

登場者プロフィール

  • 國領 二郎(こくりょう じろう)

    その他 : 常任理事【情報基盤(IT)担当】総合政策学部 教授

    1982年東京大学経済学部卒業。92年ハーバード大学経営学博士。日本電信電話公社勤務を経て、93年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助教授、2003年環境情報学部教授、06年総合政策学部教授。09年同学部長、13年より慶應義塾常任理事。専門は経営情報システム。

    國領 二郎(こくりょう じろう)

    その他 : 常任理事【情報基盤(IT)担当】総合政策学部 教授

    1982年東京大学経済学部卒業。92年ハーバード大学経営学博士。日本電信電話公社勤務を経て、93年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助教授、2003年環境情報学部教授、06年総合政策学部教授。09年同学部長、13年より慶應義塾常任理事。専門は経営情報システム。

  • 鈴木 哲也(すずき てつや)

    その他 : 研究連携推進本部長理工学部 機械工学科教授

    1985年東京工業大学工学部卒業、90年同理工学研究科博士課程修了。工学博士。ケースウェスタンリザーブ大学リサーチアソシエイトを経て2005年より慶應義塾大学理工学部教授。2013年慶應義塾先端科学技術研究センター(KLL)所長。専門は材料加工・組織制御工学。

    鈴木 哲也(すずき てつや)

    その他 : 研究連携推進本部長理工学部 機械工学科教授

    1985年東京工業大学工学部卒業、90年同理工学研究科博士課程修了。工学博士。ケースウェスタンリザーブ大学リサーチアソシエイトを経て2005年より慶應義塾大学理工学部教授。2013年慶應義塾先端科学技術研究センター(KLL)所長。専門は材料加工・組織制御工学。

  • 隅田 英子(すみた ひでこ)

    事務局 グローバル本部事務長

    塾員(1985文、97政・メ修)。2000年ノッティンガム大学(英国)経営学修士。88年より慶應義塾職員。国際センター、総合企画室、01年企画広報室(当時)課長、塾長室課長、07年より国際連携推進室(当時)事務長を経て、18年より現職。

    隅田 英子(すみた ひでこ)

    事務局 グローバル本部事務長

    塾員(1985文、97政・メ修)。2000年ノッティンガム大学(英国)経営学修士。88年より慶應義塾職員。国際センター、総合企画室、01年企画広報室(当時)課長、塾長室課長、07年より国際連携推進室(当時)事務長を経て、18年より現職。

  • 青山 藤詞郎(司会)(あおやま とうじろう)

    その他 : 常任理事【教育、研究担当】その他 : 名誉教授

    塾員(1974工、79工博)。工学博士。1979年慶應義塾大学工学部助手、理工学部専任講師、同助教授を経て、95年同教授。2009年理工学部長・理工学研究科委員長、17年大学名誉教授、同年慶應義塾常任理事。専門は生産工学。

    青山 藤詞郎(司会)(あおやま とうじろう)

    その他 : 常任理事【教育、研究担当】その他 : 名誉教授

    塾員(1974工、79工博)。工学博士。1979年慶應義塾大学工学部助手、理工学部専任講師、同助教授を経て、95年同教授。2009年理工学部長・理工学研究科委員長、17年大学名誉教授、同年慶應義塾常任理事。専門は生産工学。

2020/08/06

オンライン授業のIT環境整備

青山

皆さま、お忙しい中を有り難うございます。今日の座談会のテーマは「コロナ危機が教育・研究・国際交流にもたらしているもの」ですが、主に教育の面、研究の面、そして国際交流の面にどのような影響をもたらしているのか、話し合っていきたいと思っています。

まず教育についてです。新型コロナウイルス感染症が武漢で発生して、2月に入ってから日本にも影響が出てきましたが、最初に学事の面で影響が出たのは卒業式、大学院学位授与式の中止です。その後、入学式も延期になり、新学期の授業も通常通りの日程で行うことができなくなりました。

そして、授業開始は4月30日からということで遅れて春学期をスタートすることになりましたが、春学期の間は原則塾生がキャンパスに来ない状態で、学内施設を閉鎖(4月7日)し、ほぼ全面的にオンライン授業を行うことになりました。

ほとんどの先生方や職員にとって初めての経験で、最初のうちはどのようにオンライン授業を進めていくべきかで議論もあり、多少の混乱もありました。しかし、その後、私から見ると、オンライン授業の実施に皆さん一生懸命対応していただき、また、若いということもあって、塾生諸君も柔軟に対応していただいた。

お蔭で、それほど大きなトラブルは、今のところ発生していないのではないかと思います。細かな問題点はあるにせよ比較的順調に行われていると感じています。

教室で対面授業ができないとなると、当然オンライン授業のための環境を整備しなければいけません。通信環境について、IT担当常任理事の國領さんにはご尽力いただいておりますが、どのように環境整備がされてきているのかお話しいただけますでしょうか。

