慶應義塾

山城 由希:我より古を作す海ぶどう

公開日:2026.04.09

執筆者プロフィール

  • 山城 由希(やましろ ゆき)

    その他 : 海ぶどう農園 海ん道(ち)、株式会社日本バイオテック代表取締役社長環境情報学部 卒業

    2005環

    山城 由希(やましろ ゆき)

    その他 : 海ぶどう農園 海ん道(ち)、株式会社日本バイオテック代表取締役社長環境情報学部 卒業

    2005環

自我作古(じがさっこ)──「我より古を作(な)す」という言葉に象徴される、自ら先例となり道を切り拓く姿勢は、私の事業実践の根底にある。

沖縄県糸満市で海ぶどうの陸上養殖と観光事業を営む中で、私はしばしば「前例がない」と言われてきた。まだ食材としてメジャーではなかった海ぶどうの価値を、いかに社会に伝えるか。その問いに向き合い続けて約17年が経つ。養殖技術の確立、市場開拓、安定供給体制の構築など多くの課題に直面してきたが、常識にとらわれず挑戦を重ねてきた。

当初から海ぶどうアイスなど加工分野にも取り組み、新たな価値創出を図ってきた。近年は「ふくらむぷちぷち」など新商品の開発を進めるとともに、保存技術の改良により、従来常温で約1週間であった賞味期限を約2年へと延ばし、現在はフランスを含む世界18カ国への輸出を行っている。今後は、規格外品を活用し、食べられるコスメなど新たな商品へ転換する取り組みも進めている。生産に加え、加工、観光体験、教育、研究を掛け合わせた6次産業化を進めることで、単なる農水産物を超えた文化的価値の創出を目指してきた。

観光事業では「海ん道 Uminchi」という施設で、摘み取り体験や海ぶどうすくい体験を通じ、これまで味わったことのない未知の感動を伴う体験を提供している。海ぶどうを摘み、味わい、その背景にある自然や海人(うみんちゅ)文化との関係を体感する一連の経験こそが、地域ブランドを形づくると考えている。

こうした取り組みの根底には先代から受け継いだ開拓精神と、社員や地域と共に歩む共生共栄の理念がある。地域資源を活かしつつ地域を創生し、未来へ新たな価値を繋いでいくことが私たちの使命である。今後は6次産業化を基盤にまちづくりへと取り組みを進化させていきたい。

海ぶどうを世界ブランドへと育てることが私の使命である。それにより世界の食卓で高付加価値食材として評価され、原料としても多様な分野との協働によって新たな価値が見いだされ、さらに「海ん道」へ人々が訪れる──そうした循環モデルを築いていきたいと考えている。

人口減少や地域格差が語られる今こそ、地方から新しいモデルを示す責任がある。前例がないからこそ挑戦する。我より古を作す。その覚悟をもって次代の産業創造に向き合い続けたい。

※本文中に記載しております「ふくらむぷちぷち海ぶどう」につきまして、この度「経済産業大臣賞」を受賞いたしました。以下のリンクよりご注文いただけます。
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※所属・職名等は本誌発刊当時のものです。