國領

武漢の閉鎖や韓国の状況を見ながら、ひょっとするとキャンパス閉鎖という事態もあり得るかもしれないと意識し始めたのが2月の頭ぐらいでした。単に授業だけではなくて、職場も閉めざるを得なくなり、サポートする職員もキャンパスに来られなくなる状況を想定しないといけないかもしれないと思いました。

最初は私の頭の中だけで考えていましたが、全学のシステム部門であるITC(インフォメーションテクノロジーセンター)の職員の人たちに「準備を始めたほうがいい」と言ったのが2月14日です。その時点ではキャンパスが全面閉鎖になることにリアリティはありませんでしたが、IT環境の整備は「やれ」と言われて、明日パッとできるものでもありません。先読みをして最悪のパターンを考えなければいけません。

大学は不特定多数の人が出入りする場所ですので、授業がまったくできなくなることも想定しようということで、いろいろ洗い出して検討しましたが、必要な部品はあるなと思いました。ウェブ会議システムはすでに存在しており、全学生にアカウントを配っていました。それから教育支援システムや授業支援システムなどについても、一応動いていました。

大事なのは、ITグループはあまり出しゃばってはいけないということです。つまり、どういう教育をしたいのかは優れて各学部のものです。今回は教育担当常任理事のリーダーシップの下に、オンデマンド型のものを中心としてオンライン授業を行うという方針で統一が取れて動いてきました。しかしオンデマンドでやりたいのか、リアルタイムでやりたいのかについては、IT部門は現場のいろいろなニーズに応えないといけないと考えながらやってきました。あまり組み合わせが多いと困りますが。

また、今回初めて授業支援システムを使った教員もたくさんいましたのでリテラシーをどうやって上げていくかというところも大事でした。

しかし、その点は本当に慶應はすごいところだなと思います。ある程度法人側で環境を用意し、基本的なマニュアル類を用意して中心的な人物にその情報を伝達すると、あっという間にあちこちで自主勉強会が始まり、学生たちも社中協力で主体的に参加しながら助け合う環境をつくってくれる。そのような自助、共助の能力がものすごく高いのです。

そういう意味でちょうど1カ月、授業開始を遅らせていただいたのですが、これは良いタイミングだったのではないかと思います。青山さんはじめ学事日程を考えられた方のお蔭でスキルアップをする時間が与えられました。

もちろんシステム側も不十分な点があり、例えばあるものは使いにくいので別のものがいいと、すごいプレッシャーをいただきました。お金の問題もあったのですが、急いで希望システムのアカウントを取得し、大慌てで増強しながら対応してきました。

薄氷を踏む思いの部分もありましたし、いまだにあります。実は授業だけでなく、履修登録では教員がどの人が履修者なのかを確認できること、授業でない時に学生に必要事項が伝達できることがとても重要なことなのです。他大学のシステム的なトラブル事例を見ても、授業支援システムに障害が発生することが大きなリスク要因でした。

私の学生のうち2人は結局、日本に来られないまま、韓国でずっと授業を受けています。そのように地方や海外に散らばってしまった学生に必要な事項を伝達しながら教育コンテンツをデリバリーし続けるために授業支援システムは必須です。

ところが他のものはほとんどバックアップがあったのに、学生とコミュニケーションをする授業支援システムだけが一系統しかなくて、それが落ちるのではないかとヒヤヒヤしました。授業支援のバックアップシステムは秋から導入します。

オンラインでできること、できないこと

青山

分かりました。「初めての経験の割には」と言ってはいけませんが、慶應のオンライン教育は大きなトラブルが起こらずに始まったということです。

その1つのポイントは、國領さんも言われましたが、オンデマンド中心のオンライン教育を推奨したということですね。当然一部でリアルタイムの授業も行われていますが、基本はオンデマンドということが、システムがダウンしないで動いてきた1つの理由かと思っています。

確かに塾生は、ITテクノロジーを使ったオンライン授業に比較的適応しているようです。逆に教員のほうが使い慣れていなくて、塾生から教えられた人もたくさんいるようです。

そこも「半学半教」かと思います。日吉の自然科学系の先生からは、オンラインで実験講義をやってみると、結構良かったという意見もいただいています。さまざまな経験も蓄積され、この先に生かしていけるのではないかと思っています。

一方、オンライン授業には塾生の通信環境に対する懸念がありました。通信環境を整えられない塾生に対して、どういう支援ができるか。自分で機器を購入したり、レンタルする人もいるし、パケット通信の契約を増やす人もいるでしょう。そこで、これは助成金の形で支援するという対応をいち早く取りました。

通信環境に対する支援の次は、経済的な支援です。経済的に困っている塾生に対しては慶應義塾の基金、それに新型コロナ感染症対策に特別に設けた支援金(慶應義塾大学修学支援奨学金)の募集をし、選考を行って最高40万円の学生に対する経済支援を用意しています。

また、キャンパスが、今に至っても(6月25日現在)ほとんど閉鎖状態にあります。塾生は学生部で証明書をもらいたい、就職資料室に行きたい、図書館で本を借りたい、といった特別な理由がある場合以外は、自由に中に入ることはできない状態です。

そういった状況の中、体育会や公認団体サークルの活動をどうするかが課題になります。これについては段階的に届け出をすることによって、一定のガイドラインの下、ウイルス感染の予防対策をしっかり取った上でキャンパス内施設の使用を認めようということになっています。

このようにこれまでの対面授業が、突然ほとんどオンラインに切り替わりました。オンラインで良かったという場合もありますが、やはり対面でなければならないというものもあると思います。2カ月弱が経ち、鈴木さんはどのような印象をお持ちでしょうか。

鈴木

私は機械工学科で約120名の学生に講義をしていますが、オンライン授業には最初は非常に抵抗がありました。おっしゃったように、まずやり方も分からないし、プロセスをこなすだけで精一杯でした。パワーポイントに音声を吹き込み、学生にレポート課題を出してやり取りする。これらはやっと慣れてきましたが、やはり学生が目の前にいて、いろいろなことを教えるほうが非常に自然な感じがします。

オンラインにして予め授業準備をすると、自分の頭の中ではずいぶん整理がつくのですが、「学生が本当に見てくれるのだろうか」と思ってしまう。ダウンロード率というものが慶應義塾のポータルサイトである「keio.jp」にあり、学生がどれだけ見てくれたかがわかります。研究室の学生に聞くと、最初はきちんと見てくれていても、次第に溜めていく傾向にあり、最後のほうは見なくなることもあるようで、少し不安もあります。それからテストができないので、どうしても課題提出になってしまいます。

ただオンラインにはオンラインの良さもあるので、これからポストコロナと言われる時が来ても、すべてを対面で今まで通りやるということはなくなると思います。良いところを残して、できないところをITの力で補っていくことになるのかな、と思いながら授業をやっています。

國領

鈴木さんが言われた通りだと思います。オンライン授業は完全ではないのですが、かなり習熟度が高まってきています。世の中のベンダーさんが出しているいろいろなツールも、この3カ月でものすごく進化している。やはり需要があるからですね。

一方で実際にものを囲んでつくるような作業は、やはりリアルに一緒にやりたいというのが、正直なところかと思います。今回IT環境への負荷に気を遣っていただき、オンデマンド型を中心にしていただきましたが、リアルタイム型のオンライン教育だと、かなり濃密に双方向でコミュニケーションが取れるものです。教育内容によって最適の環境を工夫して提供し、それをいかに組み合わせて最高の結果を出していけるか。これがわれわれがこれから考えていくことではないでしょうか。

私はこの新しい環境については楽観視しています。その理由は慶應義塾の教員も塾生も、そのレベルが高いことに尽きる気がします。そのレベルの高さに救われて創意工夫をしてくださり、いい授業環境ができてくるのではないかと思います。もちろん工学等で、実験器材がなければ、何もできないというものはあると思いますが。

一方で体育会、三田会、サークルなどの活動が、深刻に影響を受けていることは間違いないところです。その部分についてもITでできるところは、極力拾い上げていきたいと思っています。

青山

隅田さんはグローバル本部のお立場から何かありますか。

隅田

私は、交換留学にかかわっていますが、交換留学の醍醐味は、留学先で受ける授業だけではなく、海外に渡航し住む機会、経験が重要です。大学の学部の4年間で交換留学に行けるタイミングは非常に限られていて、学生は注意深く何年も前から準備して「この年に行こう」と思っています。

それがこの春学期以後の留学から予定が立たず、秋学期についてもなかなか今後の見通しがわからない状況です。学生が描いていた留学の予定が思い通りに進まない様子を見て、支援する職員として、とても残念に思っています。

ここにきて交換留学に関しても物理的に行けなくともオンラインでやってしまおう、という動きが海外を中心にだんだん出てきています。このことについては後ほどお話ししたいと思っています。

青山

留学など国外の大学に行って勉強するということについては、かなり影響が大きくなってきていますね。

一方で理系の学部での教育には実験・実習科目がある。例えば薬学部などでは薬剤師の資格認定を得るために、実験・実習の講義を受ける必要がある。様々な資格制度については、コロナ禍に対応していないので従前通り教育を施さなければいけない。薬学部は6月から非常に限定的ですが、十分な新型コロナウイルス感染予防対策をした上で、オンキャンパスで実験・実習を行っています。

特に慶應義塾のように医療系3学部を有している総合大学は、一概にこうだと方針を定めることはなかなかできません。キャンパス、学部によって一定の柔軟性を持ち、かつ新型コロナウイルス感染予防対策を取った上で進めていく状況になっています。

研究活動への影響

青山

今度は研究について伺いたいと思います。教育と研究は人財育成のための車の両輪であると言えますが、研究のほうもキャンパスが閉鎖になり、研究活動がほとんど止まってしまいました。最近になって、段階的にキャンパスが開いて、研究活動も少しずつ元に戻りつつありますが、それもキャンパスによって状況は異なると思います。研究連携推進本部長の鈴木さんから、これまでの状況および現在の対応状況をご説明いただければと思います。

鈴木

キャンパスが閉鎖されたのが4月7日でした。それからしばらくして青山常任理事から研究再開の可能性を検討して欲しいと言われました。研究連携推進本部でどのように対応をしていくかということで、手探り状態でやってきました。私と副本部長2名、医学部の武林亨さんと文学部の山本淳一さん、それから学術研究支援部の伏見知行部長ら7人で、ウェブ会議を続けました。

武林副本部長は公衆衛生が専門でしたので、コロナ自体の知識や今後の状況予測を皆に説明していただきました。一番印象に残ったのは武林さんが「これから1年間まったく研究ができないことも覚悟しなければいけないのでは」と言われた時でした。また保健管理センター職員で感染症が専門の當仲香さんからは「このようにすれば、キャンパスに少しずつ入れるのではないか」とずいぶん助言をいただきました。

閉鎖中はキャンパス内に人がいないわけですから、そこに10名、20名が入っても安全だろうというところからスタートして、段階的に入れていくことや、どのような安全対策が必要かなどを徹底的に話しました。

また東大、東工大や早稲田などとも情報を共有し、もちろんキャンパス間、藤沢や信濃町と頻繁に連絡をとって状況を把握しました。医学部は逆にコロナだからこそ研究をやらなければいけないという先生もいました。一番感染リスクが高かった時期でも、医学部の20%程度は稼働していたと聞いています。

しかし、矢上キャンパスの稼働はゼロでした。青山さんも私も実験系ですが、鉄の塊がないと何もできないような人たちが、矢上には半分ぐらいいます。まずわれわれのグループでやったのは、全塾で、困っている人が誰かを知ることです。教員もそうですが、博士課程の学生は特に困っているわけです。3年生なのに「来るな」と言われて、「どうしても入れてほしい」とメールが来たりしました。

6月になり、少しずつ落ち着いてきたので、段階的にキャンパスに入れていくようにしていきました。矢上は入り口が1つなので管理が容易だと思いました。IDカードで入退室を管理したり、体温を測ったりしています。岡田英史理工学部長が大変苦心して、一部屋に何人までと細かく規定を作ったお蔭で、6月1日から事実上閉鎖を解除しています。

三田は、学部がたくさんあるので、まだいろいろ調整していると聞いています。新川崎、殿町、鶴岡などのタウンキャンパスも装置、設備がありますので、その場にいないと研究ができない。そこで責任者の青山さんの下に、私は現場サイドでいろいろなルールを作って、今動いているところです。

青山

キャンパスによって様子が違うのだと思います。各キャンパスで研究活動を再開するにあたり、どう取り回していけばいいのか、どういうガイドラインが必要か。そのあたりは研究連携推進本部のほうで何回もウェブ会議を開いていただいて、詰めていただいたわけです。

教育にも絡みますが、やはり大学院の修士課程、博士課程ですと、学位を取るための研究が止まってしまう。また例えば国際会議も中止になる。ジャーナルは投稿すればいいので動いてはいると思いますが、国内外の学会活動も止まっている。そういった状況で一定の研究成果の公表が要求される修士課程や博士課程の学生はつらいところがあると思います。矢上は修士課程の学生が多いですからね。

鈴木

現在、矢上では、人数をかなり制限して、修士の学生だけではなく、学部4年生もキャンパスに入れることになっていますが、4月、5月あたりはかなり悶々としていた感じがします。

私も副査をやりましたが、博士の審査もウェブで意外とうまくいき、あまり苦情も来ていません。もちろん国際会議には行けませんが、オリジナル論文などはもともとメールでジャーナルとやり取りをしていますので、丸2カ月つぶしたというだけで、軽い傷で済んでいると私は思っています。

事務システムの効率化へ向けて

青山

SFCの研究活動についてはどのような状況でしょうか。

國領

SFCにはいろいろなタイプの研究室があるので、タイプ別に影響の受け方が大きく違うことが特徴ではないかと思います。今の話と同じように、器材がキャンパスにしかないので何もできないというタイプの学生もいます。また、この数年間デザイン系でものづくりをしたい人が多くなっているので、そういう人たちがやりたいけど上手くいかないという悩みもあります。

一方で、SFCはソフトウェアにかかわる研究が多いので、システムにアクセスを確保できると、家でも結構できてしまう人も多い。

人文科学、社会科学系ではまた話が違ってきます。私の分野はほとんどのデータはオンライン上に存在しています。しかし、何ができないかというと、フィールド調査ができません。ですからキャンパスというよりは、キャンパスの外に出かけていって取材したり、データを取りにいくことができないことが大きな悩みです。

このように「全く問題ない」という研究室と、「大変な問題だ」という研究室とで、ずいぶん分かれたのがSFCだったように思います。

一方、研究契約ができないという問題があります。

鈴木

おっしゃる通りです。

國領

若手の人たちを特任助教で雇ったりしているので、彼らの生活に直結しており、契約ができないこと、また支払いの精算が滞ることは大問題です。私自身、4月に「これ以上は入金しないと先に進めない」とおっしゃる香港の会社とやり取りをしました。大学の経理が動かないので、個人的に銀行に行って立て替え払いをしようとすると、麻薬取引でもしようとしているのかと疑われる(笑)。3時間ぐらい銀行でうろうろするはめになりました。

この時にIT担当として、印鑑をなくして電子契約を進める作業をしないとだめだとつくづく思いました。青山さんは実感されていると思いますが、稟議システムの電子化は4月に稼働して間に合いました。起案してから決裁するまでの時間が、今まで平均17.2日かかっていたのが電子化したら5.9日に減りました。

これはケガの功名みたいなところがあって、今までなら慣れていただくのに3カ月ぐらい取っていたところを、在宅を強制されたので塾長・常任理事全員にいきなり「このiPadを家に持って帰り、家で決裁してください」としました。

今までなら矢上で起案したものを塾内便で三田に送り、「青山さんが出張なので、今日はだめです」と秘書さんたちが、うろうろしていたものを、今はシステムが自宅まで追いかけて、「決裁まだですよ」と催促する。このような状況をつくったことでスピードアップしました。

しかし研究系の契約や精算については間に合いませんでした。そこで今年度中に経費精算のシステムは、全部オンライン化しようと準備を進め、動かしたいと思っています。

契約が6月にずれ込んだので雇えなかった助教の人たちが、矢上だけで相当数いるのではないでしょうか。これは残念なことだと思います。このあたりのことを、いかに慶應義塾を21世紀に連れてくるかが非常に大きなポイントだと思っています。

青山

コロナ禍が1つの大きなきっかけとなって、事務システムが加速したということですね。稟議システムは確かにすごくて、絶えず追いかけてくるんです。放っておくとメールの受信ボックスが、稟議の依頼メールでいっぱいになってしまうので脅迫感もあります(笑)。

今、助教の話が出ましたが、有期契約助教は基本的に3年間で、その間に研究成果を上げるという方々が沢山いらっしゃる。コロナ禍で研究ができなくなる方がおられると、これは非常につらいところです。これが長引くと、この問題についても配慮しなくてはいけないかなと思います。

コロナ禍での国際交流

青山

次に国際交流、国際連携について見ていきたいと思います。教育も研究も国内のみならず国外の大学も同じようにコロナウイルスの影響を受けています。そのあたりの状況と、慶應が今、どのように考えているかを、隅田さんからお話しいただければと思います。

隅田

全学の学生交換に加え近年、学位を取得する留学生や交換留学生だけでなく、より多くの多様な留学生を義塾として受け入れようという方針の下、例年、1月末から2月の一般の授業が終わる時期に、国際センターでは短期プログラムで留学生を数週間受け入れています。一方、春休みや夏休み期間中には、塾生を数週間欧米や最近ではシンガポール等の海外の大学に派遣する短期派遣プログラムも実施しています。その春休み期間中のプログラムに参加中の学生たちがもろにコロナの世界的流行の時期に引っかかってしまい、結構大変な思いをしました。

一番心配したのは、フランスのパリ政治学院というグランゼコールのプログラムでした。それに参加していた学生は、フランスのマクロン大統領が突然国家レベルでのロックダウンを宣言したので、その日からすべてが止まってしまいました。政治学院の担当者からこちらにメールで「フランスは大統領の命令でロックダウンになりました。皆、家に帰ってください。私たち、大学の教員も職員も今後キャンパスに行くことはできません。今日でこのプログラムは終了です」と言われ、その時は本当にヒヤヒヤしました。

学生に連絡を取ると、最初は「まだプログラムで授業しか受けていないし、パリ市内の観光もできていないから残りたい」と言っていましたが、週末、誰もパリの街に出ていない様子を見て、さすがに慶應の学生は非常事態であるとすぐに理解して、帰国しなければならないと分かったようです。そこで旅行代理店に調整してもらい、一番早く搭乗可能な便で、全員帰ってきてもらいました。その時に本当に世の中が、大変なことになっているんだと実感しました。

また、慶應は、武漢こそありませんでしたが、中国の著名な大学にも交換留学生を通年で送っています。感染が広がり、安全に現地での勉強が保障されなくなり、「すぐに帰国するように」と言われ、「せっかく現地の大学に落ち着いたところで、今はまだ帰りたくない」というやり取りもあり、状況が日々悪くなる中、つらい思いをして帰ってきた学生もいました。

さらに、韓国は3月が学年の始まりなので、その時韓国に行った学生は完全に感染拡大時期にぶつかってしまいました。オーストラリア、ニュージーランドは、早々に国を閉めてしまいましたし、2月、3月は国際センターの事務担当は本当にてんやわんやでした。

海外では厳しい法律でキャンパスを完全にロックダウンして、大学はいち早く「オンライン授業にします」と宣言しました。ところが日本は独特の学事暦もあり、慶應でオンライン授業が決まったのは結構遅かったので、われわれには海外の大学から「慶應はオンラインをやらないのか」と日々メールが来て、とてもプレッシャーを感じていました。

青山

感染が爆発的に広まり始めた頃の生々しい状況をお話しいただきました。これから秋学期に向けて、どうなっていくと見込まれていますか。

隅田

アメリカでものすごく感染者が増えたということで、北米の大学で慶應がお付き合いしているところは、ほとんどが秋学期まで学生を出すのも、受けるのもしないと決めたところが多いです。

一方、ここに来て経済活動が一部再開になり、ヨーロッパが観光なども受け入れ準備をするという状況になってきました。そこでヨーロッパの大学の中にはハイブリッド型、つまりオンラインでやるものと、少ない人数で一部の授業を対面でやる方向で秋から授業を行う形で学生交換を実施する、と表明してくるところが出てきました。

今の学生、特に学部生は、デジタルネイティブなので、意外に「オンラインで留学」というものも受け入れられる人もいるんですね。われわれの世代では、留学というと海外に行くことが前提のように感じますが、非常にドライに、海外の一流大学の授業を日本でオンラインで受けられるのであれば、「それもあり」と考える学生もいるようです。

海外から日本に来たいという学生も「オンラインでもしょうがない」というモードになってきています。オンラインだけでの留学、「バーチャル・エクスチェンジ」という言葉が国際交流担当者の中では、よく出てくる単語になってきました。

必須となる「ハイブリッド教育」

青山

なるほど。今、隅田さんが言われたハイブリッドというのは、オンラインとオンキャンパスのハイブリッドですよね。そのように授業を行う場合、留学生はやはりオンキャンパスの授業がある時は現地に行くわけですよね?

隅田

そのへんがまだはっきり見えてないのですが、両方を上手く使って、現地に行けるまでは母国でオンライン授業を受けてもらい、留学先大学のキャンパスに「来れるようになったら来てね」と、フレキシビリティを提供している大学もあります。

青山

そうすると1つの授業をオンラインとオンサイトで両方準備するということですね。

隅田

もしくは、授業群をオンラインだけに固めるのと、対面で固めるというように、カリキュラムを大がかりに調整しているみたいです。

ヨーロッパの場合、国際交流を大学の1つの重要な価値のある活動と位置づけて今までやってきたので、ここで止まってはいけないという意識がすごく強いのだと思います。

青山

わかりました。國領さん、この件で何かコメントはありますか。

國領

IT担当として、何を準備しなければいけないのか、しっかり考える必要があると思いました。青山さんは実感されていると思いますが、ハイブリッドというのは「オンラインのみ」よりも難しいのです。

教室での授業を実際に行いながら、それをリアルタイムで配信する、あるいはアーカイブ化してオンデマンドで後に視聴することを可能にすることをできる教室がSFCにはいくつかあって、三田にもあります。しかし、そのパターンを可能にする教室への投資額はけっこうかさみます。

教室で行っている授業をオンデマンド用にアーカイブ化することは、SFCではすでに単位科目化されています。これは映像より、音声をどうやってきれいに録るかに結構人手がかかります。隅田さんがおっしゃったオンラインの時とオンデマンドの時とで、スケジュール的に分けてしまうというやり方は、大学の教員たちにこの複雑な状況に対応していただけるかどうかという話に大きくかかってくるかと思います。

IT担当としては、いろいろな組み合わせがありますが、どんなボールが飛んできても受け止められるようにしたいと思っています。しかし、ものによってハードルが高い、つまりお金がとてもかかるものがあると思います。

現実問題として、秋に大講義型の授業を教室で行うのは無理と言ってもいいと思います。考えられるのは、500人教室を使って200人程度の授業をリアルに行い、かつ留学生等のためにアーカイブすることで、来られない学生にも後から参加できる形にする。今のところ、そんな感じかと私は思っています。

青山さんの腹が固まって、「こうやる」とおっしゃっていただくと、それに向けて頑張って夏休み中に準備します。

青山

いつも國領さんはこういうふうに言うんですが(笑)、お金が大事ということですね。

国際交流にしても、国内の大学もやはりハイブリッドの形をとることが必要になるかもしれません。「ハイブリッドは無理です」と言うと、「では慶應義塾大学とは連携できません」となる恐れもあると思います。ポストコロナ禍の大学のあり方としてグローバル化を進めるには、オンライン、ハイブリッドの教育、研究連携、財政を整えていかなければいけません。

國領

教室にどういう装置を配備するかは、ITCだけでは決められません。学生部の関与がとても大事になってきます。そこは連携が必要となります。

青山

はい。教室や設備などは先の話になると思いますが、これから大学で新しい教室を作るという場合は、オンライン、ハイブリッドに適したスタジオみたいな教室が必要になってくるということでしょうね。

教育、研究方法の進化へ

青山

今、春学期が半ば過ぎて、これから夏休みに入っていきます。他の大学もそうだと思いますが、そろそろ秋学期の教育をどうするかという話になっており、今まさに検討している段階です。今の社会状況から考えて、秋学期から全部が元に戻ってオンキャンパスでということはあまり考えられない。まったく閉めたままというのもかなり問題があり、大学としてどうしたらよいだろうかということになります。

そうすると、やはりいろいろな意味でハイブリッドという形になっていくのではないか。オンラインとオンキャンパスの割合がどういった形で組み合わされるのかはともかく、こういった教育方法はますます進化していくのではないかと思います。今は交通事故に遭い、その事故対策みたいなことですが、そうではなくてこれから大学のグローバル化も含めて、ハイブリッドな教育、研究をどうやって進めていくかは1つ大きなキーになると思います。

ただ國領さんが言われたようにハイブリッドは大変です。どうやって資金や人材を注ぎ込んでハイブリッド教育、研究を進めていくのかは大きな課題です。それぞれのお立場で、これからの大学教育あるいは研究について慶應義塾大学としてどのように対応すべきか、ご意見をいただきたいと思います。

鈴木

私がやっているのは一番泥くさい研究、つまり企業の人などいろいろな共同研究者が遠くから来て、学生と一緒に皆で実験器具を囲む。その後、一杯飲んだりするという昔ながらのスタイルです。それをハイブリッドにしたいと今、考えています。

ウェブ会議もこんなにスムーズにできるようになってきました。そうすると実験現場に、例えば頭にカメラを着けて、学生が実験器具を全部映しながら実験する。それを見ている地方にいる企業研究者が、「いや、違う。そこは穴を開けたらだめだよ。そこのところはもうちょっと温度上げて」というようなリアルな実験もできると思うのですね。

それができれば、実験系で困っている人たちも、相互に行き来しなくてもある程度のことはできるのではないかと思っています。今はまだ不便ですが、その現場にいなくても一緒に実験している感じを作れるシステムができれば、第2波、第3波が来た時に乗り越えていけるのではないかと思います。

そのようなリアル産学連携実験現場システムみたいなものを、ここ2、3カ月で開発できないかと思っています。

隅田

慶應義塾は、国際的に活躍する未来の若者を育成している大学だと考えた時、今回の状況でオンラインで授業をやるしかなくなったことはネガティブな面も多くあったと思います。しかし一方で職員などの働き方を見ていても、オンラインですと1人1人がアカウントを持ち、責任を持って発言し、意見を表明しないといけません。それは授業でも同じで、オンラインでの仕事の進め方や会議の進め方はグローバルスタンダードになってきました。

日本の誰が座っているのか分からないような会議に皆がいて、発言する人は少数という仕事の進め方とはすごく違います。ですから、オンラインでいろいろなことをやってみることは、学生にとってもグローバルスタンダードで物事を進めていくということに関しては非常に意義があると思います。

バーチャルキャンパスという可能性

國領

SFCはこの2年間ぐらいずっとキャンパスを3D計測して、それを学生がバーチャルキャンパスのアプリとして作り込んでくれました。もう少し詳しく言うと、SFCはドローンを飛ばしやすいですので、ドローンで膨大なキャンパスの形状データを3Dで取り、そのデータを使ってキャンパスに行けなくなった学生がキャンパスを散歩できるというアプリです。「cluster」というクラウド上でのサービスにSFCで取った3Dのデータを流し込むとキャンパスが再現できるのです。

アバターと呼ばれるバーチャルな世界での自分の分身が左に行ったり右に行ったり、現実を模した空間上で動かすことができます。 アバターが教室に入って席に着くと、その授業が聴けるようになります。そしてアバターにアイデンティティを持たせて、いつも同じ顔が見えるようにできる。

SFCには密になりやすいバスの問題があり、春学期は本当に全然行けなくなってしまいました。ただ時間や物理的空間など、どこかで同じものを共有していないと、人間同士のコンテクストが共有できないと思います。時間を共有できるのであれば、こういったバーチャルキャンパス上でその空間も共有していくことが大切だと思っています。

この手のツールが今ものすごく発達しています。自分が教室に行けなくても、海外からでもこのアバターに教室に行かせてそこに座っているのとまったく同じような感覚を持たせる。それがそれほどコストをかけずにできあがりつつあります。ということでテクノロジーを信じましょう。

青山

これは素晴らしいですね。学生が自分でキャンパスに行ったことになり、アバターが教室に入って授業が始まる。友達に会うと、そこで会話ができるのですか?

國領

できます。今のところチャットでしかできませんが、それをオンライン会議システムと連動させて、顔を見合わせながら通話することも不可能ではありません。

青山

リアルハプティクスで、握手をするとその感触が伝わってくるといったことができるといいですね。

國領

それもいいですね。まさにハプティクスをやりたいところですね。

隅田

これは国際交流でも、とても使えると思います。国際交流は、大学の様々な活動の中でも、とてもお金がかかる部分なんです。それは海外に行ったり来たりしなければいけないからです。

アメリカの州立大学などではお金持ちの学生ばかりではないので、国際プログラムに参加する学生は、結局奨学金はあっても、裕福な家の学生ばかりが優遇されてしまう。このような格差社会化が問題になっています。

こういうバーチャルキャンパスなどを利用することによって、人が移動しないことでの国際交流が可能になると、今まで参加できなかった学生にも国際交流の道が開ける可能性があると思います。

ポストコロナ禍の「人間交際」

青山

そろそろまとめに入りたいと思います。コロナ禍の影響で会社に行くだけが仕事ではないとか、大学に行くだけが勉強ではない、ということになっていますが、こういった社会常識はどんどん定着してくるだろうと思います。グローバル化にしても、日本国内の教育にしてもそういった行動様式が定着してくると思いますので、大学に限らず、企業にしろ、組織にしろ、この社会の流れに乗り遅れたところは、その先がだいぶ違ってくるはずです。

ですから慶應義塾としてもコロナ禍での体験を1つのきっかけとして、オンラインとオンキャンパスの両立をもって新しい教育と研究の展開を考えないといけません。ここは非常に大事な分かれ道に立っているのではないかと思います。最後にこういった社会を迎えることについて一言いただけますでしょうか。

鈴木

研究で言うと、今まで国際学会に行く、国際共同研究をするとか、自分が移動して相手の前で発表して帰ってくるなど、フェイス・トゥ・フェイスでやることが普通でした。しかしオンラインのウェブ会議でも、実は結構できてしまうことがわかりました。

そうすると国内旅費も使わなくなりますし、先ほど申し上げた泥くさい共同研究を、遠隔でやることも可能になってくる。これは教育でもそうですね。そういう形をつくったもの勝ちだと思います。それが100%でなくても、80、90%満足していればいいのであって、この機にいろいろ考えていくことは研究にとっても非常によいことだと思います。

國領

おっしゃる通りですね。これから大学の形がまさに変わっていく中で、単に苦しい状況に対応するのではなくて、これを活用することによって世界中の学生がバーチャルに慶應の塾生になる可能性もあるわけです。

日本国内でも急速に首都圏大学化しているのが、慶應義塾にとって大問題だったわけですが、それを突破するチャンスにもなります。物理的空間や時間を共有することはとても大事なので、交代でキャンパスに来るという工夫は必要ですが、ほとんどの部分については、クリエイティブにオンラインでやっていくことで様々なニーズに応えられると思うのです。

それから、隅田さんが先ほど言われたことはとても大事だと思います。世界中で大学が貧富の格差を拡大する存在になりつつあり、そのことが大問題になってきている。日本の大学はまだましですが、卒業するまでに2000万から3000万円かかるのが当たり前の世界になってきていて、それゆえ貧富の格差拡大という大学への批判が非常に大きくなっている。それをテクノロジーを使いながら解消していくことは可能だと思っています。

これは、あまり安易に言うと、自分の首を締めかねないところがありますが、スピードを見計らいながらビジネスモデルを転換していくことが必要なのだと思います。世界中の大学がそのことにもう気がついていて、これから急激にそちらの方向へと向かうと思いますし、私の観察では余裕のある大学こそが先にそちらの方向に向かって、いま全力で走り始めています。

むしろ余裕のない大学が、元のモデルへ一生懸命戻ろうとしているという状況があると思います。私は、慶應は先陣を切って先に行く組に回りたいと強く思います。

隅田

私もまったく同意見です。グローバル本部は世界のいろいろな大学の学長や副学長などから話を聞くことが多くあります。トップクラスの大学は研究と教育の両方で、この機会だからこそ、つながっていい研究をしましょう、いい教育をしましょう、一緒にやりましょう、とどんどん走っていっている。そこに慶應が乗っていけないとジリ貧になってしまうと思います。

一方、職員もここ2カ月、完全に在宅勤務でした。ちょっと怖いなと思うのは、皆オンラインで仕事をすることに慣れてしまっているところがある。最近は週に4回ぐらいオフィスに行っていますが、皆、シーンと黙って会話もパソコンに向かってチャット機能で行うという世界になっています。

学生が家でずっとコンピュータ画面だけを見て授業を受けている状況になると、コミュニケーションの取り方が変わってきて、人間らしい付き合いができなくなることが少し危惧されます。今まで大学ではクラブ活動や交換留学と、いろいろな場で人が会うことによって人間形成されていたのが、それができなくなっているところは心配です。

青山

そうですね。隅田さんの今の話を聞いても、やはりオンラインだけでは済まないし、オンキャンパスだけでも済まないということですね。要は慶應義塾のポストコロナ禍の時代に、福澤先生の言われるところの「人間(じんかん)交際」を、どのように実践するかということだと思います。

ここは教職員、塾生そして塾員の皆さんが、それぞれの経験を忘れずに、これを生かして慶應義塾の教育、研究、そして人間交際をしっかり進めていく大学として前に進んでいきたい。これは、慶應義塾の持続的発展に向けてとても大切なことではないかと思います。

本日は、皆さまお忙しい中を有り難うございました。

(2020年6月24日オンラインにて収録)

※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。